U−21代表も直面した「止める、蹴る」のレベルという永遠のテーマ

U−21代表も直面した「止める、蹴る」のレベルという永遠のテーマ

 U−21日本代表が挑んだトゥーロン国際大会は、イングランドの優勝で幕を閉じた。

 過去この大会にはジネディーヌ・ジダンやクリスティアーノ・ロナウドなど、後に世界的なスーパースターとなる選手がユース年代で参加しており、今大会もイングランドのエドワード・エンケティア(アーセナル)やスコットランドのオリバー・バーク(ウエスト・ブロムウィッチ・アルビオン)など、将来を嘱望されている有望選手が参加した。そんな若手の見本市とも言える大会での日本の戦いを総括したい。

 日本は初戦でトルコに逆転負け(1−2)を喫しながら、続くポルトガル戦では数的不利からの逆転劇を演じた(3−2)。しかし、グループリーグ最終節のカナダ戦を引き分け(1−1)、10年ぶりの準決勝進出は逃した。順位決定戦ではトーゴを1−0で下し、7位で大会を終えることになった。東京五輪を2年後に控え、多くの収穫と課題を持ち帰る、価値ある経験になったはずだ。

 初戦を悔やまれる形で落としながら、第2戦を絶体絶命の状況からひっくり返し、第3戦でもビハインドの状況からあと1歩のところまで盛り返した。さらに、準決勝進出をわずかなところで逃して、モチベーション的にも難しい順位決定戦を、勝利で大会を締めくくった精神的な力強さは評価されるべきだろう。

 40分ハーフで試合間隔も短く、若手選手の品評会としての意味合いが強い大会だが、どのチームも国の威信をかけて真剣に戦いに挑んでいた。そんな大会で粘り強く戦い抜いたことは必ず今後に繋がっていくに違いない。

 控えの選手が果たした役割も大きかった。第2戦のポルトガル戦では、小川航基(磐田)に代わって先発した田川享介(鳥栖)が同点ゴールを奪い、途中出場の上田綺世(あやせ/法政大)が2ゴールを奪って逆転勝利に大きく貢献した。

「(小川、田川、上田の)3人は競争の中で練習に取り組んでくれて、3人ともそれをピッチで表現してくれた。いい競争の中で3人がレベルアップしてくれたらと思っています」と、横内昭展監督代行はチーム内競争を歓迎する。

 上田の1点目をアシストした遠藤渓太(横浜FM)や2点目をアシストした三笘(みとま)薫(筑波大)も、同じくポルトガル戦で途中出場した選手だった。特に三笘は、続くカナダ戦でもゴールを奪い、トーゴ戦でもアシストするなど、強い印象を残している。こうした競争は今後のチームの成長において重要な役割を果たすことになるだろう。

 チームが狙いとする、俊敏性と技術を活かし、細かいパスを繋いで局面を突破する攻撃も一定の成果を見せた。今大会2ゴールを奪った三好康児(札幌)やトーゴ戦でその三好のゴールをアシストした三笘を中心とした、狭いエリアでボールを扱える選手による攻撃は、特にカナダ戦で相手の脅威となっていた。

 ただ、脅威にはなりながらも、あまり結果に繋がらなかったのも事実だ。今大会、日本が奪った6つのゴールのうち、引いた相手を崩したゴールは、三好→田川によるポルトガル戦の1点目と、三笘→三好によるトーゴ戦の決勝点の2ゴールのみ。残る4ゴールはショートカウンター、2つのカウンター、相手のロングボール処理ミスから生まれた。

 もちろん現代サッカーにおいてこうしたゴールが生まれやすい傾向は日本に限ったことではなく、ブラジルW杯でも流れの中から生まれたものは3割程度で、残りはカウンターとセットプレーからだった。流れの中からのゴールが少なかったこと自体は問題ではない。

 むしろ日本にとって問題だったのは、リスク管理と単調なテンポだ。足元でボールを繋ごうとするあまり、日本はしばしば不用意な形でボールを失った。今大会の日本にとって大きな失点の原因となった自陣深くでのボールロストはもちろん、それは敵陣での仕掛けの場面でも見られた。

 特に右サイドでボールを持ち、中に切り込みながらラストパスを狙う三好がボールをカットされ、奪われたボールを取り返そうと自陣深くまで追いかけるシーンは非常に印象的だった。必死に追いかけた三好は、ボールを失った選手の責任を果たしていたとも言えるが、相手を押し込んだ状態で、ボールを奪われた選手が何十メートルも相手のドリブルを追いかけなければならないというのは、チームのカウンター対策として好ましくない。

 また、ショートパスばかりを繋ごうとする日本の意識は、時に単調なリズムを生む原因となった。チーム全体として裏を狙う意識が弱く、相手にとっては予測しやすかったはずだ。だからこそ、ときおり中山雄太(柏)が繰り出す正確なロングパスは効果的だった。

 細かいパスを繋ぐ相手には、激しいプレスをかけたり、自陣ゴール前を固めたりと、対戦相手も試合中に対策を講じてくる。相手がそう出れば、今度は裏へのロングパスを用いたり、サイドから1対1で仕掛けたりと試合の最中に駆け引きが行なわれるものだ。

 日本のサッカーからは、自分たちのやりたいことをやり通そうとするばかりで、少なくともピッチ上で起きているプレーからは、相手の出方を見て穴を突こうとする意図がほとんど感じられなかった。

 一方で、ボールを保持できず守勢に回ったポルトガル戦では、唯一の攻撃手段となったカウンターが結果的に効果を発揮した。実力で上回る相手との試合では、自分たちのやりたいことはやらせてもらない。だからこそ、相手との駆け引きから穴を見出し、なんとか勝つ可能性を探ろうとする力が求められる。

「結果だけは満足していますけど、課題しかないです」と横内監督代行が言うポルトガル戦は、勝ちこそしたものの日本の課題を炙(あぶ)り出された試合になった。この試合で最も大きな違いが見られたのは、「止める、蹴る」のレベルの違いだ。

 この大会に参加したチームの中で、技術的な水準で言えば、日本は決して低い部類に入るチームではない。むしろ、細かなボールさばきに関しては、非常に高いと感じられることが多かった。しかし、相手のプレッシャーを受けても落ちないポルトガルの「止める、蹴る」と、プレッシャーがかかると途端にミスが出てしまう日本の「止める、蹴る」には大きな違いがあった。

 ポルトガルの選手は味方選手にぶつけるような速いパスを、地を這うように出す。そんなパスをすぐさま次のプレーに移れる場所にトラップする。あるいは1タッチで正確に繋いでいく。日本選手のパスはポルトガル選手のそれに比べるとスピードがなく、トラップはすぐさま次のプレーに移れる場所には止まらず、ダイレクトプレーが入るとミスが出てしまう。これは単純に強度の異なるプレー環境から生まれる違いだろう。

 ポルトガルの選手とJリーグの選手の比較について尋ねられた三好の答えは、興味深いものだった。

「タイプとしてはJリーグにいるような選手もいましたが、あそこまで1人1人が打開してくるというのは、Jリーグにはないです。助っ人外国人のような選手が大勢いるという印象で、球際の部分だったり、ルーズボールに対する速さや強さだったりというのは、助っ人外国人にはありますけど、日本人選手にはなかなかないようなものだと思います」

 Jリーグでは、各クラブに数人だけ在籍する外国人選手のみが持つプレー強度を、強豪国ではほとんどの選手が持っている。それは欧州の激しい日々の競争や強度の高いプレー環境から獲得したものだろう。Jリーグのレベルを急激に向上させるのが難しい以上、そうした高い強度の中でプレーするには欧州に渡るしかないのが現状だ。

 この大会でスカウトたちの目にとまった日本の選手は決して少なくないはずだ。その中から、この夏にでも挑戦を選ぶ選手が出てきてほしい。

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