マドリーかパリか。CL大一番の展開を、欧州人より詳しい3人が予測

蹴球最前線──ワールドフットボール観戦術── vol.8

 2017-2018シーズンの後半戦、各地で最高峰の戦いが繰り広げられる欧州各国のサッカーリーグ。この企画では、その世界トップの魅力、そして観戦術を目利きたちが語り合います。

 サッカーの試合実況で日本随一のキャリアを持つ倉敷保雄、サッカージャーナリスト、サッカー中継の解説者として長年フットボールシーンを取材し続ける中山淳、スペインでの取材経験を活かし、現地情報、試合分析に定評のある小澤一郎──。

 今回のテーマは、チャンピオンズリーグ(CL)、決勝トーナメント注目のカードである、パリ・サンジェルマン対レアル・マドリードの展望。調子の上がってこないロナウドは、移籍したネイマールは? 両監督の采配は? 3人が展開を予測しました。

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――今回は、CL決勝トーナメント1回戦の中から、まずは最大のビッグマッチ、マドリー対パリ(第1戦;2月14日、第2戦;3月6日)からお願いします。


ホームでの大一番でロナウドはゴールを決められるか?

中山 このカードを展望するうえで最も大きなポイントになるのは、大不振に陥っているマドリーがパリ戦までに復調できるのかどうか、ということだと思います。

その点で言うと、ラ・リーガ第20節(1月21日)のデポルティーボ戦からジネディーヌ・ジダン監督がイスコをトップ下に置いた4−4−2から、昨季までの4−3−3にシステム変更したことで、少し変化の兆しが現れているのは間違いないと思います。特に今季初めて「BBC」がスタメンで再結成された翌第21節(1月27日)の3位バレンシアとのアウェー戦では、マドリーらしい戦いをして、難しい試合を4−1で勝利することができました。

 ただし、正直言って、この変化が本物かどうかはまだ微妙なところですね。事実、続く第22節では、アウェーとはいえ下位のレバンテと引き分けを演じてしまいましたし、肝心の「BBC」も昨季までのような脅威を相手に与えることはできませんでした。2試合連続2ゴール中だったクリスティアーノ・ロナウドは相変わらずシュートミスやボールロストが多く、1点リードした直後の後半81分には珍しく途中交代を命じられてしまいました。

 昨季までのロナウドならその采配に不満を露わにしていましたが、その試合ではおとなしくベンチに下がっていたところを見ると、おそらく本人も不調を自覚しているのでしょう。やはりエースの完全復活なくして、パリに勝つのは難しいと思います。

小澤 スペイン国内の報道でも、パリが有利という声が多いですね。だから僕は、2015−2016シーズンのCL決勝のアトレティコ・マドリー戦のように、マドリーは予想に反してパリにボールを持たせて守備的に戦うのではないかと予想しています。ジダン監督としても、実質的にはもうCLしかタイトルは残っていませんし、それだけにこの試合に対してはかなり慎重に入るのではないかと思います。

 パリの3トップ「MCN(キリアン・ムバッペ、エディンソン・カバーニ、ネイマール)」のカウンターの餌食にはなりたくないと考えるでしょうし、特に今季の課題である攻→守のトランジションは気をつけると思います。現状では修正を加えないと厳しいでしょう。ボールの奪われ方を意識して、ホームのサンチャゴ・ベルナベウでの1stレグであっても守備的に入った方がいいと思います。

倉敷 マドリーは国内リーグでもなかなか完封できていないのが気になりますね。インテンシティーも、アイデアもない。守備のズレも酷いと評価され、なかなか信頼を回復できずにいます。攻撃陣で七難隠したくとも、頼みのロナウドにもネガティブな報道が目立つ。もう彼の心はマドリーにないとか、多くのサポーターが彼は出て行くと感じているとか。ジダンとの関係もどうなのでしょう?

 とはいえ、特別な選手です。ラ・リーガでのパフォーマンスがどうであれ、CLではしっかり結果を残している。バロンドールに繋がる道ですからモチベーションも高いはず。では、彼の相棒は誰が適任なのか? 小澤さんはどう見ていますか?

小澤 個人的にはカリム・ベンゼマを外すしかないと思っています。ロナウドとベンゼマのパフォーマンス、得点力が今季は極端に低下しているうえ、守備のタスクからも除外されていることを考えると、やはり前線に守備をしない2人を同時起用してパリと戦うのは厳しい。そうなると、ロナウドをセンターに置いて、右にガレス・ベイル、左にイスコかマルコ・アセンシオを使うのが得策でしょうね。

倉敷 ウナイ・エメリ監督が就任して2シーズン目を迎えたパリの状況を、中山さんはどう見ていますか?

中山 グループリーグ6試合で計25ゴールをマークしてCL史上最高記録を更新したように、「MCN」のタレント性と破壊力については、現在欧州ナンバーワンと言っても過言ではないと思います。戦い方もすごく攻撃的で、両サイドバックのポジションを高く維持して、常にボールを支配して相手陣内でゲームを進めたいという意図が見て取れます。

 実はエメリが監督になった時、彼としては戦術的な修正を施して、ある程度各選手が自分のポジションを守る形の組織的な守備を植えつけようとしました。しかし、主力組から不満が噴出し、結局は選手の意見を尊重して前任者ロラン・ブランのポゼッションスタイルに回帰したという経緯がありました。

 実際、それによってチームの雰囲気も良くなって、結果が出るようになった。しかも今季はネイマールという別格のスーパースターが加入したので、ある程度守備面の綻びには目をつむって、とにかく攻め倒すことで守備をするというスタイルで戦っています。もちろん、エメリとしては不本意な部分もあると思いますが、彼も将来のことを考えればいい経験になっているのではないでしょうか。

小澤 たしかに、エメリのキャリアでこれだけのタレントを抱えたことはないですからね。ただその中で、彼はボールを保持する形のチームをしっかり作っていることは間違いなく、その部分についてはマドリーよりも上だと思います。ただ逆に、守備に明らかな問題がありますよね。普段のリーグ戦ではそれほどボールを持たれる時間、試合がないので目立ちませんが、マドリーのような相手と戦う時は同じようにはいかないと思います。

 それが露呈したのが、3−1で敗れたグループリーグ最終節のバイエルン戦でした。あの試合の3失点すべてがサイドからやられたことからもわかるように、とにかくサイドの守備が手薄です。当然サイドバックの問題もありますが、ムバッペやネイマールの戻りが少ないので、ビルドアップ時に相手のサイドバックに高いポジションをとられ、ウイングやサイドハーフと合わせて2対1の状況を作られてしまうことが多い戦術構造です。その時にマルコ・ヴェラッティやユリアン・ドラクスラーのようなインテリオール(インサイドハーフ)の選手がサイドに釣り出された時、対応が遅れて逆にセンターを突かれるようなこともあります。

 時間は経過していますが、ああいったシーンはマドリーも分析していると思うので、そこを突くプランを持つことはひとつポイントだと思います。

中山 まさにその通りで、パリのサイドバックのレイヴァン・クルザワとダニ・アウベスは攻撃力に疑いの余地はありませんが、守備には脆さがあります。それと、ネイマールは仕方ないとしても、ムバッペはまだ若いんだからもっと守備もした方がいいですよね。カバーニがあれだけ走って守備をしているんですから(笑)。

 僕がそれ以上に問題だと思っているのは、中盤の守備です。ベストメンバーなら、センターにティアゴ・モッタ、右にヴェラッティ、左にアドリアン・ラビオとなりますが、12月から故障で戦列を離れていたモッタが、復帰してまだ間もないという不安があります。しかも、昨季までは中盤の守備を広いエリアでカバーしていたブレイズ・マテュイディ(現ユベントス)がいましたけど、今季はその穴を埋める選手がいません。

 そこで冬の移籍マーケットでラサナ・ディアラを補強したわけですが、彼がマドリーでプレーしていた頃と比べると衰えは隠せませんし、すぐにパリのサッカーにフィットできるかどうかも分かりません。

 国内リーグでは21歳のジオヴァニ・ロ・チェルソが急成長していますが、さすがに経験値からしてマドリー戦で使うのはリスキーでしょうから、もしモッタが間に合わなければ、ラビオをセンターにして、右にヴェラッティ、左にドラクスラーを使うと思います。ただ、それでは中盤の守備の問題は解決しません。その辺りをエメリがどのように判断するかが見ものです。

倉敷 ウナイ・エメリはヨーロッパリーグ(EL)3連覇の実績がパリのフロントに評価されたわけですが、実はビッグネームの選手を使うのがあまり得意ではないという印象が拭えない。まさに試金石のゲームです。ジダンが置かれている状況も厳しいけれど、エメリもこの勝負に負けたらどうなるか。2人の監督の置かれている立場にそれほどの差はないと想像できますね。

 エメリはかなり練った戦術で戦いたいはずですが、結局はネイマールを使ってどう戦うのか、に問題点が集約されてしまう。特別な選手を抱える監督の悩みですね。かつて、バルセロナのペップやルイス・エンリケに与えられた命題と似ていますが、パリにメッシはいない。そこにはプラスとマイナスがある。どんなアイデアを持ち出すか?

 キャラクターで比較すると、攻撃的なディフェンスで賛否はありましたが、マドリーはペペがいなくなってしまったことで中央の睨みが効いていないことが気になります。特にこれからのラウンドですね。セルヒオ・ラモスも未だに本来のコンディションではない。インテンシティーの面ではカゼミーロへの依頼心が強すぎるように感じられる。優勝を目指すためにはキャプテンシーを発揮し、無理やりにでもチームを引っ張っていく人材が不可欠です。

小澤 ペペの抜けた穴がどのように影響しているのかはわからないですけど、たしかに今季のマドリーのほぼすべての選手が、昨季よりもパフォーマンスが落ちているように見えますよね。特に守備陣ではラファエル・ヴァランとセルヒオ・ラモスの2センターバックは、昨シーズンの安定感からは程遠い出来だと思います。

 戦術的にどうしてもサイドに釣り出され1対1や1対2の対応を強いられるのですが、マドリーのCBであれば数的不利な局面でも一人で解決する能力が求められます。しかし、今季は最後の砦であるはずの彼らが脆い。しかも、それに代わる選手もいない。唯一、ナチョ・フェルナンデスは頑張っていますけど、ヘスス・バジェホはほとんど戦力になれていません。

 そういう面で、マドリーがパリに対してどのように組織で守るかという点が重要になると思います。第1戦は右サイドバックのダニエル・カルバハルが出場停止で欠場するのが痛いところですが、いずれにしてもパリ戦のポイントはいかにしてネイマールを抑えるかになると思います。そうなると、ナチョが縦方向のドリブルを抑え、カットインで持ち出されたところをアンカーのカゼミーロと協働で止めに行くという守り方がこの試合の見どころになると思っています。

中山 カゼミーロには、できるだけセンターバックの前のエリアでプレーさせたいですよね。彼がそのエリアを留守にすると、パリにはラビオとヴェラッティという攻撃センスに優れた中盤2枚がいるので、そのエリアにどんどん入って行くと思います。しかもそういう時は、1トップのカバーニは無理に引いてボールをもらうことはせず、おとりとしてサイドに流れてセンターバックを引っ張る動きをするのがうまいですから、マドリーの守備が崩壊してしまいかねません。

倉敷 噂は噂かもしれませんが、ネイマールがマドリーに移籍するという噂は、世界中で報じられている。ペレス会長はロナウドに代わるアイコンと考えているのか? この試合は、近未来につながる見どころも多いですね。マドリー戦に闘志を燃やすことには賭けてもいいネイマールが活躍して、パリが勝つ可能性もあると思いますが、個人的にはマドリーが勝ち上がるんじゃないかな。エメリはビッグクラブに勝てないと歴史がどうしても引っかかるんですよ…。

小澤 たしかに、バレンシアを率いていた時も常にリーグは3位、4位で、マドリー、バルセロナの2強にはとにかく勝てませんでした。「大一番で弱い」というイメージがバレンシアニスタにはあって、それでバレンシアを去ったという経緯もありますからね。戦術で勝とうとしていろいろな手を打つんですけど、なかなかビッグクラブ相手にはそれが成功しません。昨季のCLバルセロナ戦での大逆転負けが、そのイメージやジンクスを加速させています。

中山 もしパリが負けたら、エメリは間違いなく今季で解任でしょうね。逆に、ジダンも負け方次第では即更迭という話になるかもしれません。両監督にとっては、まさに”生き死に”をかけた大一番になりそうですね。

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◆ベンゲルに挨拶にきたジョージ・ウェア。グランパスの選手はビックリ仰天した>>

◆ネイマール抜きでも、なぜ今季のバルサは強いのか。あの3人が考えた>>

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