ネジを締め直して「原点回帰」。広島・城福サッカーの片鱗が見えた

ネジを締め直して「原点回帰」。広島・城福サッカーの片鱗が見えた

 今季のJ1で首位を走るチームらしい、実に見事な勝利だった。

 8月1日に行なわれたJ1第19節でサンフレッチェ広島は横浜F・マリノスに4−1で快勝した。「負けた次の試合が大事」とは、サッカーでよく用いられるフレーズだが、第18節で浦和レッズに1−4で敗れていた広島にとっては、まさにそうした状況だった。ましてや第17節でも名古屋グランパスに0−0で引き分けていたのだから、なおさらだった。

 試合後の記者会見に現れた城福浩監督も、そこを強調した。

「前節は本当に我々らしくないゲームで試合を失ってしまった。今年戦うステージのことを考えたら、絶対に連敗はできない。連敗するチームになってはいけない、という強い気持ちで試合に入りました」

 横浜FM戦まで前節から中3日と時間の限られるなか、指揮官はチームとしての戦い方を明確に整理。訴えたのは、原点回帰だった。城福監督が続ける。

「これまで我々がやってきたことが蔑(ないがし)ろになるようなことは避けたかったですし、実直に取り組んできたことをやれれば勝ち点3が取れるんだということを、もう一度(選手たちに)確信させたかった。直近でいえば、リーグ戦は1分1敗。危機感もありましたし、このままでは終わらないという思いもありました」

 首位に立つ広島が、ここまで積み重ねてきたもの――。その根幹にあるのが、リーグ最少失点を誇る守備だった。

 だから、攻撃的なサッカーを指向する横浜FMに対しても、まずは我慢強い守備で対抗した。前半は横浜FMにボールを支配される時間帯が多かったものの、前線からの守備と、ダブルボランチを担う青山敏弘と稲垣祥がしっかりと中央を締めることで突破を許さなかった。両サイドバックが高い位置までせり出してくる横浜FMの攻撃に対しても、柏好文と柴﨑晃誠が素早く帰陣して対応。広島のサイドバックがマークに飛び出して裏にできるスペースも、ボランチがカバーすることで決定機を作らせなかった。

 攻撃においては、高い位置でボールを奪ってのショートカウンターと、自陣から展開するロングカウンターで、逆に好機を演出。前半22分、中央で稲垣が奪ったボールを青山が素早くDFの裏へと送り、走り込んだパトリックがGKをかわしてポスト直撃のシュートを見舞ったシーンがまさに前者。1分後の前半23分、千葉和彦のロングフィードから左サイドの柏がカットインして右足でシュートした場面が後者だった。

 その広島は、前半終了間際に相手のハンドでPKを獲得。青山のシュートはGK飯倉大樹がセーブするも、蹴る前に飛び出したとしてやり直しに。キッカーを変わったパトリックが今度は左隅に決めて先制した。さらに後半開始1分、右コーナーキックからパトリックが2点目を挙げてリードを広げると、もう広島ペースだった。

 もともと堅守速攻の広島は、DFラインを高く設定し、全体的に前がかりとなる横浜FMに対して相性がいい。後半4分には、右サイドの柏がゴール前へと斜めに走り込む柴崎晃誠にパスを送ると、その落としから渡大生がJ1初得点で試合を決めた。後半26分にはふたたびコーナーキックの流れから千葉の2試合連続ゴールが飛び出し、終わってみれば4−1で快勝した。

 首位を走る広島の強さは、今季のリーグ戦で一度も連敗していないところにある。青山とともに広範囲をカバーする稲垣は、前節の敗戦で城福監督から「かなりネジを締め直されました」と笑う。

「リーグ前半戦で自分たちが培(つちか)ってきたものが少し失われつつあったなかで、そうしたものを取り戻し、本来あるべき姿に立ち返る意味でも今日の試合は重要でした。中3日と短い準備期間でしたけど、もう1回、チームのあるべき姿を取り戻してくれた城福監督は、やっぱり、さすがだなと。

 かなりシビアに突き詰めてきましたし、要求も高かったですからね。基本的にそれは守備のところ。まずは手堅く試合に入るなかで、中央の締め方であったり、プレッシャーのかけどころ。戻るにしても、どこに戻るのか。危機感も含めて、細かいところですけど、そのひとつひとつを今日は取り戻せたと思う」

 快勝しながらも、多くの選手が最後の1失点を悔やんだように、粘り強い守備ができれば、崩れない、負けない、という自負がある。

 ただ、守備ばかりが賞賛されがちだが、攻撃も着実に進化している。そのひとつがセットプレーだ。パトリックが「チームメイトに相手選手をブロックしてもらったことでうまくいった」と、コーナーキックから決めた2点目を解説すれば、柏もセットプレーに自信をのぞかせた。

「セットプレーにはかなりの時間を費やしてトレーニングしている。相手のスキを突いたショートコーナーから(先制点となった)PKも獲得しましたし、2点目と4点目もセットプレーからですからね。練習で取り組んできたことが表れた結果だと思います」

 それとともに見られたのが、鋭いカウンターである。ふたたび柏が続ける。

「カウンターの精度も徐々に上がってきている。仕留めるところ、出ていくところ、スプリントを仕掛けるところ……迷いなくパスが出てくると思って味方を信じて走れている。ここがチャンスだという意図をみんなで共有できているから圧力をかけて走れているし、人数をかけることもできていると思います」

 前半はもちろんのこと、リードを奪った後半も再三、効果的なカウンターを仕掛けていた。突進力のあるパトリックが複数のDFを引きつけ、併走する柏や途中出場した川辺駿が決定機を迎えた。それだけではない。後半には自分たちでボールを保持してパスをつなぐと、相手陣内に攻め入るなど、城福監督が本来目指そうとしているサッカーの片鱗が見えつつある。

 そうした進化も、バージョンアップも、やはり、やるべきことが明確になっているからこそだ。ベースを見失わなければ、広島が大きく崩れることはない。ふたたび稲垣の言葉を借りる。

「リードしたなかで、自分たちで時間を作っていくこと、カウンターの精度をさらに上げること、最後に失点してしまったところも見逃してはいけないと思う。そうしたところは、まだまだ課題。でも、一気に全部はできないですからね。

 1試合、2試合で劇的に変わるとは自分たちも思っていないですし、だからこそ積み上げていくことが重要だと思います。しかも結果を出しながら、というのが大事。結果を出さなければ何も得られないということを、僕たちは昨季、学んでいますからね」

 首位を快走する広島だが、思い起こせば、昨季は残留争いを戦った。結果を残すことがいかに大事かをあらためて思い知らされたのだ。城福監督が去り際に言った。

「今日の勝利も、次の試合で勝たなければ意味がないですからね」

 それもまたサッカーでよく言われるフレーズだが、だから広島は目の前の試合に集中する。そして積み重ねた先がタイトルへとつながっている。


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