日本バドミントン界の競争が激化。もはやタカマツペアだけではない

日本バドミントン界の競争が激化。もはやタカマツペアだけではない

 7月30日から中国の南京で開催された世界バドミントン選手権。5月の国別対抗ユーバー杯決勝で、タイを圧倒して37年ぶりの優勝を飾った女子は、今大会でも実力を存分に発揮した。

 ダブルスは、世界ランキング14位の松本麻佑・永原和可那組(北都銀行)が、第3シードでリオデジャネイロ五輪優勝の髙橋礼華・松友美佐紀組(日本ユニシス)に3回戦で勝つと、初出場の勢いに乗って、準々決勝では第7シードのタイペアを破った。続く準決勝では、第5シードのインドネシアペアを撃破。決勝に進むと、前回銀メダルで第2シードの福島由紀・廣田彩花組(岐阜トリッキーパンダース)との接戦を制し、初優勝を果たした。

 準決勝で福島・廣田組に敗れた第4シードの米元小春・田中志穂組(北都銀行)も銅メダル獲得と、金銀銅すべてを日本勢が占める結果となった。

 また、シングルスでは奥原希望(日本ユニシス)が連覇を狙ったが、前回の決勝で死闘を繰り広げたプサルラ・V・シンドゥ(インド)に準々決勝で敗れてその願いは叶わず。準々決勝で第5シードの若手・陳雨菲(中国)を破った山口茜(再春館製薬所)が、決勝進出はならなかったものの、世界選手権で初めての銅メダルを獲得した。

 男子シングルスは、桃田賢斗(NTT東日本)が安定した戦いで、決勝では全英オープン優勝の石宇奇(中国)に勝ち、初優勝を果たした。前回3位だった男子ダブルスの園田啓悟・嘉村健士組(トナミ運輸)も銀メダルを獲得し、男女合わせて、前回の金1銅3の合計4個を上回る、金2銀2銅2の合計6個を獲得した。

 テレビ中継の解説もした、2007年世界選手権男子ダブルス銅メダリスト、元五輪代表の池田信太郎氏(国際バドミントン連盟アスリート委員)は大会の印象をこう話す。

「大会前はそこまでメダルの数が伸びるイメージはなかったのですが、サプライズは男子ダブルスと、山口がしっかり銅メダルを獲った女子シングルスですね。

 桃田の場合は腹筋を痛めていたようでしたが、他の選手に負けるような要素はなかった。アジア選手権やインドネシアオープンで優勝してディフェンスに自信をつけていたと思いますし、ディフェンス70%でしっかりラリーをして相手の意図を消して勝ったので、銅メダルを獲った15年より格段に実力をつけているという印象でした。

 女子ダブルスは、リオで金メダルを獲った髙橋・松友組が国内の試合でも若い選手などに負けていて、競争心が高まっていた感じがします。自分の力を出せば金メダリストに勝てるんだという自信が周囲の選手にも出てきていると思うので、その競争の激しさが(今大会)出た結果だと思います」

 日本バドミントンがここまで強くなったきっかけは、04年に朴柱奉(パク・ジュボン)氏がヘッドコーチに就任して、戦いの場を世界に求めるようになったことだ。

「いきなり金メダルというのは難しいですが、その中で男子シングルスの田児賢一など、ちょっと抜けた存在が出てきて、少しずつ世界に通用するようになって足跡を残してきた。

 男子ダブルスも僕たちの前はメダルを獲った選手は誰もいませんでしたが、1個でもメダルを獲ると、他の選手も『次は自分たちもメダルだ』というのを簡単に想像できるようになったんだと思う。そういう足跡を残してきた選手がいたからこその今回の金メダルだと思うし、前回金メダルを獲った奥原を見ていて思ったのは、『銅メダルを獲ってハッピー』ではなく、(よりいい色の)メダルを目指すのが当たり前になっていて、そのための練習をするという意識を全員が持ってきている」

 朴ヘッドコーチ就任後の流れを見れば、07年世界選手権で坂本修一・池田信太郎組と小椋久美子・潮田玲子組が、ともに銅メダルを獲得して以降、11年には銅1、14年は銅2、15年は銅3という実績を残してきた。

「僕たちが第一期だったけど、今は本当に”朴イズム”みたいなものがすごく根づいてきていると思いますね。朴さん自身はすごく謙虚で、一つひとつのことをすごく大切にする。すごい負けず嫌いだし、準備を怠らない性格なので、そういうのが選手一人ひとりに伝わっていると思います。そういう選手に対するマネージメント能力は高いと思いますね」

 一方で、池田氏は「朴ヘッドコーチが特別なマジックを使っているわけではない」とも語る。

「うまくなるための技術指導というのは特にないと思います。ただ、ハードワークだったり、精神的な強さだったり、練習量だったり……、最後まで勝ち抜くメンタリティの強さを求める。そういう指導ができる人は(選手から)信頼されていなければいけないので、そこが違うと思います。

 技術面に関しては各種目の担当コーチがまかなっているし、選手たちも世界のトップ選手と戦うことで技術は上がってくる。つらいメニューを普通のコーチが言うと、『エッ、このメニュー?』となるけど、朴さんが『あと1本』と言うと選手は何も言わないでやります。やっぱりそれがカリスマ性というか、信頼されている証だと思いますね」

 加えて今の世界は中国も含め、どの国も世代交代の過渡期になっていると池田氏は分析する。

「男子シングルスも本当なら、かつてのリー・チョンウェイ(マレーシア)のようなハイレベルの選手が4〜5人くらいいてもおかしくない。ただ、今回の銀メダルと獲った中国の石も桃田のディフェンスを崩せなかったり、レベル的には五輪連覇をした林丹(中国)などのような安定感やスーパー感はまだないですね。これからも日本にはチャンスがあると思います」

 各国が世代交代にもたついている中で、日本はナショナルチームがしっかり機能し、世代交代もうまくいっている。それを証明するのが、今回の世界選手権に出場した選手の中で、リオ五輪に出場していたのは髙橋・松友組と女子シングルスの山口、奥原のみという事実だ。さらにメダリストとなると、女子シングルスの山口だけになる。この入れ代わりの激しさも、日本バドミントンの躍進を支えている大きな要因だ。

 そして、選手たちの大きなモチベーションとなっているのが、20年東京五輪の存在だ。12年ロンドン五輪女子ダブルスで藤井瑞希・垣岩令佳組が銀メダルを獲得し、16年リオ五輪では髙橋・松友組が金メダルで、奥原が銅メダルを獲得している。五輪のメダルは日本の選手にとって身近なものになったが、それを目指すためにはまず出場権を獲得しなければならない。

 各種目最大で各国2枠、という狭き門で、それも激しい争いに拍車をかけている。特に女子ダブルスは松本・永原組の優勝で、これまでのランキングが14位から9位に上がったが、それでもまだ5位以内にいる福島・廣田組や髙橋・松友組、米元・田中組を抜けない状況だ。そんな厳しい国内の戦いが今の日本のレベルを上げる原動力になっている。

著者:折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi


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