崖っぷちガンバ。「最大限の力を注ぐ」ツネ様の進撃はこれから始まる

崖っぷちガンバ。「最大限の力を注ぐ」ツネ様の進撃はこれから始まる

 ガンバ大阪がレヴィー・クルピ監督とマテルヘッドコーチの解任を発表したのは、7月23日のこと。これを受けて、”宮本ガンバ”は、実に慌ただしく誕生した。

 その証拠に、U−23チームを率いていた宮本恒靖監督は、J3リーグ中断によるオフを利用して、旅行に出かける準備をしていたと聞く。幸い、空港に出向く前にクラブから監督就任のオファーを受けたため、急遽、旅行は取りやめたが、その事実からも急な要請だったのは明らかだ。

 それに対して、氏の心はといえば、すぐに突き動かされはしたものの、”特別なチーム”からのオファーだからこそ、決断には時間をかけた。

「オファーをいただいた瞬間から前向きに考えていましたが、引き受ける限りは、クラブとしての考え方や、クラブが僕に期待すること、求めていることを知り、それに対して自分が何をできるのかを考える必要があったので、そこは強化の方としっかりと話をしたうえで、最終的な決断に至りました」

 その決断による明らかな”変化”は、初陣となった7月28日(第18節)の鹿島アントラーズ戦(1−1)から見られた。

 同25日の監督就任から、わずか3日。同氏の「集中して練習に取り組みたい」という意向で練習が公開されることこそなかったが、鹿島戦では曖昧だった守備に規律がもたらされ、チームは目を見張る連動を見せる。ここ数試合、選手がピッチ上で露呈していた不安げな姿はそこにはなかった。

「第17節までの戦いを振り返ったときに、明らかに失点が多く、そこから全体のバランスが崩れていると感じていたので、鹿島戦までの3日間では、まず”守備”の立て直しに取り組みました。そうした働きかけに対して、選手の理解も早く、それをピッチでしっかり体現するんだという強い決意で臨んでくれました」

 守備と同時に変化が見られたのが、攻撃だ。クルピ前監督が理想とした「自由度の高い攻撃」は本来、選手の個性が存分に生かされることで躍動するはずだったが、勝てない事実が焦りを生んだのだろう。選手に与えられていた”自由”は、いつしか”自分勝手”へと形を変え、いつまでたっても連動が見られなかった。

 事実、最近の試合では個人技で勝負しようとする姿ばかりが目立っていたことから、宮本監督はその部分にもテコ入れを行なって「勝負を急ぎすぎない攻撃」を求めた。

「これまでは(2トップの)アデミウソンとファン・ウィジョがボールを受けると、周りを待たずにふたりだけでガガッと前線に攻め上がってしまい、結局はボールを失って攻め返されることがほとんどでしたから。フィニッシュまで持ち込める可能性は、50%にも満たない状況にあった。

 その反省から、ボールを奪ったあとは、相手陣内に侵入するくらいのエリアまで、まずは『しっかり中盤の選手を絡めながら、安定してボールを運ぶこと』を求めました。それができれば、チーム全体に攻め上がる時間が生まれ、ペナルティーエリアに入っていく人数も、回数も増やすことができる。

 また、丁寧にボールを運ぶことで守備ラインを押し上げられるし、跳ね返された際の守備の準備もできる、と。その姿を示せたのが、鹿島戦の同点に追いついてからの時間帯でした」

 そうした変化を早急にチームに見出すために、宮本監督は自身がU−23チームで育て、氏のサッカーを熟知しているMF高宇洋、MF高江麗央、FW一美和成らをトップチームに昇格させ、かつ、この3試合では前者ふたりを先発で起用している。

 もちろん、彼らはまだまだ荒削りなところも多く、J1の質、スピード感に後れをとるシーンがないとはいえない。だが、先に挙げた鹿島戦を含め、”宮本ガンバ”が戦ったここまでの3試合は、いずれも中3日のハードスケジュールで行なわれ、チームを熟成させる十分な練習時間が確保できなかったことを考えても、彼らの抜擢は”宮本イズム”を浸透させるうえで得策だったといえる。

 とはいえ、だ。

 そうした変化が見られ、また選手も口々にその手応えを語ってはいるものの、如何せん、この3試合は2分1敗と結果を出せていない。

 とくに直近の名古屋グランパス戦では、2点のリードを奪いながら逆転負けとショッキングな敗戦に終わっている。残留を争う相手だけに、その打撃は相当だろう。

 また、勝負の世界において、”結果”こそが選手の自信を深め、チームを変化させるための最大の”良薬”だと考えれば、その投薬ができずに3試合を終えたことによる”ブレーキ”も否定はできない。

 だが、半年をかけて形にならなかったチームが、監督が交代したからといって、就任からわずか10日で形になるほど、この世界は甘くない。

 だからこそ、この先、求められるのはチームとして我慢強く、辛抱強く、気持ちを切らさずに、勝ちを求め続けられるか。クラブを挙げて、このタイミングでアカデミー一期生のクラブレジェンド、宮本恒靖を監督に据えた責任を背負って戦い抜けるか、だ。

 宮本監督自身は揺るぎない覚悟で、その責任に立ち向かっているからこそ、クラブの総力を結集して”結果”をつかみ取る戦いが期待される。

「僕はこのガンバで育ち、プロ生活のほとんどの時間をここで過ごしました。引退後、指導者としてのスタートを切らせていただいたのもガンバです。そのガンバのトップチームの監督を務めることへの責任は当然、感じていますし、このクラブ、チームへの特別な思い入れもあります。

 だからこそ、”強いガンバ”を取り戻すために、最大限の力を注ぎたい。自分だけではなくスタッフ、選手とともに、いろんな試行錯誤を、やっていきたいと思う」

 そう熱を込める宮本監督。クラブ史上初のJ2降格を味わった2012年と同じ結果に終わらせないための、本当の戦いはこれから始まる。

著者:高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa


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