プロ生活23年の明神智和「引退を考えると正直、怖い。というか、不安」

プロ生活23年の明神智和「引退を考えると正直、怖い。というか、不安」

ベテランJリーガーの決断
〜彼らはなぜ「現役」にこだわるのか
◆第4回:明神智和(AC長野パルセイロ)/後編

 AC長野パルセイロへの移籍に際し、「現役を『やりたい』と思う自分の気持ち。『やれる』という自信。そして、僕を獲得してくれるチームがあるか」という3つの要素を自身に投げかけ、決断に踏み切ったという明神智和。その視線の先に見据えるのは、現時点での最大の目標だと言い切る”J2昇格”だ。

 そのために、自分にできること、やるべきことは何なのかを問いかけながら、40歳を迎えたベテランは戦いを続けている。いつの日か必ず訪れる”引退”の瞬間まで、自分らしい姿でプロサッカー選手を全うするためにも――。

 ただし、その”J2昇格”のために「やるべきことが多い」と感じているのも、正直なところだ。当然ながら、個人的な部分で、クラブハウス内のシャワールームに湯船がないため、自宅で交代浴を行なうとか、トレーナーにメニューを作ってもらってプラスアルファで筋トレに励むなど、パフォーマンス向上に必要だと思うことは続けている。

 だが、J2昇格を目指すうえで大事なのは、「自分を含めた個の力を、チーム力にどうつなげていくか」。そのためにも、選手個々が”サッカー”に対して、あるいはプロサッカー選手として、マインドから変える必要があると明神は言う。

「パルセイロはJ3クラブの中でも数少ない、全選手がプロ契約をしているチームだと考えても、今の順位(14位。※取材時点)に納得していいはずがない。

 なのに、正直(多くの選手が)サッカーでお金をもらっていることへの責任感、自覚がまだまだ薄いからか、上を目指せる環境にあるという状況に対して、どこか本気になり切れていない。ここで活躍すれば、1選手としてもっと上のステージにいける可能性もあるし、そうなればもっと痺(しび)れる瞬間を味わえるのに、そこを現実的に描けないからか、どこかJ3でプレーしていることに納得してしまっているようにも見える。

 はっきりいって、このステージで活躍できなければ、プロとしての選手生命は終わってしまうのに、そこへの危機感もあまり感じられないですしね。そこを、僕も含めた全選手が見直さなければ、現状からは抜け出せないし、目標にも手が届かない。だからこそ、チーム全体がもっと”昇格”という目標に対する本気の覚悟をもって、向き合わなければいけないと感じています」

 それは、自分自身にも言い聞かせてきた言葉でもある。

 先に記したように、彼自身が”3つの要素”のもと、現役選手を続けているのは事実だが、目標に描くのは単に、現役を続けることだけではない。その先にある『チームの勝利』だ。だからこそ、それを自らの手でつかみ取り、J2昇格を実現するために全力を注ぎたいと語気を強める。

「当たり前のことですけど、自分が活躍してチームが勝つための力になるというのが、僕にとってのサッカー選手としての基本です。だから、自分を磨こうと思うし、試合に出るための努力をしようとも思う。

 いや……努力というのも違うかな。応援してくれる人がいて、僕たちの試合を、自分の時間とお金を費やして観に来てくれる人がいることに対して、その数に関係なく、最高のプレーをピッチで見せるための準備をするのは当たり前のことですから。

 それに……ここに来て気づいたことですが、長野って規模こそ小さいけれど、もともとスポーツへの関心が高い地域だと思うんです。大都市に比べて日常の娯楽が少ないのも理由だと思いますが、年配の方までスポーツが大好きだし、実際に近所のおじいちゃん、おばあちゃんも、サッカーに対してすごく興味を持っている。日常生活にサッカーやスポーツが溶け込んでいて、『パルセイロを応援して元気をもらっているんだ』と声を掛けてくださる人もたくさんいますしね。だからこそ、その熱をもっと大きくしたい。

 そのためには……同じ長野県の松本山雅FCがステップアップしていくことで人気を高めていったように、僕らもまずはJ2に昇格しなければいけない。そのチャレンジに自分の最大限の力を注ぎたいと思っています」

 かつて、J1でプレーしていたときより近くにファンを感じることが増えたからか、ともすればこれまで以上の熱を込めて、その思いを言葉に変える。

 だが、一方で年齢の数は着実に増え、今年はいよいよ40歳という大台に乗った。すなわち、現役選手としてのキャリアは確実に晩年に差しかかっていることになるが、はたしてその熱はこの先、どこに向かおうとしているのか。彼の中で、いつの日か訪れる”引退”を考えることはあるのだろうか。

「年齢で区切りをつけることはないけど、”引退”について考えていないことはないです。今はまだシーズン中で具体的なことは描けないけど、年末になって、もしもクラブに『いらない』と判断されたら、おそらく決断することになるとも思います。

 今、自分がプレーしているのはプロリーグの中で一番下のカテゴリーのパルセイロで、このチームに『いらない』と言われたら、イコール、『やれる』ということではないと思うから。そのときは、自分が『やれる』って思うことと、周りの『やれる』の評価が違うという現実を、受け入れます」

 迷いなく、きっぱりと言い切る彼に、続けて尋ねる。これだけ長いプロサッカー人生を歩んできたなかで、その決断を下すことに怖さはないのか。

「正直、怖いです。次の人生が少しでも見えていたら違うと思うけど、僕にはそういうものが何もないだけに、怖い。怖いっていうか、不安かな。今年の1月には子供も生まれて、余計にそう思います。自分だけならどうとでも生きていけるけど、家族を食べさせていかなきゃいけないと思えば、なおさら不安になる。

 でも、かといって性格的に現役をしながら、次の人生の準備をすることはできないというか。漠然とながらも、指導者には興味があって、B級ライセンスまでは取得したけど、そういう講習に行ったら行ったで、違う目線でサッカーを見るようにもなり、『頭が固くなって、プレーに影響していないかな』と不安になりますしね(笑)。

 って考えても、やっぱり現役選手である間は、”J2昇格”という目標に向かって、精一杯現役をやり切るのが自分らしいし、それ以降のことは、そのときになって考えればいいのかな、と。これまでも、ひとつのことを全力でやり切った先には必ず次の人生が拓けてきたように、引退を決めたときには、また何か見えてくるものがあるはずだから」

 大事なのは、いつかは訪れるそのときに、自分が後悔なく決断をするために、日々の練習に、目の前の目標に、全力で挑むこと。その繰り返しのなかで築いてきた23年というキャリアを信じればこそ、明神は”今”に全力を注いで走り続けている。


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