就任5年目。ジュビロ・名波浩監督は強気に「神様にあらがっていく」

就任5年目。ジュビロ・名波浩監督は強気に「神様にあらがっていく」

◆ジュビロ磐田・名波浩監督インタビュー(2)

 ジュビロ磐田を率いて5年目を迎えている名波浩監督。今季はここまで、試合後に初めて号泣したり、選手が暴行騒ぎを起こしたり、さまざまなことがあったが、試合内容は理想に近づいており、チームづくりにおいて確かな手応えを感じているようだ。

 熱戦が繰り広げられたロシアW杯が終わると、まもなくJリーグが再開する。今季「トップ5」入りを目標に掲げる指揮官に、後半戦への意気込みを語ってもらった――。


――今季前半戦の「ターニングポイントのひとつだった」という第12節の横浜F・マリノス戦では3−1と快勝。このゲームでは、退場となったギレルメ選手の”事件”(※)ばかりが注目されてしまいましたが、試合内容は素晴らしいものでした。
※第12節(5月2日)の横浜F・マリノス戦で、DFギレルメが暴行騒ぎを起こして、計7試合の出場停止処分を受ける。その後、クラブ内での協議の結果、5月15日付けで同選手との契約を解除した。

「F・マリノス戦は、いろいろな意味で”ターニングポイント”となる試合でした。試合の中身だけに目を向ければ、特徴的なサッカーをしてくるF・マリノスに対して、我々は特化したシステムを採用したわけでもなく、相手に対応した戦い方を選択したわけでもなく、常日頃から練習してきたことをやれば、こういう試合ができるんだぞ、というプレーを選手たちがやってくれた。

 それが何かといえば、高い位置で相手を”ハメて”いくこと。相手が自分たちの守備にハマッたと思ったら、アプローチに出ていくこと。アプローチをしてボールを奪えると思ったら、さらに後ろの選手が出ていくこと。そうして、リスク管理を気にすることなく前に出ていき、ボランチの選手までもがゴール前に飛び込んでいく――まさにその形で、F・マリノス戦では得点を奪えました。ずっと選手に言ってきたことを、あの試合ではそれぞれが体現してくれた。

 あの試合で唯一悔やまれるのは、ギレルメが退場する前に、F・マリノスにPKを与えてしまったこと。あの場面は、キャンプのときから構築してきていたブラインドサイドの中の絞りを、ギレルメが怠った。また、GKのカミンスキーがそこをコーチングできていなかったため、PKを与えてしまった。

“たられば”ですけど、あの場面でギレルメがしっかり戻ってきていれば、その後、ストレスをためて退場することはなかったかもしれない。F・マリノスに対して申し訳ない”事件”を起こすこともなかったかもしれない。

 次の柏レイソル戦(第13節)も2−1で逆転勝利して、チームとしても勢いに乗れる状況ではあったけれど、その後は2連敗。やっぱり人がひとりいなくなるというのはね……。それだけ影響があるというか、他の選手たちも(普段どおりのことをやるには相当な)パワーは必要なんだな、ということをあらめて感じました」

――結局、ギレルメ選手は契約解除。指揮官としては、アダイウトン、ムサエフの長期離脱に続いて、外国籍の戦力をさらに失うことになりました。

「将棋にたとえれば、飛車、角、さらには金、銀まで奪われてしまったような状況。特にアダイウントンがいなくなったことで、FW川又堅碁にかかる負担はかなり大きくなった。ふたりのときはマークが分散していたのが、ひとりに集中してしまうわけだからね。

 これはもう、”神様”にあらがっていくしないなと思った。自分たちは”神様”に見放されているんじゃないかって思ったから(苦笑)。普通ならば、『神様、お願いします』と祈るところだけど、逆に『神様、見ていろよ』という強気のメンタルになりました。

 そうした状況で、選手たちも頼もしかった。戦力的に厳しいとは思っただろうけど、ぜんぜん顔が下がっていなかった。(中村)俊輔に『(この現状は)苦しいな』って話をしたら、『これで、違う形の攻撃が構築できるじゃないですか』って返ってきた。『左サイドの推進力はなくなりましたけど、ボールを動かして、人が出たり、入ったりしていく攻撃の形が作れますよね』って。

 精神的な切り替えは、自分よりもむしろ選手のほうが早かったかもしれない。そこには、すごい逞しさを感じました」

――その後の試合を振り返ると、まさしく人が動いて、ボールを動かし、つないで攻撃する展開が増えていったように思います。

「まさにそのとおり。(シーズン序盤と比べると)パス本数は、(1試合あたり)50〜70本は増えていると思う。守備は相変わらず安定していて、被シュート数はここまで鹿島アントラーズに次いで少ない。シュート数もリーグの上位(6位)で、ボックス内への侵入回数も増えてきている。攻守において、選手たちがゴール前でやるべきことが整理されてきた」

――なかでも、攻撃面では2列目でプレーしているMF松浦拓弥選手がかなり利いているように見えました。

「(松浦は)昨季から、その片鱗はあったんですよ。周囲は『覚醒』と表現しているけれども、こちらとしては、昨年から何かやってくれそうな予感はあった。

(活躍の要因の)ひとつは、身体のキレが増したこと。実は、松浦は昨年から全体練習のあとに、菅野淳フィジカルコーチとアジリティのトレーニングをずっとやってきていた。ラダーやコーンを使って、毎日メニューを変えながら取り組んできて、明らかに身体のキレがよくなった。

 それを、他の選手たちも感じたんでしょうね。僕らはそのトレーニングを『菅野塾』と呼んでいるんだけど、当初は(参加メンバーが)ふたりくらいだったのが、今では10人以上に増えている。これも、松浦がひとつの”成功体験”になって、他の選手たちに影響を与えた結果。まあ、その分、菅野さんが大変になっているんだけど(笑)」

――松浦選手の活躍をはじめ、今季は多くの選手が積極的な仕掛けを見せているイメージがあります。先ほど、監督も触れていたように、シュート数ではほとんどの試合で相手を上回っています。

「それだけ攻撃的なサッカーができている、ひとつの証拠だと思う。それが、ゴール数に直結しなければ意味がないところもあるけど、今いる選手たちで、自分の思い描いてきた”攻守一体型のサッカー”ができるチームに近づいてきている」

――J1に復帰して3年目、監督就任から数えれば5年目を迎えて、自分が理想とするサッカーに近づきつつある、ということですか。

「思い起こせば、就任1年目は『とにかくボールにいけ。(相手を)潰しにいけ』というところから始まった。それから段階を踏んで、ようやくコンパクトなサイズの中で、ボールを奪うエリアを自分たちで確定させて、意図して奪えるようになった。なおかつ、ボールを奪ったあとの攻撃を絵に描きながら、守備もできるようになってきた。

 先ほど触れたF・マリノス戦の(前半37分に決めた)松浦の先制点は、まさにチームとして意図した守備からボールを奪って、うまくゴールまでつながった形。レイソル戦で、山田(大記)がミドルシュートを決めたゴールもそう。ここまでの試合のなかでは、その2得点が印象的だった。(ボールを奪ったあと)後ろから飛び出してきた選手が得点に絡むシーンが、昨季よりも明らかに増えている」

――もっとも手応えを感じている部分を具体的に挙げると、どういった点ですか。

「守備における選手のスライドは、完成形に近づいてきているかな、と。ただ、横のスライドはうまくできるようになったけど、自分の中では、『縦ズレ』と表現している縦のスライドは、あともうひと息、というところ。

 横のスライドに関しては、ガンバ大阪のヤット(遠藤保仁)にも『今までで一番、縦パスを出させてもらえない』と言われたぐらい。『縦ズレ』に関しては、このリーグ中断期間中にもトライしていきたいし、コーチ陣とも指導方法を共有していきたい。

 これは、自分が監督になってあらめて感じていることだけど、コーチ陣にも具体的なものを提示して(選手たちに)指導してほしいと思っている。たとえば、何か問題が起こったときに、『そこは自分たちで工夫してやれ!』というのではなく、A案でもB案でもC案でもいいから、具体的に指示を出してもらいたい。別に、具体的に示した案によって、失敗してもいいんですよ。

 これはきっと、サッカー界に限った話ではなく、一般社会にもいえることなんじゃないかな。だいたい自分が子どものときにも、指導者から『頭を使え』『考えろ』と言われて、『何をどう考えて、何に頭を使えばいいのかわからないよ』ってよく思っていたからね。

 成功体験や失敗体験は、具体的なものであってこそ、実となり、糧となる。自分が率いているチームには、そこを徹底していきたいな、と思っています」

――ロシアW杯の開催により、リーグ戦は1カ月ほど中断。この期間をどのように使っていきたいですか。

「自分たちにとっては、かなりありがたいですよね。リーグ戦では連敗中で、ルヴァンカップもプレーオフで負けてしまったところだったので、切り替えるのにはいい時間になる。

 具体的に試みることをいえば、シーズン前のキャンプでもトライした2トップを試すかもしれない。あと、中盤の並びも変えるかもしれない。これは、自分が監督だからだと思うんですけど、スタッフたちにも、選手たちにも、常に飽きさせないというか、(現状に満足して)停滞しないように、チャレンジしていきたい。自分も監督になって5年目なので、トレーニングなども含めて(チームには)常に刺激を与えていきたいな、と思っています」

――リーグ再開に向けて、川崎フロンターレからFW大久保嘉人選手を獲得しました。さらなる戦力補強はありますか。

「ずっと言っているけど、自分は選手に対して固定観念を持たない。だから、嘉人に関しても年齢など関係なく、今のパフォーマンスを見て判断する。(大久保は)戦力になってくれると期待しています。

 あと、左サイド(の補強)は考えています。ギレルメがいなくなり、前に出ていけるウイングバックはほしいよね。外国籍の選手に限らず、日本人選手でも考えているけど、シーズン中に獲得するのはなかなか難しい」

――最後に、リーグ再開に向けて抱負と、目標である「トップ5入り」への自信のほど聞かせてください。

「(トップ5入りについては)可能性はあると思っている。全体的にギュッと(順位が)つまっているので、自分たちにとっては、願ったり叶ったり。もちろん『トップ5』を目指すのは大変な道のりだけど、再開後、うまく戦えれば、目標である数字は超えられると思う。そうはいっても、(下を見れば)尻に火がついた状態でもあるので、一瞬たりとも気を抜くことはできない。

 昨季は、中断明けの一発目の試合(2017年J1第19節vs川崎フロンターレ)で5−2と勝利して、うまく波に乗れた。その試合に向けたトレーニングが功を奏した結果だった。今季も、この中断期間にうまく気持ちを切り替えて、再開後の試合に臨みたい。いい結果をつかめる自信はあるので、あとはこれ以上、ケガ人が出ないことを祈るだけですね」

――ありがとうございました。ご健闘を祈っています。


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