福田正博が森保監督へエール「ドーハの悲劇の悔しさを晴らしてほしい」

福田正博が森保監督へエール「ドーハの悲劇の悔しさを晴らしてほしい」

◆福田正博 フォーメーション進化論

「森保一、日本代表監督に決定」と聞いたときは、正直、驚きがあった。

 日本人指導者の中から監督を選ぶとなれば、彼ほどの適任者はいない。だが、五輪代表とA代表の兼任となれば、仕事量が膨大になりすぎるため、日本サッカー協会は他の選択をすると考えていたからだ。

 過去には、2002年W杯日韓大会を率いたフィリップ・トルシエ監督が五輪代表とA代表を兼務した。ただ、当時と現在では、日本サッカーを取り巻く状況は、まるで違う。

 トルシエ時代は海外でプレーする日本代表選手は少なく、ほとんどが国内組だったが、現在は日本代表のほとんどは海外組。東京五輪世代でさえ、海外でプレーする選手が増えている。協会とJリーグの間で調整すれば、強化合宿の日程を捻出できた時代ではなくなっている。

 この状況下では、両代表を兼務するハードルは高いと言わざるを得ない。それだけに、森保五輪代表監督が日本代表監督に就任することはないだろうと思っていた。

 もちろん、五輪代表を指揮する森保監督がA代表を率いるメリットがあるのは間違いない。

 日本代表を牽引してきた長谷部誠、川島永嗣、本田圭佑、長友佑都、岡崎慎司といった選手たちは、代表引退を表明したり、次のW杯で主軸となることが難しい年齢になっている。今後の最大のテーマが”世代交代”であることは避けようがなく、それをスムーズに実行して、五輪代表の森保監督が日本代表も兼務するメリットを最大化するために、サッカー協会の万全のサポートに期待をしたい。

 4年後のW杯カタール大会での”ベスト8”を達成するには、東京五輪世代が2020年以降にどれだけ台頭できるかがポイントであり、また、それだけの逸材が揃っている。堂安律、久保建英、三好康児、板倉滉、菅原由勢(ゆきなり)など、すでに海外やJリーグで結果を残している選手が、リオ五輪世代を突き上げてほしい。

 一方で、リオ五輪世代は、ロシアW杯で出番がなかったことに忸怩たる思いがあるはずだ。そうした競争意識が、間違いなく日本代表をレベルアップさせていく。

 ハリルホジッチ体制では、日本代表と五輪代表は異なるサッカーを志向していた。日本代表は外国人監督が”結果”を求めるカウンター主体のスタイルを追求し、下の育成世代では、ボールを保持することを意識したスタイルだった。やっているサッカーが変われば、評価も変わるのがサッカーの難しいところで、これでは、下の世代で評価されたプレーが、日本代表ではできなくなることもあるだろう。

 しかし、森保監督が五輪代表と日本代表で一貫したサッカーを志向することで、そうした問題は起こりにくくなり、五輪と日本代表の垣根を取り払って、新戦力を試しやすいというメリットもある。

 さらに、日本代表へステップアップする道筋がスムーズになることは、選手によい影響がある。五輪代表と日本代表でのプレーの評価基準が同じなら、選手はモチベーションを保ちやすい。4年間かけて同じサッカーを継続することで、日本代表のスタイルを理解する選手層が厚くなっていくだろう。

 W杯ロシア大会でも示したように、日本サッカーのストロングポイントは組織力、技術力、アジリティ(俊敏性)の高さだ。そこを磨いてフィジカルエリートの外国人との差を埋めなければならない。個を高める努力を放棄してはいけないが、そこはすぐに成果が出にくい。

 そのため、それよりもコンビネーションを高めていくことが重要であり、コンビネーションは短期間で育めるものではないだけに、五輪代表と日本代表が同じ方向性を目指すことで高めていける。

 多くの選手が森保監督の戦術とスタイルを理解し、競争に身を置く。ハリルホジッチ監督は国内組をほとんど起用しなかったが、森保監督はJリーグをしっかりと視察して、伸びてきている選手がいれば抜擢するだろうし、Jから代表への道筋が示されることで、国内のサッカー熱に一体感が生まれるはずだ。

 森保監督は、まわりの人を信用して仕事を任せることもでき、選手への気配りも抜群にうまい。言葉が通じ、文化もわかり、メンタリティも理解できるという日本人監督のよさを最大限に生かしながら、チームづくりができるはずだ。

 サンフレッチェ広島を率いて3度リーグ優勝を達成したときに、森保監督が採用していた布陣は3バックだった。それは、前任のミハイロ・ペトロビッチ監督(現・札幌)の3−4−2−1を踏襲しただけと言う人もいるが、たしかに攻撃は受け継いだ部分もあるものの、守備は独自に構築したものだった。

 このときの3バックの特徴は、サイドの選手の運動量は大きくなるが攻守に人数をかけられること。また、選手間の立ち位置もコンビネーションを築きやすい布陣だ。ハードワークをすれば、数的優位を生み出しやすく、ピッチの幅も有効に使える。こうした利点が、日本人の持つ特性にマッチしやすいといえる。

 とはいえ、森保監督自身は3バック、4バックにほとんどこだわりはないのではないか。システムありきではなく、彼が重視しているのは、「日本人のよさが生きること」だろう。

 今後、森保監督は8月14日からU-21で臨む『アジア大会』を経て、9月7日にチリ戦(札幌ドーム)、11日のコスタリカ戦(パナソニックスタジアム吹田)で、日本代表チームの指揮をする。

 W杯後最初の日本代表の試合ということで、W杯出場メンバーを主体に選考することも考えられるが、海外組は新シーズンが始まったばかりで、ポジション争いに身を置いている選手であれば、招集されない可能性もある。W杯メンバーと遜色ないレベルにある中島翔哉や久保裕也といった選手たちの招集や、4バックで臨むかどうかも注目だ。

 そうしたなか、私が注目しているのが大島僚太だ。Jリーグの川崎で彼が見せるプレーのクオリティは別格だ。体の向きのつくり方、視野の確保の仕方など、イニエスタにもっとも近いレベルにあるといえる。その大島が、これからの日本代表の中心選手になってもらわなくては困るだけに、森保体制でどういうプレーを見せてくれるのか期待している。

 今後の試金石になるのが、来年1月のアジアカップだ。W杯ロシア大会では、アジア勢で唯一決勝トーナメントに進出した日本がどんな結果を残すのか。世代交代を進めていくことを考えると、目先の勝った負けたではなく、新たなチャレンジをしていることを理解して、サポートすることも重要だろう。

 ほかにも、今回のW杯から導入されたVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)により、これからはクリーンな戦い方をするチームが恩恵を受けることが予想できる。この点でも、広島時代にフェアプレー賞をもらう戦い方でチームを優勝に導いた森保監督の手腕が生きてくるはずだ。

 なにより、4年後のW杯の舞台であるカタールは、我々世代にとっては94年W杯出場を最後の最後に逃した”ドーハの悲劇”を経験した因縁の地。一緒に戦った仲間として、個人的な想いを勝手に森保監督に乗せてしまうが、あの悔しさをカタールの舞台で晴らしてくれることを期待せずにはいられない。

著者:津金壱郎●構成 text by Tsugane Ichiro photo by JMPA


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