五輪世代・立田悠悟は、森保監督が落とした雷で「スイッチが入った」

東京五輪を目指す若きフットボーラーたち(2)
清水エスパルス・立田悠悟@前編

 身長189cmのセンターバックで、足もとの技術にも光るものをのぞかせる。清水エスパルスのアカデミーから昇格した昨シーズンはリーグ戦未出場に終わったが、年末に東京五輪代表の立ち上げとなったタイ遠征に招集されると、森保一監督の信頼を掴み取った。

一方、クラブでもサイドバックとしてレギュラーの座を射止め、試合を重ねるごとに自信を深めている。飛躍のプロ2年目を送っている立田悠悟の胸中に迫った。

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DF立田悠悟(たつた・ゆうご)1998年6月21日、静岡県生まれ。清水エスパルスユース出身

―― 今年の初めごろと比べて、表情がたくましくなったように感じます。周りから言われません?

立田悠悟(以下:立田) それ、言われます。顔つきが変わってきたねって。自分ではわからないですけど(笑)。まあ、ここまでいろいろありましたから。

―― 清水エスパルスでも、U−21日本代表でも、貴重な経験を積みましたよね。では、U−21日本代表の話から。1月のU−23アジア選手権でも、3月のパラグアイ遠征でも、失点につながるミスを犯したなかで迎えた8月のアジア大会。どんな気持ちで臨んだんですか?

立田 個人的な意見ですけど、僕が一番意気込んでいたというか、モチベーションがもっとも高いのは自分だと思っていました。ただ、それで『自分が、自分が』となるのではなく、チームのために戦うことができた。それが自分でもすごくよかったと思っています。

―― アジア大会では中1日、中2日といった過密日程に苦しみながら7試合を戦い、準優勝に輝きました。これまでのサッカー人生のなかでも濃密な経験だったでしょう?

立田 本当に過密で、身体は相当きてましたけど、すごく楽しかったですね。チームとしても、個人としても、成長を実感することができたので。でも、決勝では韓国に力の差を見せつけられた。「まだまだだな」という部分と、「でも、通用するな」という自信。ふたつの収穫が得られた大会だったと思います。

―― 通用すると感じたのは、どの部分?

立田 やっぱり高さは通用すると思いましたし、つなぎやカバーリングなど、要所要所で自分のよさが出せたんじゃないかなと。

―― 印象的だったのが準々決勝のサウジアラビア戦。相手の9番(身長190cmの本格派ストライカーのムサ・カマラ)が強烈で、前日には立田選手もかなり警戒していた。でも、試合では大南琢磨選手(ジュビロ磐田)とうまく連係を取って対応し、むしろ楽しんでいるように感じられました。

立田 たしかにサウジアラビア戦はひとつのきっかけだったかもしれませんね。ミーティングで映像を見たときは、「すげえな、ちょっとヤバイな」と思ったんです。でも、実際に対戦したら、相手も疲れていたんでしょうけど、通用しない相手じゃないなって。あのような抜きん出た選手に対応できたのは自信になりました。

―― 日韓戦は初めての経験だったと思いますが、雰囲気も含めてどうでした?

立田 静岡ダービーじゃないですけど、やはり独特なものがありました。そうした雰囲気に自分たちが飲まれたわけではないですけど、韓国のほうが気持ちは入っていたから、延長戦で2点を獲られたりして、差が出てしまったのかなと。技術うんぬんではなく、気持ちの面で勝てなかったという想いが強いので、すごく反省しています。

―― ソン・フンミン(トッテナム・ホットスパー)やイ・スンウ(ベローナ)といった、欧州の舞台で戦っている選手とも対峙する場面がありました。差を感じた? それとも手応えを得られた?

立田 自分は今、1対1の守備が強みになってきていて、彼らと対峙しても負けない場面が何度かあったのは自信になりました。エスパルスで今、サイドバックをやっている経験が、3バックでプレーしたときに生きたと感じます。どんな選手が相手でも変わらず、しっかり対応できたんじゃないかと。

―― サイドバックをやっていることで得られた経験というのは?

立田 センターバックしかやってなかったら、たぶんリアクションの守備しかできなかったと思うんです。でも、アジア大会では相手のファーストタッチを狙うとか、自分からアクションを起こす守備ができた。それは、サイドバックをやったからこそ。アジア大会はエスパルスでサイドバックをやって自信がついてきたなかで迎えたので、自分にできるプレー、できないプレーが明確でしたし、割り切ってプレーすることができたのがよかったなって思います。




―― アジア大会を見ていて感じたのは、立田選手が試合を追うごとに、チャレンジの縦パスや対角のロングフィード、前へのアプローチを成功させていたこと。やりながら成長を感じられたのでは?

立田 プレー面の成長は、大会中はわからないんですけど、責任感が増す感覚はありました。ミーティングで森保監督から、失点につながった場面だけじゃなく、失点につながらなかったミスでも映像を使って、「(ミスを)絶対になくさなきゃいけない」と指摘されて、重要なポジションを任されているんだという責任感が増していったんです。でも、相手が強くなるに連れて楽しさも感じられた。そういった面では自分の成長を実感しました。

―― グループステージ第3戦のベトナム戦のハーフタイムには、チームの臆病な戦いに対して、森保監督が雷を落としたそうですね。

立田 そうですね。

―― びっくりした?

立田 いや、そうなるだろうな、という感じはしていました(笑)。

―― あのひどい内容だと。

立田 監督が机を叩いて、「何をやっているんだ!」って。そのとおりだと思いました。あれでスイッチが入ったので、監督に感謝したいですし、それまでスイッチを入れられなかったことは本当に反省しなきゃいけない。うまくいってないときは、自分たち後ろの選手がもっとリーダーシップを取らないといけないと、あの試合で強く感じました。

―― たしかに、決勝トーナメントに入ってから、最終ラインからロングボールを蹴って、前線の前田大然選手(松本山雅)や岩崎悠人選手(京都サンガ)を走らせるときと、しっかりとパスをつなぐときとのバランスがすごくよくなりました。そのあたりはかなり意識していた?

立田 僕と原輝綺(アルビレックス新潟)は「戦術・岩崎悠人」とか、「戦術・前田大然」と言っていたくらいだったので(笑)。それくらい割り切ってやってもいい、という話はチーム内で出ていました。実際、あれだけスピードがあったら。

―― 生かさない手はないと。

立田 はい。だから、ロングボールを見せつつ、でもパスをつなげるチームでもあるので、その両方を臨機応変に。相手にがっちり引かれてしまうと難しい。ある程度、食いつかせたほうが戦いやすい、というのはありました。

―― すごく印象に残っているのが、決勝を終えたあとのミックスゾーンで、立田選手が「海外に行きたくなった」と言っていたことです。アジア大会でその想いが芽生えたんですか?

立田 実は僕、今までは海外に行きたくなかったんです。

―― 行きたくなかったというのは、なぜ?

立田 飛行機が苦手だし、海外のご飯も食べられないし。だから、Jリーグでしっかりやっていければいい、という感じだったんですけど、3月のパラグアイ遠征を終えたとき、また海外に行きたいなと思って。

―― それはアウェーで南米のチームと戦って、いろいろなものを突きつけられて?

立田 そうですね。南米の相手に対して何もできない自分が悔しかったというか。それで、アジア大会を終えたとき、「もう行かなきゃダメだ」っていうふうにさらに変わって。韓国に差を見せつけられて、もっと成長したいと思うのは、当然のことだと思うし。

―― ソン・フンミンと五分にわたり合うには、海外で日常的にそのレベルを体験しなければいけない?

立田 「自分のベースを変えなきゃいけない」というのは強く思います。すでに海外でプレーしている選手との差を早く埋めて追いつかないといけないし、それにはまず、「エスパルスで結果を出さないといけない」と思いながら今は過ごしています。だから今は、サッカーをやっていてすごく楽しいですし、すごく充実していると感じます。

―― 1年前の自分とは、ずいぶん変わったんじゃないですか?

立田 意識はすごく変わったかな。でも、変わらない部分もあって。昨年からずっと自主練をやっていて、試合に出られるようになった今年も、変わらず続けています。自分は昔から抜きん出た選手ではなかったし、雑草魂というか、努力でここまできたと思っていて。コツコツ続けてやれるのが自分の強みなので、それが今の成長につながっているのかなって思います。

(後編に続く)

著者:飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi


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