大学選手権で唯一の国立・広島大は、なんで全国大会に出るほど強いのか

大学選手権で唯一の国立・広島大は、なんで全国大会に出るほど強いのか

 6月11日に開幕する第67回全日本大学野球選手権。出場27校のうち、唯一国公立大で出場を決めたのが広島大だ。

 広島六大学野球の春季リーグ戦では、近大工学部や柳田悠岐(ソフトバンク)、尾仲祐哉(阪神)らの出身校としても名高い広島経済大らの私立大が有力視されるなか、10勝4敗、勝ち点5を奪っての完全優勝を果たし、1983年以来35年ぶりの大学選手権出場を決めた。

 昨年は春、秋ともにエースの中田朋輝(ともき/4年)がリーグ最優秀防御率を獲得する活躍で3位に食い込んだが、カード2戦目を任せられる投手のメドが立たず、思うように勝ち点を奪えない状況が続いていた。

 そんな中、今シーズンは左腕の橘知哉(3年)が台頭し、2戦目の先発に定着。昨年秋まで先発として登板していた本格派右腕の本田昂大(こうだい/3年)が抑えに回ったことで、投手陣が整備された。

 その効果はいきなり現れた。春季リーグ第2節の広島国際学院大戦でのこと。初戦でエースの中田が先発するも0−5で敗れ、迎えた第2戦。先発した橘が7回1失点の好投を見せ、最後は本田が締めて6−1で勝利。勝ち点をかけた第3戦は再び中田が先発し、7回1失点。8回から本田が登板し、2イニングをピシャリと抑え、勝ち点をものにした。

 投手陣を統括する学生コーチの藤田健太(4年)は、この戦いを「優勝へのターニングポイント」と振り返る。

「今までは、中田に頼る部分が大きくて、1戦目を中田で落とすとズルズルいってしまうパターンが多かった。そんななか、2戦目を先発として伸びてきた橘を中心に勝ち切ったことで、『オープン戦でやってきたことは、間違いじゃなかった』とチーム全体で確信することができ、優勝につながりました」

 広島工大との第4節以外は、すべて3戦までもつれるタフな戦いが続いたが、近大工学部との第5節でも、同様のパターンで勝ち点を取るなど、整備した投手陣がリーグ戦を通じて、高いパフォーマンスを発揮した。

 捕手として投手陣を牽引した主将の國政隆吾(くにまさ・りゅうご/4年)も「投手陣の成長が優勝をたぐり寄せた」と語る。

 広島大の選手たちは、指導者に手取り足取り技術を教えられたわけではない。

 就任1年目の毛利祐太監督は、仕事の都合上、基本的に週末のみの指導となる。平日の練習は、前出の投手担当の藤田、野手担当の服巻茂樹(はらまき・しげき/4年)の学生コーチ2名が中心となって進めている。そのため、選手個々の”自主性”が大きな意味を持つようになる。藤田は言う。

「僕も”学生コーチ”という肩書をいただいていますが、『こうしろ、ああしろ』と選手たちに押し付けることはしません。選手側の『こうなりたい』という目標をもとに、できるだけ長所を伸ばし、改善すべきところがあれば話し合う。なので、コーチの僕だけでなく、選手たちも投球動作や体の構造についての知識が必要になってきます」

 野球の技術書はもちろん、SNSなども活用し、知識の増強を図っていく。その繰り返しのなかで、個人個人の”コーチング”の目も養われ、選手間でのアドバイスもより具体的なものになる。リーグを代表する絶対的エースに成長した中田も、この環境で飛躍したひとりだ。

 山口県下有数の進学校・宇部高3年の夏は、県大会の3回戦敗退。全国的には無名の存在だったが、入学以降の取り組みで体重は10キロ以上増え、130キロ台中盤だったストレートの最速は148キロを計時するまでに成長した。広島大の環境について、中田は以下のように説明する。

「ブルペンや試合で投げている姿を長く見ているので、(投手同士が)お互いに感じたことはどんどん伝えるようにしています。自分も『予備動作の段階で力が入りすぎている』という意見をもらって、修正につなげることができました。投手陣全体が『野球を勉強しよう』という意識が高いので、ほかの投手からのアドバイスに耳を傾ける雰囲気ができています」

 加えて藤田は、エースの成長が投手陣全体に好影響を及ぼしたと分析する。

「投手陣のなかで一番熱心に勉強していたのが中田でした。『結果を残しているエースがあれだけやっているんだから、自分たちもやらなきゃ』という意識が、投手陣全体に芽生えたのは間違いありません」

 野手担当の服巻が続ける。

「大学生は『考えるから成長する』年代だと思っています。用意された練習をこなすだけでなく、『自分に必要なものは何か』と常に考えていく。そうすることで、成長できるんじゃないかと……」

 広島大は、広島六大学リーグ加盟校唯一の国立大。野球部専用グラウンドは生物生産学部の研究施設に隣接しており、同学部が管理する動物に影響を及ぼすとの理由でナイター設備が使えない。

 日没後は、奥にあるサッカーグラウンドから差し込むわずかな光を頼りに練習することもしばしばだ。限られた練習環境などから “打倒・私学”の反骨心に満ちているのではないか――。勝手にそう思い込んでいたが、選手たちは「私立にしかできないこともあると思いますが、逆に自分たちにしかできないこともある」と、極めて自然体だ。主将の國政は言う。

「たしかに、相手の私立大には甲子園経験者や強豪校出身の選手が多く、全体の層も厚い。ただ、1試合のなか”9イニングでの実力差”だけを考えると、そこまで差はないと思っています。相手が個々の能力を前面に押し出した野球をするなら、こっちは分析に基づいた”考える野球”で対抗する。そうすることで必要以上に怖さを感じることなく戦えていると思います」

 二塁を守る副主将の西岡大輝(4年)が、こう付け加える。

「自分たちが入学したときの4年生も力があって、私立大と互角に渡り合う姿を見てきたので『手も足も出ない』というイメージはありませんでした。各々が考えて、練習に取り組むなかで成長した部分も実感できましたし、そこに自信が持てたことも大きかったです」

 春季リーグ終了後に学生コーチ兼トレーナーに転身し、選手とは異なる形でチームを支える道を選んだ刀根隆広(とね・たかひろ/3年)は、大学選手権に臨むにあたり、「リーグ全体を盛り上げるきっかけにしたい」と力を込める。

「全国で勝利を挙げて、リーグ全体のレベルアップにつながるようにしたい。出場校唯一の国立大として注目してもらっているので、ここで結果を出せば『やるな!』と思ってもらえるはず。そうすることで、リーグ内の他大学も『負けてられない』と火がつけば、広島六大学がもっと存在感のあるリーグになると思っています」

 今大会でも着用する水色を基調としたユニフォームは、1973年に大学選手権初出場を果たしたときに使用していた”強い広大”を象徴するデザインでもある。一時期は別デザインを採用していたが、OBの強い要請があり、2013年秋のリーグ戦から”復刻”した。

 そのユニフォームに身を包み、神宮を踏みしめた初出場時の主将・野々村直通氏(島根・開星高前監督)は、後輩が成し遂げた快挙を喜び、こう激励する。

「エースを中心にしぶとく接戦を勝ち抜く”広大の野球”で優勝してくれたのが嬉しいね。全国では、どうしても色気が出てしまうものだけど、積み上げた”自分たちの野球”を貫くことが大切。『すべてを出し切ってやる!』という気持ちで強豪にぶつかってほしい」

 先輩からの激励に呼応するように、エース中田が「相手の東北福祉大は格上。食らいついてゲームをつくる」と語れば、主将の國政も「必要以上に相手を恐れることはせず、リーグ戦で磨いてきた野球で勝負する」と力を込める。

「相手にしかできないこともあれば、自分たちにしかできないこともある」

 この思いを胸に、それぞれのやるべきことに打ち込んできた広島大の選手たち。培ってきたスタイルを貫き、悲願の初勝利を狙う。

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