日本一から最下位への転身。鬼軍曹・鳥越コーチはジョークから始めた

日本一から最下位への転身。鬼軍曹・鳥越コーチはジョークから始めた

【連載】チームを変えるコーチの言葉
〜千葉ロッテマリーンズ ヘッドコーチ・鳥越裕介(1)

 新たに井口資仁(ただひと)が監督に就任した今季のロッテは、コーチングスタッフも大幅に入れ替わった。二軍も含めて計8名が新任となり、そのうち一軍ヘッド兼内野守備走塁コーチの鳥越裕介は監督の参謀役として期待される。井口にとって、鳥越は現役時代に二遊間コンビを組んだ間柄でもあり、ソフトバンクでの11年間にわたる指導者経験と実績がチーム作りに不可欠と考えたのだ。

 鳥越はソフトバンク二軍監督から一軍内野守備走塁コーチになった2011年以降、4度のリーグ優勝と日本一に貢献してきた。その間、ロッテは3位が3度と健闘していたが、昨年は投打ともに不振を極め、球団ワーストの87敗を喫しての最下位。2年ぶりに日本一を達成したばかりの強豪チームから、同一リーグの低迷チームに移って、まず、どういう違いを感じたのか。鳥越に聞いた。

「違いというか、捨ててきたので、福岡のものは福岡で。基本的には、比べることはしてないです。新しいところに来て、一から始めるだけ、と思っていました。ユニフォームが違えば、場所も違う。何もかも違うのは当然、比べようもないですから」

 きっぱりと言う鳥越の入団が発表されたのは、昨年11月21日のこと。日本シリーズが閉幕して20日も経っていない時期だったが、新生マリーンズの鴨川秋季キャンプはすでに終わっていた。したがって、正式にチームに合流したのは、今年2月の石垣島での春季キャンプからだ。鳥越自身、一部で”鬼軍曹”と称されていることを自覚しているだけに、初対面での反応は気になっていた。

「自分では鬼の部分は出してないつもりだったんですけど……(笑)。探りの目で見られるのは当然だと思っていました。でも、去年、自分がいたチームが勝ったからか、こちらのチームが選手も含め、スタッフも含め、いい感じで迎え入れてくれたんです。それでキャンプでは選手もよくついてきてくれたところもあるし、ありがたかったですね。ただ、知らないことだらけなので、まずは知ること、見ることから始めて。選手だけでなく、スタッフ、大きく言えばチーム全体を知らないと」

 知ることの第一歩は、”監督の野球”だった。井口と鳥越の出会いは、1993年、日米大学野球のオールジャパンメンバーに選ばれた当時まで遡(さかのぼ)る。

 青山学院大1年の井口に対し、鳥越は明治大4年で3つ年上だった。そして同年のドラフト、鳥越は中日を逆指名して2位で入団。井口は96年ドラフトでダイエー(現ソフトバンク)を逆指名して1位で入団すると、99年のシーズン途中、鳥越が中日から移籍してチームメイトとなった。2001年から3年間は二塁・井口、遊撃・鳥越でコンビを組んだとあって、監督・コーチの関係でも”阿吽(あうん)の呼吸”が生かされるのではないか。

「いやもう、彼はメジャーリーガーですからね。でも、あの、ホワイトソックス時代にショート守っていたホアン・ウリベ? 彼よりはいいコンビでいけると思ってるんで(笑)。去年、監督から直に口説かれたとき、周りの何人かに相談したらほぼほぼ反対されたんですが、僕は決めていました。まあ、自分の野球人生で、千葉で野球するとは思ってなかったですけど……。九州の人間で、福岡出るとなって大変でしたけど、監督が何を目指すのか。まずそこを知ってからですね」

 監督就任に当たり、井口は「機動力を生かした”1点を取る野球”」を掲げた一方、「コミュニケーション重視のチームづくり」も掲げた。監督自ら選手としっかり対話できるほうがいい、という考えを持つ。

 反対に、選手との対話は必要最低限にとどめる指揮官もいるし、井口のような方針であっても、ときには直に言わず、間にひとり入ったほうがいいケースもあるだろう。それはヘッドコーチの役割のひとつでもあるが、鳥越はいかにして選手とコミュニケーションを取るのかを最優先した。

「選手のことを知るために、キャンプでは冗談を言うことから始めました。鬼じゃないけど、どうしても怖いイメージがあるんでしょうから、自分の人となりをさらけ出すことから始めて。朝ご飯のときからグラウンドでも、積極的に声をかけましたね。僕は技術よりもまず人だと思ってるんで、性格を知らないとアプローチできません。だから、冗談を言ったときに、どんな表情するのかな……と。あっ、コイツはノッてくるんだ、コイツは声をかけられると引くな、とか」

 個人差はあったが、声をかけられた選手は全般的に嬉しそうだった。新任コーチとしては、昨年87敗もしたチームなりのネガティブな反応もあるのでは、と心配していたが杞憂(きゆう)に終わった。みんな自分を受け入れてくれているんだな、という実感を得た。

「だいたい、他愛もない話から入るんです。安田(尚憲)っていうルーキーがいたら、『お父さん、何歳?』って聞いて、『よかった、年上で』とか、話しながらプライベートのことも聞いて。あとは結婚しているかどうかも知らない選手に、『え? お前、結婚してんの?』とか。『え? お前、そんな老けてるのにまだ23歳? ごめんごめん、オレ、お前のこと全然、知らねえな』とか(笑)。そういう感じで、笑いですよね。笑顔を見せてもらいたいがために、いろんな冗談を言いましたね」

 ある程度、選手たちの性格を把握し、あらためてグラウンドでの動きを見ていくと、ひとつの思いが湧き上がってきた。

「僕がキャンプで思ったのは、『なんで去年そんなに負けちゃったの?』というぐらい、悪くないということです。だから『お前ら、いけるやん。全然、悪くない』ってみんなに言いました。いい子たちばっかりなんで……。『なんで、そんなに負けちゃったの?』って、逆に不思議でしたね」

 必要以上に敗因を求めて過去に戻るのではなく、未来に向かって勝つためにどうするか、それを優先して実行する方がよほど大事と、鳥越は思い直した。

「じゃあ、突き抜けて勝つだけの力があるかといったら、まだそこまでのポテンシャルはないと思います。でも、やるべきことをきっちりやっておけば、それなりに戦えるものはあるし、そんなに負けないだろうと。とにかく、勝率5割で食いついていくぐらいはできるだろうというレベルだと思うんです。プロ野球のペナントレースというのは、どんなに強いところでも60ぐらいは負けます。そのなかで、どう勝ちと負けの差を少なくして、どう勝ちを先行させていくか、だけなので。だから実際、いけると思いますよ」

つづく

(=敬称略)

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