包囲網が強まっても帝京大に迷いなし。早大撃破で偉業達成へひた走る

包囲網が強まっても帝京大に迷いなし。早大撃破で偉業達成へひた走る

「ラグビー精神」は生きている。例えば、対戦相手に敬意を払う。その歴史にも。

 大学ラグビー王者の帝京大が、創部100周年の早大にリスペクトを抱いて挑み、楽しみ、そして圧倒した。パワーを増しながら、関東大学対抗戦8連覇、大学選手権10連覇の偉業にひた走る。

 試合後、東京・秩父宮ラグビー場の外だった。1970年創部。1996年から、その帝京大を率いる岩出雅之監督は小雨の落ちる中、「早稲田大学さんにはお世話になってきた」としみじみと漏らした。

「草創期の帝京大学ラグビー部が(早大OBに)支えられた事実もある。早稲田の背中を追いかけながら、我々は成長させてもらった。厳しさも教えてもらった。ラグビーの先頭を走ってこられたチームに対して、心からリスペクトしているんです」

 実は試合前日のジャージ授与式の際、岩出監督は、早大の100周年に触れている。”早稲田の関係者の方々の尽力があるから、いまの帝京がある。敬意を持って、しっかり戦おう”といったことを学生たちに語り掛けたそうだ。

 11月4日のゲームスローガンは『帝京ラグビーを楽しめ』だった。才能ある集団が、闘争心に火をつければ、チーム力は一気に高まる。苦しんだ慶大戦(24−19で勝利)を反省し、この2週間、基本プレーを中心に準備してきた。選手同士でぶつかる”生タックル”、ボールの運び方、ブレイクダウンの2人目…。

 立ち上がり、帝京らしいディフェンスで流れをつかんだ。キックオフ直後、早大のはやい球出しからの連続攻撃を浴びた。約3分間、ゴール前のピンチがつづく。

 赤色ジャージはFWもバックスも、タックルしてはすぐに立ちあがり、周りとの連携をとる。赤い壁が少しも崩れない。人数が減らないのだ。スクラムからの早大の攻撃の18フェーズ(局面)目。猛タックルで、とうとう相手のノックオンを誘った。

 ボールを奪回するターンオーバー。窮地を脱した。ロックの秋山大地主将は言った。

「試合の入りから、ディフェンスでも自分たちのからだをしっかりあてて、相手にプレッシャーをかけていこうと思っていました。前半は僕らの強みを出せました」

 攻めては、前半6分、ラックから左ラインに回し、ウイング宮上廉が先制トライ。その7分後には、ラインアウトから左プロップの岡本慎太郎が力強く突進、ラックサイドをFWがタテに突き、最後は右プロップの淺岡俊亮がゴールポスト下に飛び込んだ。

 前半20分はゴール前のPKでスクラムを選択し、まっすぐ押して、圧巻のスクラムトライをもぎとった。10分後にも、スクラムをぐいぐい押し込んで、またもスクラムトライを重ねた。唯一不安視されていたスクラムでも早大を押し崩した。帝京大にとって、早慶明相手のスクラムトライは珍しい。

 左プロップの岡本は硬い顔つきのまま、「スクラム、楽しかったです」と言った。誠実、朴とつ、ほかに言葉が見つからない。

「試合直前も、岩出監督に直接、スクラムのアドバイスをもらいました。”自分のやるべきことをやればいいんだ”と。今日は気持ちの部分で乗っていました」

 帝京大は従来、あまりスクラムにこだわらないチームだったが、今年は強化に力をかけている。練習で8人対8人の”ライブ・スクラム”の数は10本足らずでも、「1本1本を大切にしている」と説明する。

 春の試合で明大に敗れたときはスクラムでやられた。「僕自身が敗因でした」と岡本は述懐する。夏合宿の明大戦、早大戦での敗戦も、スクラムで後手を踏んだ。その悔しさを糧とし、日々の練習に打ち込んできた。

「努力は裏切らない。ひとつひとつ進化しているんじゃないかなと感じています」

 ついでにいえば、帝京大のフロントロー3人(岡本、呉季依典、淺岡)はいずれも京都成章高出の最上級生が並んでいる。岡本は、1年生の途中にロックからプロップに転向した。

「やっぱり、呼吸が合います。高校、大学とずっと一緒ですから。口で言わなくても、お互い、何をしたいかがわかります」

 もっとも、まだチームは成長途上である。後半は、ディフェンス網がゆるみ、早大のスピード豊かな攻めを許し、4トライを奪われた。ノーサイド。結局、45−28で夏合宿の敗戦の雪辱を果たした。 

 エースのフルバック竹山晃暉は笑顔だった。6ゴール、1PG(ペナルティゴール)はすべて蹴り込んだ。

「リベンジするということに、Aチーム(試合メンバー)だけでなく、ラグビー部全員の意思疎通ができたことで、帝京らしいゲームができたんじゃないかと思います。とくに前半は、もうこんな時間なんだという感じでした。たぶん、ラグビーを楽しめていたからだと思います」

 帝京大は今季、春、夏に明大、早大に敗れていた。かつてあったフィジカルや体力の差は他校の努力でそれほど感じられなくなった。帝京包囲網は年々強まり、戦術、戦法も研究されている。でも、百戦錬磨の岩出監督にチーム作りの迷いはない。

 毎年、この時期にチームががらりと変わる。強くなる。どんなマジックを? と聞けば、岩出監督は「マジックなどないよ」と笑い飛ばした。

「タイミングでしょ。例えば、お腹が減った時、よく食べるのと一緒で、悔しいな、うまくいかないな、という時に、年輩の我々が、どうするのかです。夏に負けていれば、気合を入れなくても、気合が自ずと入ってきますよ。どうなりたいの、どうしたいの、どうして。学生に考えさせながら、学生を育てていっているんです」

 もちろん、課題はある。勝って反省、未熟さを実感しながら学生たちの力は伸びていく。厳しさと帝京ラグビーを楽しみながら。

 学生の成長に手応えを感じながら、岩出監督は愉快そうに言った。

「上級生が1.5倍頑張ってくれたら、下級生も伸びていくかな。お互い成長し、チームはもっと伸びていくでしょ」

 早大はこれまで、全国大学選手権を15回、制している。明大が12回。これを追いかける帝京大は1年1年、先輩たちの努力の積み重ねで連覇を「9」に伸ばした。

 岩出監督は続けた。

「歴史は当事者が語ることではないと思う。感謝や敬意を表するけれど、自分たちは今をしっかり頑張ることが大事でしょ」

 次は、明大戦(11月18日・秩父宮)。充実した環境と、人間的成長を促すクラブ文化。その中で才能たちが切磋琢磨し、考え、信じ、育っていく。そうやって帝京大の歴史が築かれていくことになる。

著者:松瀬学●文 text by Matsuse Manabu


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