浅田真央以来の快挙。15歳山下真瑚は世界女王の隣でも「普通」の強心臓

浅田真央以来の快挙。15歳山下真瑚は世界女王の隣でも「普通」の強心臓

 シニアデビューの山下真瑚が、グランプリ(GP)シリーズ第2戦のスケートカナダで堂々の演技を披露して銀メダルに輝いた。GPデビュー戦で日本勢初となる優勝にはわずか0.26点及ばなかったが、浅田真央のデビュー戦(2005年中国杯)と並ぶ総合2位は快挙と言っていい。

 世界ジュニア選手権で3位になった昨季から急成長を見せている15歳は屈託がない。

「すごく楽しく滑れたので、それが一番よかったと思います。お客さんがたくさんいて、歓声もすごくてびっくりしたけど、人がたくさんいたほうが楽しいかなと思いました」と言うショートプログラム(SP)では、冒頭の3回転ルッツ+3回転トーループの連続ジャンプを鮮やかに決めて、出来栄え点(GOE)で1.77点の加点をもらった。3つのスピンはすべてレベル4と判定されて66.30点の3位発進だった。

 その勢いのまま、最終滑走者となったフリーでもほぼノーミス演技を見せ、冒頭の3回転ルッツからの連続ジャンプを成功させ、プログラム後半のルッツ+トーループの連続3回転ジャンプもきれいに跳んで1.85点のGOE加点がついた。技術点では出場選手中トップの71.67点を叩き出すなど、フリーは136.76点の高得点を出して2位となり、合計203.06点をマークして総合2位に。SP、フリー、合計ともに自己ベストを更新する出来で、久しぶりにGP優勝を遂げた元世界女王のエリザベータ・トゥクタミシェワを追い上げた。

「表彰台に乗せてもらえるなんて思っていなかったので、やっぱりすごくうれしいです。メダルが取れるとは思っていなくて、自分の精一杯がショートでもフリーでも出せたのでうれしいです。でも、もっともっとたくさん直すところがあるなと思いました」

 笑顔を見せて素直に喜ぶ山下だったが、記者から「元世界女王の2人(3位はエフゲニア・メドベデワ)と一緒に表彰台に立っての感想は?」と聞かれると「意外と普通。自分的には何か気になったりはしなかった」と、マイペースな一面も見せた。

 山下は7歳でスケートを始めた。きっかけは荒川静香のイナバウアーを見て「自分もやってみたい」と思ったことだという。今春、中京大中京高校に入学した1年生。どちらかといえば遅咲きのスケーターと言え、ジュニア時代は主だった大会での優勝はない。ただし、表彰台の常連で、実力的には一目置かれる存在だった。ジュニアGPの大会でも、出場したすべての試合で表彰台に立っているが、一度も優勝はなかった。

 武器は「どんな大会でも緊張しない」という強心臓ぶりと、スピードがあって軸がしっかりした、高さと幅のあるクセのない安定感抜群のジャンプだ。シニア勢の表現力にはまだ及ばないものの、今季のSP『セビリアの理髪師』とフリー『蝶々夫人』の演技は、まずまずの評価をもらっている。実際、スケートカナダのフリーの演技構成点は、トップだった演技派メドベデワの70.56点に次ぐ65.09点だった。

 スケートカナダの翌日、山下は試合をこう振り返った。

「やっぱり全然シニアになじめていないというか、まだ追いついていない部分がたくさんあったので、もっと練習しないといけないなと思いました。スケーティングの質だったりとか、曲の取り方だったりとか、(コーチから)すごく言われていて、でもやっぱりシニアの方たちと滑ってみて、それ(課題)がもっとよくわかりました」

 山下は浅田真央を指導した山田満知子コーチの秘蔵っ子で、現在は山田コーチの右腕として宇野昌磨らの指導を受け持っている樋口美穂子コーチのもと、日々の練習に励んでいる。同門の兄弟子である宇野昌磨を、「スケーターとして目標にしている」と公言しており、宇野のスケーティングや表現力をお手本にしながら練習に取り組める好環境にいることが、その急成長を後押ししているのは間違いない。

 今後、さらにレベルアップするためには何が必要か。樋口コーチは次のように語っている。

「とりあえず殻を破って、もうちょっと変わらないとシニアでは戦えないよとずっと言い続けているけど、なかなかできない。いつも(自分から)怒られているんですけど、今回はうまくいっちゃっただけです。割と本番にうまくいってしまう、運のいい子なんです。でも、それではダメで、『自分の力で勝ち取らないといけない』と言いました。

 今回の出来は120点くらいでジャンプがよかった。いまはまだ若いから勢いでいけるけど、今後はちゃんと地盤を作らないと、いざという時に落ちていくと思います。まだ何も苦労していないので、もうちょっと苦労しないといけないかなと思っています」

 期待をかける分だけ、厳しく指導をしているようだ。次戦は11月16日〜18日のロシア大会。ここで連続して表彰台に上れば、GPファイナル初出場の可能性も広がってくる。

「GPファイナルは目指せるとは思えないですけど、でもロシア大会でも自分の精一杯ができたら、ファイナルには届かなくても、いい結果になるんじゃないかと思います」

 いつもどおり、ノープレッシャーで挑むことができれば、結果はついてくるに違いない。

著者:辛仁夏●文 text by Synn Yinha photo by Getty Images


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