ついに育成講座も始まった「サッカーアナリストという仕事」の可能性

ついに育成講座も始まった「サッカーアナリストという仕事」の可能性

 スポーツにおけるアナリストは、データを分析・活用することでチームの勝利の確率を上げる役割を担う。サッカー界においてもその重要度は増し、国内のJリーグのクラブでも需要が高まっている。そんな流れに合わせ、さまざまなスポーツのデータを扱うデータスタジアム株式会社が、「スポーツアナリスト育成講座」を開講した。

 2017年はサッカーに関する講義が2度開かれた。第1回は5月から7月にかけての全6回、第2回は10月から12月にかけての全8回。それぞれ赤坂にあるデータスタジアムに10人ほどの受講者が集まり、週1回2時間の講義でアナリストのノウハウを学ぶ内容だ。

 講師を務めたのは、サンフレッチェ広島でコーチを務めていた久永啓(ひさなが・けい)氏と、ヴィッセル神戸や名古屋グランパスで分析を担当していた藤宏明(ふじ・ひろあき)氏。2017年からの新たな試みとなったアナリスト講座について、藤氏はこう語る。

「以前にも私たちがどこかに出向いてスポットで講義をさせていただくことはありましたが、より継続的かつ実践的に学ぶ場を提供したいということから、当社(データスタジアム)での開講に至りました。これからさまざまなスポーツについての開催も検討していますが、まずはプロの現場経験者がいるサッカーから始めていこうということになったんです」

 講義は受講者が主体となって進められる。取材に訪れた12月14日の講義では、天皇杯準決勝(横浜F・マリノスvs柏レイソル/2017年12月23日)を想定し、受講者が横浜、柏の立場に分かれて分析を行なった。

 最初の1時間は、事前に映像やデータを見たうえでの相手チームの特徴をすり合わせ、攻守での注意点をまとめていく。ただデータを羅列するだけではなく、監督や選手に伝えるべき内容を厳選し、より説得力のあるものに仕上げていく必要がある。後半の1時間では、まとめた内容をプレゼン形式で発表。グループの代表者が10分を目安に分析結果を伝え、発表が終わった後は「優れていた点」と「改善点」を確認するフィードバックの時間も長く取られていた。

 この日の講義には、横浜F・マリノスなどで育成年代のコーチやヴィッセル神戸の監督も務めた安達亮氏と、2012年からFC東京で分析を担当する近藤大輔氏がゲストとして参加し、現場視点からアドバイスを送る場面も見られた。

 自らもメモを取りながら様子を見守っていた近藤氏は、講義を次のように評する。

「受講者のみなさんが本当によく分析を行なっていて、私も気づかされることが多かったですね。現場では、監督が取る戦術や性格などによって求められる情報は変わってくるので、それに対応できるように時間をかけて分析を行なっています。この講義では複数でしっかり話し合ったうえでプレゼンをし、それを振り返る機会もありますから、かなり力がつくと思いますよ」

 受講者たちも成長を実感している。第1回から受講しているという大学生は、「前回は分析のスキルを学ぶことができたんですが、それを人に伝えるとなると、より細かい分析が必要になります。テスト期間と重なって、事前に映像やデータを見ることが大変なときもありました(笑)。でも、苦労した分だけ明確に意図を伝えることができるようになったと思います」と振り返る。

 この大学生は現役のサッカー部員で、今後も競技を続けていく予定ではあるが、サッカーへの関わり方の選択肢を広げるために受講を決めたという。また、東大サッカー部のテクニカルスタッフとして、すでに分析の経験がある受講者は、「プロのスキルを学びたくて受講しました。実際にアナリストになれるかはわかりませんが、この経験をまずは大学のチームで生かしたいです」と笑顔を見せた。

 今でこそ、大半のJリーグのクラブでアナリストが活躍するようになったが、その歴史は長くない。まだアナリストが広く認知される前から、コーチとして分析を行なっていた安達氏は、自らの経験をふまえながら講義をこう締めくくった。

「特に神戸のコーチ時代には、当時の監督だった三浦(俊也)さんがすごくデータを見る方だったので、講師の藤さんと一緒に必死で資料を作りました(笑)。まだノウハウが構築されていなかった時代ということもあったでしょうが、アナリストは自分だけで考えるのではなく、『ここってどうなってるの?』といった、周囲から吸収する姿勢が大事になります。

 この講義は、それを体験できる貴重な機会ですね。受講者の方たちの目のつけどころも、すごくよかったです。このなかから、実際にプロの世界で活躍する人が出るかはわかりませんが、どの世界に入っても、互いに情報を共有し合えるような”信頼”を築くことを大切にしていってほしいです」

 情報戦がモノをいうようになったプロの世界で、その需要を満たすほどに日本のアナリストの数が充足しているとは言い難い。Jリーグでは、DAZNの参入で各クラブに分配される資金の使い方に注目が集まっているが、監督や選手だけでなく、アナリストの整備にも資金を投じてほしいところだ。今後も継続していく予定だというデータスタジアムの講座が、”当たり前のもの”として認知されるよう、サッカー界全体が動いていくことを期待したい。

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