なぜライオンズの本拠地メットライフドームは本塁打が出やすいのか?

なぜライオンズの本拠地メットライフドームは本塁打が出やすいのか?

「メットライフドームはボールが飛びます」

 2018年のパ・リーグ本塁打王を手中に収めている山川穂高(西武)が記者陣に驚きの”現象”を明かしたのは、今季39号・40号を連発した翌日、9月16日に本拠地で行なわれたソフトバンク戦の前だった。

 最初は山川独特の感覚かと思ったが、セイバーメトリクスの「ホームランパークファクター」という、どの球場で本塁打が出やすいかという指標を見ると、山川の指摘するような結果が出ている。

 昨季のパ・リーグではメットライフドームがもっとも高くて1.401、次点はヤフオクドームで1.251。最下位はZOZOマリンスタジアムで0.647(データ『スポーツナビ』参照)。

 今季(9月28日時点)もメットライフドームがもっとも高くて1.26、次点は楽天生命パーク宮城で1.09。最下位は札幌ドームで0.61だ(データ『日本プロ野球RCAA&PitchingRunまとめblog』参照)。

 メットライフドームで本塁打が出やすい理由のひとつは、「山賊打線」の西武が本拠地で打ちまくっていることが考えられる。47本塁打の山川を筆頭に、リーグ3位の32本の浅村栄斗、同6位で28本の中村剛也らを擁し、チーム本塁打はリーグで2番目に多い196本だった(10月10日時点)。

 広さは両翼100メートル、中堅122メートル。ヤフオクドーム、京セラドーム大阪、札幌ドームとちょうど同じだ。左・右中間の膨らみを考えても、相対的には広いとも狭いとも言えない。

 ではなぜ、メットライフドームで本塁打が出やすいのか。

 環境要因として浮かぶのが、半ドームというユニークな形状で、とくに夏場はまとわりつくほど湿気を感じることだ。理論的には湿度が高いほど空気密度が下がり、ボールが飛びやすいという説もある。「湿気が関係している?」と聞かれた山川は、打者独特の観点からこう答えた。

「詳しくはわからないですけど、打感というか、自分の打った感覚です。他の球場だと、ない感覚なので。メットライフドームではバーンと打って、これくらい飛ぶだろうと思って見ると、それくらい飛んでいる。他の球場で『これくらい飛んでいるかな?』と思って、『あれ? ちょっと飛んでない』となると、『身体がおかしいのかな』とか、『スイングが鈍いのかな』となっちゃうんです」

 近年、セイバーメトリクスやトラックマンなどで野球のデータ活用が進む一方、選手たちがもっとも大切にするのは感覚だ。たとえば菊池雄星(西武)は、「選手のパフォーマンス(が構成されるの)は90%が感覚で、残りの5%が環境、残りの5%がデータだと僕は思っています」と言う。

 打者にとっても同じで、そのひとつに「打感」というものがある。この独特な表現を山川が口にしたとき、以前、栗山巧(西武)に聞いた話を思い出した。

「不思議と東京ドームや北九州(市民球場)でホームランが出ないことがあるじゃないですか。『行った』と思っても、(フェンス際で打球が)落ちていくでしょ? 結局、目と身体で『(フェンスまで)だいたいあの距離』と測っちゃっているから、たぶん。『(狭い)北九州だから入った』ということではなく、同じようにいい当たりをすれば広いヤフー(現ヤフオクドーム)でもたぶん入っている(※ホームランテラス設置前の話)。絶対そうだと思う」

 筆者を含む外部の観戦者は、「両翼92メートル、中堅119メートルの北九州市民球場や、左・右中間の膨らみの少ない東京ドームは、狭いから本塁打になった」と考えがちだ。桑田真澄氏が実況中に口にして話題になった「ドームラン」という表現もある。

 だが、打者にとっては、球場が狭いから本塁打になりやすく、広いから打ちづらいわけではないと栗山は言う。球場の大小に関わらず、いいスイングでボールを捉えれば、最高の結果として本塁打になる。逆に打ち損ねたら、たとえ狭くてもスタンドまで運ぶことは難しい。

 そんな栗山の話を山川に振ると、大きくうなずいた。

「僕の場合、東京ドームがたぶんそうです。東京ドームが狭いから(スタンドまで)飛ぶとか、空調だとか、看板直撃とか言われやすい場所ですけど、僕は『東京ドームは飛ばない』と思っています。だから飛ばしている人たちを見ると、すごいなと思います。

 逆にメットライフドームだと、僕は誰よりも飛ばす自信がある。気持ちの問題かもしれないけど、感覚の問題なので、一番大事かもしれません。僕はここ(メットライフドーム)で圧倒的にホームランを打っていると思うけど、大きく関わるところです」

 山川が今季放った47本塁打のうち、27本が本拠地で生まれたものだ。次点は楽天生命パークで7本。東京ドームでは7試合で1本も打てず、打率.154と苦手にしている。

 山川以外の選手では、32本塁打の浅村栄斗は18本、28本塁打の中村剛也は16本、8本塁打の栗山は4本をメットライフドームで放った。

 本拠地では試合数が多いから、本塁打数も増えるのは当然と言えば当然だが、例外もいる。24本塁打の秋山翔吾は、66試合を戦ったメットライフドームで6本だったのに対し、13試合の楽天生命パークでは7本塁打を記録した。「右に引っ張ってホームランが出ると、不調の入り口になりかねない」と語る稀代のヒットメーカーは、独特の感覚を備えているのかもしれない。

 もちろん、メットライフドームで西武の打者が本塁打を多く放っている背景には、ホームアドバンテージもあると考えられる。家族のいる自宅や食事を用意してもらえる寮から球場に通え、早めに来てウォーミングアップなどの準備も行ないやすい。試合前の打撃練習でも、ホームチームは2カ所で行なえるのに対し、ビジターは1カ所だ。ファンの大声援を背に戦えることは何より大きい。

 そんな条件面と独特の感覚を合わせて、山川は「メットライフドームはボールが飛ぶ」と言う。主砲がポジティブな気分で臨める場所でクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージを戦えるのは、10年ぶりの日本シリーズ出場を目指す西武にとって心強い材料だ。

 果たして10月13日から始まるCSファーストステージを勝ち抜き、西武との決戦に臨むのは、もっともチーム本塁打数の多いソフトバンクか、被本塁打数が最少の日本ハムか。

 ソフトバンクが駒を進めた場合、キーマンのひとりは今季32本塁打の松田宣浩だ。メットライフドームでは計4本塁打を放ち、西武が20年ぶりの地元優勝をかけた9月29日の試合では2本塁打を打って胴上げを阻止した。対して36本塁打の柳田悠岐は、今季1度も所沢の空にアーチをかけていない。エース・菊池は2018年シーズンの被本塁打16本のうち半分を本拠地で許しており、松田や柳田との対戦が注目される。

 一方、日本ハムでメットライフドームを得意にしているのが主砲の中田翔だ。今季25本塁打のうち4本を放ち、打率.327と本拠地の札幌ドーム(打率.249)以上に打っている。逆に投手陣では上沢直之が8月3日、8月18日の2試合に先発し、2度目の登板では秋山と中村に本塁打を浴びた。いずれもチームは敗れたが、エース右腕が山賊打線をどう抑えるか、日本ハムにとってカギを握る。

 いよいよ近づいてきたパ・リーグのクライマックス。決戦の場は、もっともホームランの出やすいメットライフドームだ。あらためて言うまでもなく、一発が短期決戦の流れを大きく左右する。

著者:中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke


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