悔しいぞ、トロロッソ・ホンダ。弱点を改善、マシンは最高だったが…

悔しいぞ、トロロッソ・ホンダ。弱点を改善、マシンは最高だったが…

「クルマには何も触らないでくれ、最高のマシンバランスなんだ!」

 スペインGPのスターティンググリッドにマシンを運んだピエール・ガスリーは、レースエンジニアにそう言った。ピットガレージからスタート練習をしてグリッドへ向かうわずか3周の走行で、ガスリーはあのバーレーンGP以上の感触のよさを感じ取っていたのだ。

「グリッドに向かうラップでは、クルマのフィーリングがものすごくよかったんだ。あんなによかったのは今シーズン初めてだよ。何も文句はなかったし、バーレーンのときよりもよかった。だから、すごく期待感も興奮も高かったんだ」

 通常ならここでフラップの角度調整など最後のファインチューニングを行なうところだが、ガスリーはそのままのマシンでレースへと出て行った。12番グリッドから新品のソフトタイヤを履いて、1ストップ作戦でトップ10圏内に駒を進めるのは決して難しいことではなかったはずだ。

 しかし、1周目にスピンしたロマン・グロージャンに巻き込まれてクラッシュ。バーレーンGPの再現が期待されたレースは、コーナーわずか3つで終わってしまった。

「ロマンがターン3のアウト側にいて、イン側にスペースがあるのが見えたから、できるだけ早くインに切り込んですり抜けようとしたんだ。それなのに彼が突然、インに向きを変えてきて僕に突っ込んできたんだ。スピンしてコースオフしたのに、コースに戻ってきたんだ。そんなことは予測できないよ。

 彼は完全にマシンがスライドしていたし、あんなに白煙を上げていたら何も見えない。ぶつかる直前に彼がそこに止まっているのが見えて、僕にはもうどこにも行き場はなかったんだ。だから、ぶつかる瞬間はステアリングから手を離そうとしたけど、本当に大きな衝撃だったよ」

 残るブレンドン・ハートレイは土曜フリー走行の大きなクラッシュで予選不出走となり、最後尾グリッドからのレース。本来のペースは悪くなかったが、ストレートでウイリアムズやザウバーを抜くのに苦労し、彼らに付き合わされてしまった結果、12位に終わった。

 しかし、トロロッソはバーレーンでの快走の後、上海とバクーでは低迷してしまったその原因を探り、ひとつの結論に辿り着いた。

 タイヤへの熱の入れ方と、風への対応――。主にこのふたつがSTR13のパフォーマンスを大きく左右しているという推測に基づき、金曜はフリー走行1回目から2回目へと大きくマシンを振って、その実地検証も行なった。

 ほぼ全開区間だけのセクター1での後れが大きかったが、これを是正する方向でセットアップの最適化も進めた。そうやって予選・決勝までに、STR13本来のポテンシャルを引き出す方法に辿りついたといってよさそうな状態だった。

「今週末の僕らのクルマはすごく満足できるレベルだったし、テクニカルなセクター3では常にトップ10にいたくらい、いいパッケージだった。今週末は上海やバクーに比べて、ポテンシャルが高かったのは確かだ。

 ただ、コーナーですごく速かった反面、ストレートで失っているから、まだドラッグ(のセッティング)が大き過ぎるんだと思う。もう少しダウンフォースを削ってストレートでもう少し稼ぐことができないのか、今後に向けてはもっといい妥協点がないのかを探る必要がある。来週(5月15日〜16日)のテストではそのあたりも理解を深めるために、さまざまな項目をテストすることになるね」(ガスリー)

 予選Q2では10位のフェルナンド・アロンソに対して0.364秒の差をつけられ、12位にとどまった。チームとしてはハース、ルノー、マクラーレンの次で、フォースインディア、ザウバー、ウイリアムズよりは上という、中団の真ん中のポジションだった。

 ヨーロッパラウンド開幕のスペインGPにはハース以外の多くのチームが大きめのアップデートを持ち込んでくるなか、トロロッソの開発はやや遅れ気味でアップデートがなかった。ただし開幕4戦を終えて、マシンとセットアップへの理解をまだまだ深めなければならない段階にあったトロロッソにとっては、ここで下手に”下地”を変えず、自分たちの分析結果を同じ”下地”で検証しなければならないという側面もあった。

 それでも、ストレートでは速度が足りず抜けなかった。それは前出のように、空力セットアップがストレートを犠牲にしたものであったことと、なによりホンダのパワー不足によるものだ。

「エネルギーマネジメントのセッティング的に、非常にまずい設定をしていたというようなことではありませんし、ストレートの途中で息切れ(ディプロイメント切れ)して、ああなってしまったわけではないんです。しかし、出力では4メーカーのなかで一番下だとも認識していますし、メルセデスAMGやフェラーリからは大きく離されているとも認識しています」(ホンダ田辺豊治テクニカルディレクター)

 しかし、パワーユニットは新スペックを投入するまで大きな出力向上を望むことは難しく、年間3基しか使うことができない以上、どのメーカーもシーズン中に大幅なアップデートを施す回数は限られる。そのなかでは、エネルギーマネジメントでパフォーマンスを最大限に引き出すしかない。

「現場からすれば、この今、我々が持っているスペックは変わっていないわけですから、それをどう使うかになってきます。クルマを速くするためには、そこをやるしかありません」(田辺テクニカルディレクター)

 ホンダは前戦バクーで露呈したエネルギーマネジメントのミスをきちんと対策した。簡単に言えば、セーフティカー走行中に本来行なわなければならないバッテリーの充電がきちんとできていなかった。だから、リスタート直後にバッテリーが足りない状態が続き、ストレートで次々と抜かれてしまった。

 ホンダのあるエンジニアは次のように説明する。

「昨年まで組んでいたマクラーレンのエンジニアやドライバーたちとは、こういう状況ではこういう使い方をする、という共通認識が当然のようにありました。フェルナンド(・アロンソ)などは本当に使い方がうまくて、自分で考えて充電・放電をしていたり。そういった共通認識が、トロロッソのエンジニアやドライバーとの間ではきちんと確認できていなかったんです」

 これを受けて、このスペインGPからは木曜日にホンダとトロロッソの間で『エネルギーマネジメントミーティング』を開くようにし、両者の関係はさらに強化された。実際にスペインGPの決勝中も、ハートレイはその知識を活用してエネルギーマネジメントを向上させていたという。

 この点においても、トロロッソとホンダは一歩前進することができたと言える。ただし大きな一歩については、ハードウェアのアップデートを待たなければならない。ホンダは目下、6月上旬のカナダGPもしくは下旬のフランスGP投入を目指して開発を続けているようだ。だが、それまでは現状で持っているものをいかに使うかで勝負するしかないのが現状だ。

 ただ、あらゆるコーナーがあってマシンの実力が問われるこのバルセロナできちんと仕上げることができ、トロロッソはマシンの理解という点では5戦目にして大きな一歩を前に踏み出すことができた。そして、パワーユニットの使い方でも前進することができた。トップとの差はまだまだ大きいが、中団グループから一歩ずつ確実に前へと進んでいくことこそが、今のトロロッソ・ホンダには求められている。

「バーレーンでよかったのはサーキット特性なのか、環境条件なのか。メルボルンや上海で悪かったのは、なぜなのか。悪かった部分から学んで成長し、悪かった部分を潰して臨んだこのスペインGPでそれなりの改善結果が見られたことは、この他のサーキットでも機能すると考えています。それが見えてきたのは、いろいろな意味でこの先につながっていくと思います」(田辺テクニカルディレクター)

 結果というかたちで目撃することはできなかったが、トロロッソ・ホンダは決して小さくない新たな一歩を前に踏み出した。それが、このスペインGPだった。

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