36歳でも強くなるフェデラー。ケガ続出のライバル勢に止められるのか

36歳でも強くなるフェデラー。ケガ続出のライバル勢に止められるのか

「とても特別な瞬間だった」

 約1万5000人の観客からのスタンディングオベーションによって、鳴動するロッド・レーバーアリーナ。その中心にいたのはロジャー・フェデラー。彼は湧き上がる感情を抑えきれず涙し、眼は真っ赤になっていた。万雷の拍手はさらに大きくなり、数分間鳴りやまなかった――。

 全豪オープンの男子シングルス決勝は、第2シードのロジャー・フェデラー(2位、大会時、以下同、スイス)が、第6シードのマリン・チリッチ(6位、クロアチア)を、6−2、(5)6−7、6−3、3−6、6−1で破って、2年連続6回目の優勝を果たした。36歳173日での優勝は、オープン化(プロ解禁)以降、全豪で3番目の年長優勝記録となった。

 男子決勝の当日は暑さ指数(WBGT※)が32.7に達したため、全豪独自の酷暑ルールであるヒートポリシーが適用されて、センターコートであるロッド・レーバーアリーナの屋根は閉じられて試合が行なわれた。
※気温、湿度、放射熱の3つの要素を取り入れた指標で、熱中症を予防するために作られた

 屋外の最高気温は39度だったが、屋根が閉められたセンターコートは20度台に保たれ、コートコンディションの変化への対応が遅れたチリッチは、フェデラーの速攻に対し、後手に回った。「試合を通して、メンタルを維持するのが明らかに困難だった」と語ったチリッチは、最近強くなったメンタルを前面に出してファイナルセットまで持ち込んだものの、3時間3分の激戦を制したのはフェデラーだった。

 フェデラーは、ビッグサーバーであるチリッチの16本を上回る24本のサービスエースを打ち込み、決勝でのファーストサーブでのポイント獲得率が80%と、最後までサービスの調子が落ちなかった。

 今回の優勝は全豪で最多タイとなる6回目、さらにグランドスラムでは20回目となる。自らが持つ最多メジャー優勝回数の記録を更新したフェデラーは、「もちろん20回に到達したことは、とてもスペシャルだ」と語りながらも、基本的に記録のことは気に留めていない。それよりも表彰式で涙した、あふれんばかりの感動こそが、今のフェデラーの心の中を占め、大切にしていることなのだ。

「実際に自分が触れるすべてにとても意味があり、すごく感動的なものなんだ。チームに感謝し、マリンを祝い、人々や大会に感謝し、最後はひとつのパーティーのようだった」

 さらに、何回もグランドスラムタイトルに挑み続けられるのは、自分をサポートしてくれるコーチたちや、息子のプレーを誇りに思い喜んでくれる両親がいるからだと吐露する。

「彼らが自分をハッピーにしてくれるし、より良いプレーにつながっている」

 そして何よりも妻のミルカさんの存在と手厚いサポートを抜きにしては、今の自分はいないと感謝する。

「今のこの生活は、彼女がノーと言ったら機能しなくなる。自分にはたくさんのパズルが必要で、それらが一緒にフィットするからこそ、今夜ここ(優勝会見の席)に座ることができている」

 フェデラーが快挙を達成する一方で、今大会はケガを再発させたり、復帰の過程で苦しんだりする選手も見られた。

 まず、第1シードのラファエル・ナダル(1位、スペイン)は、チリッチとの準々決勝で、右足腸腰筋のケガをして、完治まで3週間が見込まれている。

「受け入れるのが本当につらい。ツアーを運営している誰かが、今起こっていることについて少し考えるべきだ。こんなにケガをしている人が多いんだから」と、ナダルはツアーへの苦言も呈している。

 また、右ひじのケガからカムバックした第14シードのノバク・ジョコビッチ(14位、セルビア)も、4回戦の第1セット終盤から痛みが再発して敗れた。

「4回戦で大会を去ることになったが、受け入れるしかない。チームのみんなとすべて再検討しなければならない」と話しており、再び戦列離脱の可能性も囁(ささや)かれている。

 さらに、左ひざの手術から戻り、メルボルン入りしてから出場に踏み切った第9シードのスタン・ワウリンカ(8位、スイス)は、2回戦で敗れた。

「最初は試合ができると思わないでメルボルンに来たのだから、試合ができたことは、自分にとって大きな前進だった。これからしなければいけないことがたくさんあるし、我慢ももっと必要になるだろう」

 そして、右手首のケガから、全豪ではなくATPニューポート・チャレンジャー大会で復帰を果たした錦織圭(24位)、復帰初戦ではフルセットで敗れ、ベストコンディションに戻るまで、まだかなり時間が必要なようだ。

 2017年シーズン後半にツアーから離脱した選手たちは、昨年の全豪決勝を争ったフェデラーとナダルのような劇的なカムバックとはいかず、厳しい現状と向き合いながら再浮上を目指す。

 フェデラーの強さの根源のひとつに、”プレーをし過ぎないようにする”徹底したスケジューリングがある。36歳という年齢もあるが、戦う大会を厳選している。

 自分の目標を定め、優先順位を決めて、注意深くプランニングすることが、成功を収めるために大切だということだ。錦織らカムバック組にも参考になるところがあるのではないだろうか。

「良いスケジュールを組んで、ハングリーな気持ちを維持していけば、たぶん良いことが起こる」

 また、チリッチはフェデラーの変わることのない強さの理由を次のように挙げる。

「競うことへの情熱が、シーズンが変わっても、とてつもなく高い。それから、フィジカルもメンタルも自分自身に挑戦し続けることができていて、トップレベルにある。ハードに練習して、向上しようとしている」

 今のフェデラーは実に楽しそうに、そして実に幸せそうにテニスをする。グランドスラムでの結果が示すように、心技体が充実している彼を倒すことは容易なことではない。

「ここ12カ月でグランドスラムを3回優勝できたなんて、自分自身でも信じられない。年齢は問題ではなく、単なる数字だ」

 謙虚にこう語る2位フェデラーは、全豪での優勝によってATPランキングポイントが9605点になり、1位ナダルの9760点に肉薄して、36歳の世界1位復帰が現実味を帯びてきている。

 はたして、打倒フェデラーを目指す他の選手がどれだけレベルアップして、残りのグランドスラムで優勝争いをできるだろうか。全豪で初のグランドスラムベスト4に進出したチョン・ヒョンをはじめとした”Next Gen”の選手たちの成長も今季のキーポイントになるのは間違いない。

 そして、錦織らカムバック組が、再びトップ10に戻って、独走に入ろうとしているフェデラーを追撃できるかどうかも注目すべき点だ。

 2018年シーズンも強いフェデラーは健在で、しかもその進化はとどまるところを知らない。

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