ベルマーレの勇気が生んだ同点弾。「他人事」だった決勝へ前進

 結果から言えば、柏レイソルvs湘南ベルマーレが激突したルヴァンカップ準決勝第1戦は、1−1の引き分けだった。ホーム&アウェーの2試合で決着をつける準決勝は、半分となる90分を終えただけに過ぎない。ただ、試合後の指揮官のコメントを聞けば、どちらが第1戦を優位に終えたかは明らかだった。


貴重なアウェーゴールを決めた菊地俊介

 第1戦で貴重なアウェーゴールを奪った湘南の曺貴裁(チョウ・キジェ)監督はこう切り出した。

「ルヴァンカップ準決勝で指揮を執るのは監督人生で初めてのことですし、(うちの)ほとんどの選手たちもこうした舞台に立った経験がないなかで、非常に堂々とプレーしてくれた」

 一方、ホームで戦った柏の加藤望監督は次のように悔しさをにじませた。

「ホームでの戦いということで、しっかりとゼロで抑えて次に進みたかったというのが本音です」

 どこか、この試合に挑む姿勢や、思いまでもが表れていたような気がした。

 試合はいきなり動いた。開始1分、柏の中川寛斗が右サイドに展開すると、抜け出した江坂任がゴール前に折り返す。柏のスピードに乗った一連のプレーに、湘南のDFはまったく対応できず、ファーサイドに走り込んだ瀬川祐輔が、まるで「いとも簡単に」とでも言いたくなるほど、あっさりと右足で決めた。

 あまりに早い時間帯での失点に、決勝進出を意識して、湘南は硬くなっているのではないか――。そう推察したくなるような展開だったが、ピッチに立っている選手たちは違った。最後尾からチームを見守るGKの秋元陽太が言う。

「(失点して)最初は本当にどう声をかけようかなと思ったんですけど、みんなの顔を見たら、全然大丈夫そうだった。だから、切り替えろとだけ話をしたら、すぐにシュン(菊地俊介)が得点を獲ってくれて。欲を言えば、もう1点獲れればよかったですけど、あの落ち着きが同点につながったのかなと思います」

 その後もピンチはあったものの、好セーブを連発した31歳の守護神がチームの成長を語れば、前線で躍動し、積極的にゴールを狙った同じく31歳の梅崎司もこう語る。

「最初から勇気を持って、堂々とやっていこうという話はしていました。失点は残念でしたけど、それにまったく動じずに戦い続けることができたから、同点に追いつくことができたと思います」

 そこにまず、湘南の確かな成長を実感せずにはいられなかった。前半9分、ボランチで先発起用された金子大毅が前線にパスを送る。これは柏のDFに阻まれたが、こぼれ球を拾った菊地俊介がためらうことなく右足を振り抜くと、DFに当たって同点に追いついてみせた。

 その後も湘南は、代名詞でもある前線からの激しいチェイシングでボールを奪うと、柏のゴールを脅かす。前半39分には湘南がロングボールを供給すると、梅崎の落としからFWの山﨑凌吾がシュートを狙った。

 もちろん、ホームの柏も反撃に出る。前半終了間際にはカウンターを仕掛けると、右サイドバックの小池龍太がドリブルで持ち運んでフィニッシュした。

 エンドが変わった後半も、湘南が岡本拓也の折り返しからふたたび山﨑がゴールを狙えば、柏もカウンターから瀬川がシュートを放つ。後半30分には、その瀬川が高木利弥のクロスから決定的ともいえるヘディングシュートを放ったが、これは秋元がセーブ。ともに縦を意識した攻防は見応えがあったし、90分通して手に汗握る展開が続いた。

 ただ、そうした見応えある試合展開になったのも、湘南がチームとしてさらにステップアップしようとする姿勢に表れていた。

 湘南は前線から激しくプレッシャーをかけるだけでもなければ、武器である運動量を駆使するだけでもなかった。そうした特徴を活かしつつ、柏から主導権を握ろうと、ときにはショートパスをつないでコンビネーションで打開したし、ときにはボールを奪って素早い攻撃からゴールに迫った。さらには90分間、DFラインを高く保ち、チーム全体で仕掛け続けた。後半になり、カウンターを受ける場面が増えたのも、そうした「前へ」「縦へ」という強い姿勢を貫いた結果でもあった。

 だから、記者会見で曺監督はこうも語っている。

「3年前、5年前はカップ戦の決勝が他人事のように見えていたものが、少しずつ、少しずつ、クラブとしてもいろいろとトライをしてきたから、今があると思っています。今日の試合では、選手たちがトライをして、そして成功したプレーが随所にあったということで、互角以上の試合ができたと思う。

 今まで、湘南ってよく走るよね、いいチームだよねって言われていたその後、みなさんが口に発しない(弱いという)ものをずっと感じながらやってきたんですけど、それではダメだなと思って長年やってきた。まだ90分が終わっただけですけど、(今日の試合は)次に向けて非常に力になったゲームだったのではないかと思います」

 その指揮官の言葉は、選手たちに確かな手応えとなって響いていた。ふたたび梅崎が語る。

「もちろん相手のチャンスもありましたけど、自分たちが主導権を握ってやっていくんだというところを見せられたかなと思います。それは本当に大きな進歩。

 前節のリーグ戦(1−0で勝利したJ1第29節のサガン鳥栖戦)は、僕らのサッカーが集約されていた部分はありますけど、そこからチームとして、もう一歩前に進んでいかなければならないのは僕自身も感じていたこと。曺さんもやっぱりというか、週明けの練習からそこを口酸っぱく言ってくれて、チームとしても満足していなかったのが、ひとつ大きなきっかけだったと思います」

 チームを救ったのは、躍動していた秋元や梅崎だけではない。20歳の金子や杉岡大暉、開始早々の1失点に臆することなく柏の攻撃を抑えた23歳の坂圭祐や24歳の山根視来、さらには途中出場した23歳のFW山口和樹ら、若い世代の選手たちが堂々とプレーしていたことも第2戦への弾みとなるはずだ。

 ただ、第1戦をホームで戦った柏がアウェーゴールの重みを十分に理解して、守備意識を高く持ち試合を戦っていたのも事実である。1−1で第1戦を終えた結果、状況が逆となる第2戦で、柏がそのアウェーゴールを奪おうと攻撃に出てくることは明白だ。

 だから、梅崎は言う。

「第2戦も難しい試合になりますけど、だからこそいかに勇敢に、勇気を持って戦っていけるかだと思う」

 曺貴裁監督が率いて今年で7シーズン目。Jリーグの歴史を紐解いても、稀(まれ)に見る長期政権である。その間、J2を戦っていた時期もあれば、J1降格を経験したこともある。その湘南は、掴みつつある次への歩みを第2戦でも貫くことができるか。梅崎は最後に、こうも言っていた。

「このチームの若い選手たちは、本当にワンプレーやひと言、もしくは1試合で変わっていく。僕自身もすごくエネルギーをもらえるし、それで火がつくというか。負けてられないな、やってやるぞって思える。だから、ここをひとつ越えたら、またみんなグッと伸びると思うんですよね」

 その先にきっと、クラブ史上初となるルヴァンカップ決勝の舞台はあるのだろう。ルヴァンカップ準決勝第2戦は、10月14日に行なわれる。

著者:原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke


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