初戦失格のショートトラック吉永に松田丈志が「次はやれる」と言う理由

初戦失格のショートトラック吉永に松田丈志が「次はやれる」と言う理由

 2月10日江陵アイスアリーナで開催されたショートトラック競技。日本代表チームは厳しいスタートとなった。

 この日に行なわれた男子1500m予選、女子500m予選、女子3000mリレー予選、いずれのレースも予選突破はならなかった。

 注目していたのは男子1500m予選。日本からは横山大希、吉永一貴、渡辺啓太の3選手が出場した。期待の18歳、吉永選手は日本のショートトラック史上最年少出場となる五輪で最初のレースだ。

 レース後に吉永選手と話ができた。以前から攻めるレースがしたいと語っていた彼は、レース前でもそんなに緊張はしなかったという。

 自身の言葉通り、レースは積極的に攻めた。序盤では先頭に立って自らレースを引っ張るシーンもあった。しかし初めての五輪、これまでのどの大会よりも観客も多い。その独特の雰囲気のなか、普段なら”攻め”のスケーティングの中にもクレバーな冷静さを持ち合わせる吉永選手だが、この日は攻め続けたい気持ちが前に出すぎてしまう。

 レースは準決勝進出圏内の3着でゴールしたが、レース後の審議で、終盤にインから前をいくハンガリーのリュウ・シャオアン選手を抜きにいったタイミングで、ブレードがリュウ選手に当たっていると判定され、ペナルティを受けて失格となった。

 接触の多いショートトラックではあるが、吉永選手は攻めのスケーティングとともに、クリーンなスケーティングが持ち味だっただけに、意外なシーンでもあった。

 本人も接触してしまった場面については、「攻めるタイミングをもう一呼吸置いてもいいシーンだったが、気持ちが焦ってしまい強引にいってしまった」と振り返る。

 一方で、五輪という舞台で自分の力が通用すると感じたレースだったという。会場の大歓声を聞き、改めてここで結果を出したいと意を強くしたそうだ。

「実力がなければ、五輪の舞台で攻めることはできない」

 日本水泳連盟会長だった古橋広之進名誉会長の言葉を思い出した。かつて日本競泳界が世界のレベルから大きく引き離されていた時期、代表チームのレースを観戦した古橋広之進さんが「誰か前半から積極的に泳げる選手はいないのか」と嘆いたという。

 当時まだ日本代表ではなかった私だが、その言葉が強く印象に残っている。競泳のレースでも、世界の舞台で後から追い上げていきましょうという”守り”のレースではもう勝負に間に合わないのがほとんどだ。実際に五輪で、守りの姿勢で結果が出ることはほぼないだろう。しかし、勝負どころを見極め、そのタイミングで力を発揮するため、その時まで冷静にレースを展開するのも逆説的だが、”攻め”の姿勢だ。

 私が考える最もダメなレースは、とにかくいくだけいくという玉砕型のレースだ。レース全体の展開を考え、自分のパフォーマンスが最大限発揮できるようにレースを展開するのと、ただガムシャラに前半から押していくレースでは訳が違う。競泳でも大事なときに、イチかバチかで自ら玉砕しにいくようなレースをする選手もいたが、それは自分の可能性を最大限引き出す戦術ではないだろう。

 自分の可能性を引き出すには攻めるレースが必要だ。しかし、そこには冷静さも兼ね備えなければならない。

 私は、五輪初めてのレースで吉永選手があれだけ積極的に滑れたことは素晴らしいと思う。この経験はまたひとつ吉永選手のステージを上げたはずだ。ともに観戦させてもらった母・美佳さんも「次につながるレースだったし、スケーティングの成長も感じた」と話していた。

 これから大切なのは、試合期間中に自分が成長していくイメージを持つことだ。五輪はスタートしたが、選手はこの五輪期間中でも成長できる。なぜなら、経験は常に蓄積されていくからだ。

 初出場の吉永選手も、これで五輪の舞台は”経験済み”だ。

 初戦の経験を自分の中で消化し、課題を理解し、そこへのアプローチを続ける。この作業を五輪期間中でも、この短期間でも冷静にやれる選手こそが成長し続けられる。

 幸いにも、今回のショートトラック競技は中2日、中3日、中2日とブレイクを挟みながら競技が進んでいく。たとえ個人競技でも、代表チームには流れがある。選手の思いは伝播する。それは自分たちはやれるという思いも、あるいはその逆も同じように、だ。

 13日には女子500m予選、男子1000m予選、男子5000mリレー予選が行なわれる。チーム一丸となって、自分たちで流れをつかみにいってほしい。

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