J・バトン新連載。いきなり「ホンダ1・2位」を演じた驚異の適応力

J・バトン新連載。いきなり「ホンダ1・2位」を演じた驚異の適応力

【連載】ジェンソン・バトンのスーパーGT参戦記(2)

 4月7日〜8日に岡山国際サーキットで開催された2018スーパーGTシリーズの開幕戦。今年からGT500クラスにフル参戦するRAYBRIG NSX-GT(ナンバー100)のジェンソン・バトンは山本尚貴とのコンビで2位表彰台を獲得し、いきなり元F1ワールドチャンピオンのすごさを見せつけた。

 今年2月、筆者は岡山国際サーキットで行なわれたメーカーテストでバトンの走りを間近で見ている。フル参戦デビューに向けて昨年末からテストを重ねてきたバトンだったが、そのときはGT500マシン特有の動きに慣れていない様子で、ドライブに苦戦しているようだった。

 バトンはF1で17シーズンを戦い、2009年にはF1王者の座を獲得するなど輝かしいレースキャリアを持っている。だが、スーパーGTなどツーリングカーの経験はほぼゼロ。昨年のスーパーGT第6戦の鈴鹿1000kmにスポット参戦したとはいえ、シーズンを通して戦っていくためには習得しなければいけないことはたくさんあった。

「クルマの動きがこれまでF1で経験してきたものと違うから、テストの間にいろいろ学んでいかなければならない」

 開幕2ヵ月前のメーカーテストのとき、バトンは少し不安そうな表情を見せていた。

 岡山国際サーキットと富士スピードウェイで行なわれた3月の公式テストでは、2018シーズンに参戦するGT500クラスとGT300クラスのほぼ全車が集結。RAYBRIG NSX-GTを走らせるチームクニミツは、少しでもバトンにマシンの動きやスーパーGTならではのGT300クラスとの混走に慣れてもらおうと、特に岡山公式テスト1日目では全4時間のセッションすべてを担当させた。

 とはいえ、公式テストの日数は4日間と決められており、その間にこなすテストメニューも膨大にある。純粋に練習ができる時間は、非常に限られていた。

 だがこのとき、バトンの能力の高さが垣間見えた。元F1王者はわずかな時間のなかでさまざまなことを吸収し、パートナーの山本とのタイム差を一気に縮めていったのだ。

 開幕戦の前日。チームクニミツのトランスポーターを訪れると、2ヵ月前のテストのときとは見違えるほどに、バトンは自信に満ちた表情をしていた。

「最初のテストのころと比べると、自信を深めることができた。特にGT300クラスとの混走をしっかり練習できたのは大きかったね。不安材料はほとんどない。簡単なレースにならないとは思うけど、チームクニミツのみんながすばらしい仕事をしているので、いい形で開幕戦を迎えられそうだ」

 しかし、開幕直後に予想外の事態が起こってしまう。予選前の公式練習でミッション系トラブルが発生し、まともに走ることができないまま予選を迎えることになったのだ。

 チームは総力を挙げてマシンを修復し、Q1では山本が2番手タイムをマーク。見事にQ2へと進出し、バトンにステアリングをつないだ。ところが、Q1終了直後に突然雨が降り出し、路面はたちまちウェットコンディションに……。バトンはシーズン前テストでウェットタイヤでの走行も経験していたが、今回は事前に走り込めていない状態での出番となり、まさに”ぶっつけ本番”でのタイムアタックとなった。

「いくら元F1王者とはいえ、この条件で好タイムを出すのは難しいだろう」。誰もがそう思った。しかし、一発の勝負どころで能力を発揮するのが、バトンのすごいところだ。難しいウェットコンディションのなか、ミスのないアタックを決めて5番手タイムをマーク。優勝も狙えるポジションを手にした。

 そして迎えた決勝日。5番グリッドからスタートする100号車は、バトンがスタートドライバーを担当することになった。今年からルールが一部変更となったスタートシステムの影響で、1周目は予想以上の大混乱となる。バトンは8番手まで後退し、慣れない混走のなかで隙を突かれて11周目には9番手にポジションダウンしてしまった。

 だが、バトンは冷静さを失っていなかった。上位進出のために、チームはタイヤ無交換作戦を敢行。バトンはスーパーGTでのレース経験が少ないながら、しっかりとタイヤマネージメントを行ない、安定したペースで順位をキープした。そして37週目にピットインし、山本に交代。この作戦によってピット作業を大幅に短縮でき、2番手に浮上することに成功した。

 レース終盤はトップを走るKEIHIN NSX-GT(ナンバー17)を山本が追走し、逆転することはできなかったものの、見事に2位でフィニッシュ。スーパーGTフル参戦のデビューレースで表彰台に立ち、バトンは満面の笑顔で応援してくれたファンに応えていた。

「(新しいスタートシステムについて)僕はいいスタートを切れたんだけど、先頭のマシンが加速しなくて……。他のマシンが接触を回避しようとして混乱してしまった。昨年の鈴鹿にスポット参戦したときはレース中盤から乗ったので各車バラけている状態での混走だったけど、今回はスタート直後からGT300の集団に飛び込んでいく感じだった。大変だったけど、すごくいい経験になったよ」

 シーズン前の非常に短い期間での準備に加え、この開幕戦の週末で起きたトラブルに対しても、バトンは「いい経験」と捉えていた。間違いなく第2戦の富士スピードウェイでは、この経験を力に変えてさらに成長した走りを披露してくれそうだ。

 そして今回、バトンの言動でもっとも印象に残ったのが、パートナーである山本尚貴のがんばりを讃えていたことだ。

「チームがすばらしい戦略を用意してくれたので、タイヤ無交換作戦で20秒くらいタイムを稼ぐことができたよ。そこから後半のナオキ(山本)は、交換していないタイヤで最後まですばらしい走りをした。間違いなく彼は、今回の『ドライバー・オブ・ザ・デー(※)』だね」

※ドライバー・オブ・ザ・デー=そのレースでもっとも活躍したドライバーに与えられるもの。

 F1とは違い、スーパーGTは複数のドライバーで1台のマシンをシェアして戦わなければならない。そのため、今回のようなレース戦略も勝敗を左右する重要な要素となる。また、時には勝利のために、自身がチームのなかで脇役に徹しなければいけない場面も出てくるだろう。

 開幕戦を経て、バトンは改めて「スーパーGTで勝つために一番重要なのは”チームワーク”なんだ」ということを感じているのはないだろうか。

 次回のスーパーGT第2戦は5月3日〜4日に富士スピードウェイで行なわれる。開幕戦で2位に入ったことにより、チームは30kgのウェイトハンデを背負うことになる。だが、バトンがもっとも欲していた「実戦での経験」を得たことで、次はさらなる進化を見せてくれるだろう。

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