3発快勝にも、杉山氏が指摘。森保ジャパンの「色」が見えない

3発快勝にも、杉山氏が指摘。森保ジャパンの「色」が見えない

 前半16分、中島翔哉(ポルティモネンセ)のコーナーキックから相手のオウンゴールを誘い、先制点を挙げた日本。しかし、前半につかんだ決定的なチャンスは、40分に南野拓実(ザルツブルク)が放ったシュート1本のみだった。

 サッカーには「親善試合は前半のスコアを見よ」という格言がある。3−0という試合結果を見れば日本の完勝だが、親善試合は時間の経過とともにテストの色合いが増していく傾向がある。

 この試合の選手交代枠は6人で公式戦(3人)の倍だった。メンバー交代が忙しくなる後半の戦いを、結果をもとに語るのはナンセンスだ。親善試合で結果論が通じるのは前半のみというわけである。

 そういう意味では、日本はけっして褒められた出来ではなかった。ホームであることを踏まえれば、むしろ苦戦。3−0という結果とは違うものが見えてくる。

 遠藤航(シントトロイデン)のマイナスの折り返しを南野が流し込み、2−0としたのは後半21分だったが、それは、コスタリカベンチが6人目の交代を行なおうとしていたタイミングと一致していた。

 このときまだ、1人もスタメンをいじっていなかった日本。勝ち負けを意識した本気モードで戦っていた日本と、テストモード全開だったコスタリカ。まさに両軍の温度差がピークに達していた瞬間でもあった。

「選手を少しでも多く試したい気持ちと、勝利にこだわりたい気持ちと、両方あった」と、試合後の森保一監督は語ったが、コスタリカのロナルド・ゴンサレス監督と比較すれば、どちらが代表監督として適切だったか、答えは明白だ。

 ゴンサレス監督が6枚の交代カードをすべて切り終わった後に、最初のメンバー交代を行なった森保監督。敗戦を恐れ、保身に走り、身動きが取れなくなってしまったと言われても仕方がない。

 9月7日に札幌で行なわれる予定だったチリ戦は震災で中止に。このシリーズの試合時間は180分から90分に半減していた。選手をテストする時間も同様に半減。選手交代はその分だけ貴重になっていた。そうしたなかでいかに多くの選手に出場機会を与えるか。注目ポイントのひとつだった。

 ゴンサレス監督が交代出場した6人に割り当てた時間は延べ220分。対する森保監督はわずか64分。ゴンサレス監督は4日前に韓国と対戦しているにもかかわらず、日本戦でもテストに多くの時間を割いた。両監督の器の違い、監督としての力量差をここに見ることができる。

 森保監督は、就任緒戦を迎える自分自身の方が、選手より注目される存在であることを忘れていたのだろうか。選手で代表初スタメンは堂安律(フローニンゲン)と佐々木翔(サンフレッテェ広島)の2人のみ。両者にしても、だいたいどんなプレーをするかは把握できている。不確定要素が多いのは森保監督の方だった。

 布陣しかり。サンフレッチェ広島時代やU−21日本代表で森保監督が採用してきた3−4−2−1をそのまま日本代表に当てはめるのか。従来の日本代表と異なるスタイルで臨むのか。注目はここにも集まっていた。

 だが、採用したのは4−4−2。森保式ではなく日本の従来型だった。選択した理由を問われた森保監督はこう答えた。

「ひとつの形にこだわってやっていくのもいいけれど……いろんな形に対応できるように……柔軟さ、臨機応変さをもって……。ですが、システムはどうあろうとサッカーの原理原則は変わらない」

 代表監督として、ここは人を惹きつける台詞を吐くチャンスだったが、そこで発せられた言葉はとても弱々しく、不明瞭だった。

 3−4−2−1は、サイドアタッカーが両サイドに各1人しかいないため、深い位置に進入しにくく、攻撃が先細りし、真ん中に固まりやすくなるが、この日の4−4−2もそれと似た傾向を示していた。堂安、中島が、両サイドバックと絡むことができていないので、プレーは単独になり、深い位置に進入することができなくなった。

 例外は、左サイドバックの佐々木ではなく、守備的MFの遠藤が深い位置に入り込み、そのマイナスの折り返しを南野が決めた2点目のゴールのシーンぐらいだ。

 それは意図的には見えない、偶然の産物だった。早い話が「哲学不在」。色、こだわりが感じられないのだ。それなしに代表監督に不可欠なカリスマ性は宿らない。これで2022年まで4年間、もつのか否か。怪しい気がする。

 2002年日韓共催W杯前後のように、それでも好選手が目白押しの状態にあるなら希望は見えるが、日本サッカーの現状は右肩上がりにはない。この日、スタメンを飾った選手のなかで、4年間、代表の椅子に座り続ける選手はどれほどいるだろうか。

 室屋成(FC東京)、三浦弦太(ガンバ大阪)、遠藤、中島、南野、堂安。年齢的に4年後を狙えそうなのは、これらの選手になる。

 可能性が一番高いのは中島だろうか。同じく小兵アタッカーの堂安より半端なプレーが少なく、やりきる力、高い完遂能力を感じる。得点の気配を感じさせるプレーができているように見えた。

 とはいえ中島のポジションは、乾貴士、原口元気、宇佐美貴史など、ライバルが多くひしめき合う最大の激戦区だ。南野もここに回る可能性がある。日本のストロングポイントとも言える。

 しかし、3−4−2−1を採用すると、このポジションの選手はおそらく2シャドーの一角となり、役割は不明瞭になる。話は監督問題に戻ってしまうのだ。森保監督で大丈夫なのか。心配だ。

著者:杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki 西村尚己/アフロスポーツ●写真 photo by AFLO SPORTS


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