絶対女王アーモンドアイ。牝馬三冠達成へ、2つの不安要素が明るみに

絶対女王アーモンドアイ。牝馬三冠達成へ、2つの不安要素が明るみに

 3歳牝馬三冠の最終戦となるGI秋華賞(京都・芝2000m)が10月14日に行なわれる。

 注目は、春の二冠(桜花賞、オークス)を完勝してきたアーモンドアイ。勝てば、メジロラモーヌ(※)、スティルインラブ、アパパネ、ジェンティルドンナに続く、牝馬三冠馬の誕生となる。
※秋華賞創設前のメジロラモーヌは、桜花賞、オークス、エリザベス女王杯による三冠。

 しかし秋華賞は、桜花賞(阪神・芝1600m)、オークス(東京・芝2400m)のちょうど中間距離でありながら、牝馬三冠の中で最も難しいレースとされている。というのも、広々としたコースで行なわれる桜花賞やオークスとは異なり、秋華賞は小回りコースで行なわれるからだ。つまり、紛れもあって、スケール感のある馬ほど「取りこぼしやすい」と言われている。

 はたして、アーモンドアイはそうした舞台設定を克服できるのか。実際のところ、三冠達成の可能性はどれぐらいあるのか。デイリー馬三郎の木村拓人記者は、「(三冠達成は)限りなく”ある”に近いと思います」と言う。

「まず、アーモンドアイ自身のポテンシャルは、相当高いと思います。加えて、距離もオークスより短くなるのは、同馬にとって好材料です。そして、三冠達成を可能にする一番の要因は、強力なライバルたちが相次いで脱落していったこと。そこは、大きいですね」

 木村記者が指摘するとおり、秋華賞の登録馬を見てみると、オークスの上位馬はアーモンドアイの他、3着に入ったラッキーライラックのみ。2着リリーノーブル、4着レッドサクヤ、5着マウレア、6着サトノワルキューレの名前はない。さらに、近年多くの勝ち馬を出しているトライアルの紫苑S(9月8日/中山・芝2000m)を圧勝したノームコアも出走を見送った。

「最大のライバルと目されている2歳女王のラッキーライラックも、オークス3着のあと、ここまでの順調さを欠いた状態での出走です。せめてタレントがそろっていれば、むしろ穴党としては『アーモンドアイ、危うし』と考えたいところですが、こうもライバルがいないとなると、三冠達成はかなり”濃厚”と言わざるを得ません」

 スティルインラブにはアドマイヤグルーヴ、ジェンティルドンナにはヴィルシーナといった、春からライバル関係にあった馬たちが、この三冠最終戦でもその勝利を脅かしてきた。そういった相手もいないとなれば、春の時点で他馬より一歩も二歩も上回るパフォーマンスを発揮してきたアーモンドアイが負けるシーンはとても想像できない。

「ただ、取りこぼす可能性も”ない”とは言えません」

 木村記者があえてそう言うのも、やはり秋華賞の特殊な舞台設定にある。木村記者が続ける。

「あのジェンティルドンナにしても、三冠のうち、最も苦戦したのが、秋華賞でした。京都の内回り・芝2000mは、底力というよりは、小脚の使える器用さが求められるようになっています。

 昔はなぜかハイペースになって、直線一気がハマッたりもしていましたが、それで勝ったのは伏兵ばかり。逆に、本命クラスは(勝ちにいって)自分で動いていこうとして、器用さ勝負であたふたしている間に前の馬に出し抜かれたり、そこで脚を使ったことで最後に差されたりして、取りこぼすことがあります」

 器用さ勝負に巻き込まれて後手を踏んだケースと言えば、まさにブエナビスタが敗れたとき(2009年)がそうだ。機動力で勝るレッドディザイアに、まんまと先に動かれて2着入線。なおかつ、勝ち馬を追いかけるときの動きでブロードストリートの進路を妨害して、3着降着という憂き目にあってしまった。

 とはいえ、アーモンドアイの場合は、桜花賞で見せた鮮烈な決め手だけでなく、前めでレースを運んだオークスで披露した器用さもある。そのレースぶりから、それほど心配する必要はないのではないだろうか。

「確かにオークスではいい位置を取りましたけど、折り合いはギリギリ。コーナーがゆったりしていて、広い東京コースだからできた芸当でしょう。それに、あの末脚を引き出すには、エンジンがかかるまでの助走が必要な馬。正直、京都の内回りは”合わない”タイプだと思うんですよね。

 後ろで構えていたら、前でうまくレースを運ぶ馬を相手に”やらかす”可能性は少なくないと思います。もちろん、差し遅れたとしても、力は抜けているわけですから、上位には確実に来ると思いますが……」

 木村記者はもうひとつ、アーモンドアイには懸念材料があるという。それは、オークスからのぶっつけとなるローテーションだ。2001年のテイエムオーシャンや、2006年のカワカミプリンセスはオークスからのぶっつけで戴冠を遂げているが、そういった例とは「少し意味合いが違う」と言って、木村記者はこう語る。

「(オークスからの)ぶっつけ自体は、そんなに気になりません。桜花賞もトライアルを使わずにぶっつけで挑んで結果を出していますから、むしろこの馬にはぶっつけのほうが合っていると思うんです。

 ただ今回、アーモンドアイは現時点ですでに、この先のジャパンカップ(11月25日/東京・芝2400m)を視野に入れている、ということ。そうなると、やはり目いっぱいに仕上げられるのか? という疑問が残ります。そこに、付け入る隙が生まれるのではないでしょうか」

 ということは、木村記者の目から見て、トレセンで調整を重ねるアーモンドアイは”まだ余裕残り”ということなのだろうか。

「いえ、動きはシャープで、休み明けの重苦しさもありません。体自体は見た感じ、しっかりできているという印象です。もともといい動きをする馬でしたが、やっぱりモノが違うな、と改めて思うほどです。

 結局、体調に不安はなんらないんですよ。それを踏まえての『限りなく”ある”に近い』です。懸念材料を挙げたのは、あくまでも取りこぼす可能性がゼロではないから。ただそれだけです。アーモンドアイにはいい競馬を見せてほしいです」

 三冠という高いステージに上るには、一つひとつの”ハードル”を越えていかなければいけない。しかしアーモンドアイにとって、その”ハードル”は決して高いものではないかもしれない。これまでのふたつはもちろんのこと、最後の”ハードル”もかなり低くなっているような気がする。

著者:土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu


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