東京五輪世代の前田大然は、森保監督の特殊戦術の理解に自信あり

東京五輪世代の前田大然は、森保監督の特殊戦術の理解に自信あり

東京五輪を目指す若きフットボーラーたち(1)
◆松本山雅FC・前田大然@前編

 そのスピード、規格外――。ピッチを駆ける前田大然を見れば、その速さに誰もが度肝を抜かれるはずだ。一気に加速して相手DFを置き去りにして、瞬く間にゴールを陥れる。

 2016年に山梨学院高から松本山雅FCに加入し、プロ2年目の昨シーズン、期限付き移籍した水戸ホーリーホックで13ゴールと大ブレイク。その活躍はJ1クラブも獲得に乗り出すほどだった。迎えた2018年、念願の年代別代表デビューを果たし、8月にインドネシアで開催される第18回アジア大会のメンバーにも選ばれた。J2で首位を走る松本の「スピアヘッド」の今に迫る――。

―― 東京五輪世代のインタビューシリーズ、今回が第1回です。

前田大然(以下:前田) 第1回ですか。ありがとうございます。光栄ですね(笑)。

―― いよいよアジア大会が開幕しますが、まずは振り返りから。今年1月のU−23アジア選手権・中国大会のメンバーに選ばれたのに、直前合宿中に負傷してチャンスを逃してしまいましたね。あれは、年末の全日本大学選抜との練習試合で痛めたんですか?

前田 いや、もともと昨シーズンの最後のほうに腰を痛めていたんですよ。代表に行きたかったから、なんとか間に合わせたんですけど、試合をしたらやっぱり痛くなってきて。山雅のほうからも「新シーズンの前だから、無理をしないで戻ってこい」って言われたので。

―― 年代別代表に選ばれたことがなかった前田選手にとって、初めて日の丸を背負って国際大会に出場するチャンスでした。それを逃したわけだから、相当ショックだったのでは?

前田 悔しかったですねえ。でも、大阪で1週間、キャンプを過ごしただけでもいろいろ経験できたので、次がある、と思って頑張って切り替えました。

―― その想いが通じたのか、続く3月のパラグアイ遠征のメンバーにも選出。初先発となった第2戦のベネズエラ戦で、ウップンを晴らすかのように2ゴールを奪いました。ゴールを決める自信はあった?

前田 自信はね、常に持っているんです。ただ、水戸時代の最後からゴールを獲れてなかったんで、今年の初ゴールがあの舞台で生まれて、うれしかったですね。

―― 前田選手といえば、爆発的なスピードが武器ですが、ベネズエラ戦での得点はそれを生かしたわけではなかった。1点目は縦パスを受けて右サイドにはたき、ゴール前に入っていってダイビングヘッド。2点目はスルーパスを引き出し、PKを獲得して自ら決めた。いずれもストライカーらしい、質の高い動きで奪ったゴールでした。スピードだけじゃないぞ、と。

前田 そうですね。スピードはもちろん武器ですけど、動きの質や細かい技術は今、特訓中なので(笑)。それに、今はFWも守備をしないと試合に出られない時代じゃないですか。献身的なプレーは常に心がけているので、そこをもっと見てほしいし、自分は動き回って流れを作っていくタイプなので、あのゴールは自分の形やったかな、と思います。

―― 狭いエリアでのプレーが本当にうまくなった、という印象を受けますが、動きの質やプレーの正確さはどういうふうに磨いているんですか?

前田 ひとつひとつのプレーを丁寧にやる、っていう意識を持つだけで、だいぶ変わりましたね。プロ1年目のころは、ガムシャラに、勢いだけでやっていて……まあ、今もそうなんですけど(苦笑)、1年目はそれしかなくて。でも、2年目、3年目と、ガムシャラにやるなかでも、ひとつひとつのプレーにこだわっていたら段々よくなってきて。それで水戸時代にゴールもたくさん奪えたので、自信がついてきた、という感じですね。

―― ただ一方で、森保一監督が代表チームで採用する3−4−2−1の1トップは、自由に動き回ったり、サイドに流れたりするわけにもいかないのでは?

前田 そうなんですよ。森保さんからは「1トップはサイドに流れるな」と言われていて。でも、自分の良さはどんどんサイドに流れたほうが出る。だからそこは、無視したわけじゃないですけど、どういう動きをすればゴールを奪えるかを考えて臨機応変にやりました。

―― 代表チームの3−4−2−1は、攻撃のときに5トップ気味になるなどメカニズムが少し特殊ですが、その理解は進んでいますか?

前田 山雅のほうが難しいので、それと比べたら問題ないです(笑)。山雅では1トップじゃなくてシャドーをやっていて、ソリさん(反町康治監督)から求められるものはたくさんあるので、ここでやれれば、どこに行ってもやれるんじゃないかなと。

―― 森保監督には、どんな印象を持ちました?

前田 選手とコミュニケーションをたくさん取る人だなって思いました。僕はこれまで、そういう監督は少なかったんですよ。ソリさんもどちらかというと、選手と一線を引くタイプの監督だし。でも、森保さんはひとりひとり個別に呼んで、フレンドリーにいろいろな話をしてくれて、こういうタイプの監督もいるんだなって。

―― どんな話をしたんですか?

前田 「もっともっとゴールに向かうプレーを増やしていこう」とか、「ミスしてもいいから自分の良さを出していけ」って。ミスしてもいいから自分の良さを、というのは、他のみんなも言われたみたいですね。選手のことをすごくよく見ている監督だと思います。

―― アウェーで南米のチームと対戦するなんてめったにないことですが、どんなふうに感じました?

前田 やっぱり、足が速かったですね。

―― そう? 負けてないように見えましたが。

前田 まあ、負けていたとしても、僕は「負けてない」と言うんですけどね(笑)。でも、ちょっと認めざるを得ないくらい速かったですね。出足が速かったり、競走してもついてこられる、という感じだったのですごいなって。技術面では日本のほうが上なのに、その差を彼らは身体能力で補ってしまう。それに勝負強いというか、大事なところで点を獲る力が南米のチームにはあって、日本にはそういう力がなかったですね。

―― 通用した部分は?

前田 前線からの守備でボールを奪えましたし、向こうのラインもけっこうバラバラやったんで、簡単に裏を取ることができました。南米の選手は身体能力でやってる感じで、隙があるんですよね。そこを突けたのは自信になりました。

―― 1週間ほどパラグアイにいて、仲良くなった選手はいますか?

前田 藤谷(壮/ヴィッセル神戸)と森島(司/サンフレッチェ広島)とずっと一緒にいましたね。ふたりとも関西の人間じゃないですか。

―― 前田選手ももともと大阪出身ですもんね。

前田 そうなんです。代表は初めてといっても、初瀬(亮/ガンバ大阪)とかは小学生のころから知ってるし、全員が初対面っていうわけじゃないんで、大丈夫でしたね。

―― 東京五輪に向けたサバイバルが始まったわけですが、チームメイトの多くはU−20ワールドカップに出場するなど、国際経験の豊富な選手ばかりです。これまで代表経験がなかったことは、自分のなかでコンプレックスだったりしますか?

前田 いや、別にそれはないですね。プロ1年目なんてまったく活躍してなかったので、選ばれへんのは当然やと。でも、結果を残せば選ばれるっていうことはわかっていたから、結果を残すだけやと。

―― プロ2年目の昨シーズンは期限付き移籍で水戸に移って13ゴールと、まさにその結果を残して、今シーズンふたたび松本でプレーしているわけですが、あらためてどんな想い、どんな覚悟で復帰を決めたんですか?

前田 1年目はまったく活躍できなかったので、山雅のサポーターに自分の良さを見てほしかった、成長した姿を見せたかった、というのが一番ですね。

―― 期するものがあって戻ってきたにもかかわらず、シーズン序盤はなかなか試合に出られませんでした。心中穏やかじゃなかったのでは?

前田 いつかチャンスが来るだろう、と思っていたので、そのチャンスを待ってました。パラグアイ遠征から帰ってきて、そのチャンスが来て、そこからずっと出られるようになって、チームも勝てるようになったので、すごく自信になりましたね。

―― 本当に、そんなに冷静にチャンスを待つことができたんですか?

前田 うーん(苦笑)。でも、代表があったので、それをきっかけにっていう想いはありましたね。だから、ベネズエラ戦でのゴールは今思えば、本当に貴重なゴールでした。あれをきっかけに波に乗ることができたので。

―― 実際、パラグアイから帰国した直後の大宮アルディージャ戦(第7節@4月1日)で今シーズン初先発。来たな、と?

前田 来たな、と思いましたけど、正直、身体はしんどかったです(苦笑)。でも、やっとチャンスをもらえたので、ここで何とかしよう、と思っていました。

―― この試合以降、スタメン起用が増えてきましたが、今季初ゴールは第12節の水戸戦まで待たなければなりませんでした。

前田 いやあ、長かったです。入りそうな場面はたくさんあったのに、全然入らなかったから、神様、見てくれてへんのかな、と思ってました(笑)。水戸戦のポストに当たったやつもそう。だから、今日もまた入らへんのかと思っていた矢先にゴールが生まれた。あれで吹っ切れましたね。

―― ゴールから遠ざかっている間は、やっぱりプレッシャーを感じますか? それとも、そういうのはあまり気にしないタイプですか?

前田 「気にしてない、気にしてない」って言ってましたけど、内心、気にしてました(笑)。でも、水戸戦できっかけを作ろうとも思ってました。代表のときみたいな感じで。もちろん、その前に決められたら、それに越したことはないんですけど、自分にとって水戸戦は特別な試合なので、そこで決めたいなって。あのゴールで肩の荷が降りたというか、楽になったというか、それ以降の試合は、リラックスして普通にやれている感じがしますね。

(つづく)

著者:飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi


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