どん底を見た女、比嘉真美子がツアーのトップレベルに復活できたわけ

どん底を見た女、比嘉真美子がツアーのトップレベルに復活できたわけ

 比嘉真美子(24歳)が好調だ。

 今シーズンは開幕戦のダイキンオーキッドレディスこそ予選落ちしたが、その後は順調に予選を通過し、4戦目のアクサレディスでは優勝争いを展開。フェービー・ヤオ(25歳/台湾)とのプレーオフでは惜しくも敗れたものの、堂々の2位でフィニッシュした。さらに、6戦目のスタジオアリス女子オープンでは、最終日にノーボギーで回って3位に入った。

 前半戦から何度も上位争いを演じている比嘉。年間2勝を挙げたルーキーイヤー(2013年)を彷彿とさせる勢いだ。

 また、今年はピンゴルフと新たに用具契約を結んだ。「メジャー大会を含めて年間3勝を目指す」という目標に向けて、周囲のサポートも整っている。

 それにしても、ツアー2年目で伸び悩み、3年目にはシード落ちするなど、どん底の状態であえいでいた比嘉とは”別人”だ。

 そのツアー3年目の2015年シーズン、比嘉は17試合連続を含めて、年間32試合のうち23試合も予選落ちを喫した。賞金ランキングは95位まで急降下。シードも喪失して、ルーキーイヤーで見せた輝きは完全に消えていた。

 とにかくショットが暴れて、スコアメイクがままならなかった。将来を嘱望された逸材の目を覆いたくなるような不振に、周囲も声をかけるのをためらったほどだ。

 だが、比嘉は目の前の現実から逃げることはなかった。真っ暗なトンネルの中にあっても、微かな光を求めて、前を向いて戦い続けていた。当時、彼女はこう語っている。

「人は、ずっといいことばかりあるわけじゃない。悪い時期というのを、今こうして経験できていることがよかった、と思っています。家族やキャディー、トレーナーさんなど、多くの人が支えてくれていますし、悪い状況にあっても、多くのことが学べますから。そうした現状を打開していく過程において、いろいろな話をすることで、さらに学ぶ意欲が沸いてきています」

 そうして、翌2016年は序盤戦こそ、前年の不調を引きずって予選落ちを繰り返していたが、終盤戦からは徐々に調子を取り戻していった。優勝争いにも絡み出して、最終的には賞金ランキング34位とシード復帰を果たす。

 続く2017年シーズンには、NEC軽井沢72で4シーズンぶりの優勝を飾って完全に復調。賞金ランキングも、ルーキーイヤーの8位に次ぐ12位という好成績を収めた。

 迎えた今季、冒頭で記したとおり、一層の活躍を見せている。比嘉が言う。

「今年なんかはもう、何も心配していません。ツアー初参戦からまる5年のシーズンを過ごして、今年は6年目となりますが、初めてツアーを勝った年(2013年)よりも、どの年よりも、すごくいい感触で戦えています。

 しっかりとショットが打てているので、あとは自分に自信を持ったり、パターの技術をもっと上げたりして、プレーがかみ合えば、絶対にいいスコアが出ると思っています。チャンスが来るまで、じっと待つだけって感じですね」

 昨季、久しぶりの優勝となるツアー通算3勝目を挙げて以降、着実に自信を取り戻していることが、言葉の端々から伝わってくる。

 好調の要因について聞くと、ひとつはオフの過ごし方を変えたことにあるという。

「いい意味で”休み”を作らなかったんです。昨季は、世界4ツアー対抗戦『ザ・クイーンズ』(12月1日〜3日/愛知県)が最後の試合だったんですが、休みを入れずに少しずつトレーニングを始めたんです。

 以前のオフは、ツアー終了後に一度長く休んでいました。そうすると、いざトレーニングを始めようとしたときに、かなりしんどくて……。ゼロから始めるとリズムがつかめないので、しっかりベースを作る意味でも、休みを取らずに少しずつトレーニングをしていきました。

 あと、ボールを打つにしても、ただ打つだけではなく、素振りも今までよりも重視してやりました。トレーニングも、トレーナーさんと一緒に例年よりもひとつレベルの高いところまで追い込みました。そういうのが生かされて、開幕からしっかり(試合に)入れた部分があります」

 もうひとつ、結果を残せている明確な理由がある。

「ツアー中の、ピンゴルフのサポート体制がとても心強いです。それと、私の中で大きいのは、指導を受けている辻村(明志)コーチのサポートです」

 比嘉はこれまでコーチをつけたことがなかったが、昨年途中から上田桃子らも指導する辻村コーチに師事した。そこから、比嘉は確実に変わった。

「辻村コーチについてもらうようになってから、自分がやるべきことや課題を克服するための練習が、ものすごく明確になりました。自分の短所が、毎日の練習で鮮明になっていくんです。

 課題については、コーチとしっかりと話し合って、それから明らかにしていくことが多いです。例えば、今はこんな感じがよくないとか、自分で気づいたことをコーチに伝えて、ふたりで話し合いながら課題や問題点を探していくんです。そうすると、迷いや不透明な部分がなくなって、やるべきことがはっきり見えるので、すごくいいですね」

 取り組む姿勢と環境が変わり、今は”ニュー比嘉”として確実に成長している。ツアー本格参戦1年目の2013年、ツアー2勝を飾って「男は松山(英樹)。女は比嘉」と並び称され、”大物ルーキー”としてはやし立てられたのは、もはや過去のことだ。

「『大物ルーキー』って評していただいたときは、もちろんうれしかったですよ。ありきたりな表現よりかは、ずっといいと思っていました(笑)。みなさんが一目置いてくれるから、そういう表現で私のことを世間に伝えてくれていることは、素直にうれしいです。

 ですから、今でもプロゴルファーであるからには、人よりも魅力的な選手だったり、ひと味違うプレースタイルだったり、そういうものをしっかり求めていきたいと思っています」

 話を聞いている合間、時折フーッとため息をついて「そんなこともあったな」といった様子で目を細める比嘉。練習グリーンで、パッティング練習の手を止めると、最後にこんな言葉を残した。

「いい年も、悪い年も、プロデビューしてからの5年間に詰まっています。同様に、これから先もどうなるかわかりません。ただ、先のことをいろいろと考えて、モヤモヤしているのは無駄だなと気づきました(笑)。何か起こったら、そのときに起こったことに対して考えればいいので。

 だから今を一生懸命にがんばっている感じです。今を全力、ですよ。今年は怠けずにがんばれば、(優勝は)できると思います」

 まだ24歳の比嘉だが、ことプロゴルフの世界においては、酸いも甘いも早々に知ってしまったかもしれない。その分、年を重ねた証拠でもあるが、彼女は「そうは思いたくない(笑)」と、すかさず返してきた。

 どん底から這い上がり、一段とスケールアップした「強い比嘉」の完全復活は間近である。

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