佐藤琢磨、やっと今季初の表彰台。チームの作戦が足を引っ張り気味…

佐藤琢磨、やっと今季初の表彰台。チームの作戦が足を引っ張り気味…

 アメリカ大陸のほぼ真ん中、大平原にあるアイオワは農業州だ。だからレース名もアイオワ・コーン300。アイオワの名産であるコーンは、今やエタノールの原料として存在価値が高まっている。収穫時期を迎えつつある、コーンの青々とした畑が見渡す限り広がる……そんな景色のなかに1周が1マイルにも満たない、インディカーシリーズ最小のオーバルコースはある。

 オープンしたのは2006年。翌年からインディーカーのレースを開催するようになった。コースのサイズからは想像できないほどスピードが出るため、エキサイティングなレースが繰り広げられ、アイオワとその周辺に住む人々はひと目惚れ。地元で行なわれるメジャーシリーズのレースが来るのを、毎年、楽しみにしている。

 レースは暑い日中に開催されるが、ハイスピードのオープンホイールバトルを見ようと、今年も多くのファンが集まった。そして彼らの期待を裏切らない、見応え十分のレースが展開された。

 予選ではチーム・ペンスキーがまたしてもライバル勢を一歩リードするパフォーマンスを発揮し、ウィル・パワー、ジョセフ・ニューガーデンがフロントローを独占した。これで3レース連続の予選1−2だ。

 それでも、アイオワで3勝の実績を持つライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポーツ)が、シモン・パジェノー(ペンスキー)よりひとつ前の3位に。ハンター-レイのチームメイト、アレクサンダー・ロッシが予選5位につけ、ポイント・リーダーのスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)がしっかりと6位に食い込んだ。

 決勝日は朝から快晴。幸いにも例年のアイオワとは違い、今年は実に快適なレース日和となった。気温も湿度もさほど上がることなく、穏やかな風が吹きつけていた。

 スタートではポール・ウィナーのパワーがダッシュ。しかし、1回目のピットストップを迎える前にニューガーデンがトップを奪い、差をグングン広げていった。パワーが順位を下げる一方、予選11位だったジェームズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)が絶好調で、最初のスティントのほぼ半分、40周で10台抜きを実現して2位まで浮上した。

 ニューガーデンのスピードはその後も衰えず、一時は”全車を周回遅れにして勝っちゃうのでは?”というほど圧倒的だった。2回目のピットストップを前に、リードラップに残れていたのは、ヒンチクリフ、スペンサー・ピゴット(エド・カーペンター・レーシング)、佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)の3人だけになった。ピゴットは第2スティントで大幅順位アップ。琢磨もスティント後半に順位を上げた。

 琢磨とレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングは、アイオワでの事前テストを行なわなかったため、プラクティス1では出遅れた。だが琢磨は、キャリア初ポールポジションを記録したアイオワのコースを得意としており、予選に向けてセッティングの向上に成功。予選10位となった。そして、レースに向けてさらにセッティングを変更し、走り方にも注意を払うことで、長い走行でもラップダウンの落ち込みが小さい走りができていた。

 ヒンチクリフは最後のピットストップでマシンを再調整、スタート直後と同じ好感触を取り戻す。対するニューガーデンには前半のスピードがない。勢いは明らかにヒンチクリフの側にあり、ゴールまで残り50周を切ってから、ニューガーデンをパス。トップに立つと、そこからは差を大きく広げ、今シーズン初勝利を挙げた。キャリア6勝目、アイオワではこれが2勝目となる。

 ヒンチクリフといえば、今年のインディ500で予選落ちを喫したドライバーだ。だがチームとの信頼関係は変わらず、結束力を高め、2カ月後に優勝という見事な立ち直りを見せた。

「予選はマシンを滑らせてしまって順位がよくなかったが、マシン自体の仕上がりがいいことは確認できていて、最初のスティントではすばらしい速さを見せることができた。ただ、1回目のピットストップでの調整が大き過ぎて遅くなり、次のピットではセッティングを戻しすぎて、またもやスピードが乗り切らなかった。最後のピットでの調整で、マシンはぶっちぎりのスピードを手に入れた」(ヒンチクリフ)
 
 レースはゴールまで残り6周で、エド・カーペンター(エド・カーペンター・レーシング)がスピン。琢磨と接触して破片が飛び散ったために、フルコースコーションとなった。

 残り1周でリスタートが切られるとみたニューガーデンとロバート・ウィッケンズ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)の陣営は、ドライバーをピットに呼び入れた。だが結局レースは再開されず、イエローフラッグとチェッカーフラッグが同時に振られることになった。

 これによりニューガーデンらは順位を下げ、おかげで4番手だったピゴットは2位、5番手を走行していた琢磨は3位でのゴールとなった。

 ピゴットは2016年ミッド・オハイオにおける7位を超える、キャリア初めての表彰台。「今日はトラフィックをうまくクリアできたし、スティントを重ねるごとに強くなるレースを戦えた。多くの接近戦を楽しむここともできた」と、喜んだ。

 琢磨の3位も棚ぼたともいえるが、レースを通してのスピードを考えれば2位でフィニッシュしていた可能性は高く、優勝さえ狙える走りになっていた。

 最後のピットストップを、ピゴットより4周、ヒンチクリフより3周、ニューガーデンとウィッケンズより2周遅くした作戦は失敗で、摩耗したタイヤでの周回数が増えたことでタイムロスしていた。ピット作業を終えてコースに戻ると、トップから5番手に後退し、4番手のウィッケンズに3秒も離されていた。その後、琢磨の前のポジションはピゴットに代わり、その背後へとグングン迫っていたところでカーペンターのスピンが起きたというわけだ。

「正直言って、表彰台までは期待していなかったですよね。レースに参加する以上、常に勝利は意識するし、トップは目指すけれども、現実的に考えてジュニア・フォーミュラでもあるまいし、これだけのトップ・フォーミュラではあまり奇跡というものは起こらない。

 ただ、昨日の夜、実は僕たちは結構いろいろとやった。何度もガレージに出ていって、いろいろな車を見て、ロールセンター(車がロールする際の中心)など、取れる情報は全部取って、自分たちと速いクルマのセッティングを見比べたんです。そうして施したセッティング変更が正しかったから、スティント後半に速いマシンにできた。多くのドライバーたちとサイドバイサイドで戦い、タイヤが減った状況でたくさんのマシンをパスできました」(琢磨)

 ロールセンターを変えるのは大きな冒険だが、そこは経験豊富なドライバーとエンジニアのコンビネーション。バランスのいいマシンに仕上がるという自信を持って、セッティング変更に踏み切った。惜しかったのは、チームの作戦が今回も足を引っ張り気味だったことだ。

「最後のピットストップはタイミングが少し遅すぎ、トラフィックに引っかかったこともあって、ピット前にトップに立ったのに、レースに戻ると5番手まで下がっていました。長く走っている間にイエローが出れば、ライバルたちをラップダウンにできますが、そうはならず、逆にせっかく抜いた相手に先行されてしまいました。しかし、周回数がかなり残っていたので上位との差を縮めていった。

 そうしたら、すぐ目の前を走っていたエド・カーペンターがスピンし、軽く接触。幸いマシンにダメージはほとんどなかったので、リスタートが切られたらピゴットにアタックするつもりでしたが、レースは再開されないままゴールに。ピットに入ったマシンがあって、ふたつ順位アップの3位でゴールできたのはうれしい結果ですね。

 エンジニアのエディ・ジョーンズたちがすばらしいマシンを作ってくれた。やっとチームと理解し合い、いい戦いができるようになってきました」(琢磨)

 作戦面のミスは、ライバルたちの判断ミスが帳消しにしてくれた。少し運も向いてきたということか。この調子なら、シーズン後半戦は快進撃が期待できそうだ。


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