阪神・福留の野次にも負けず。クラブチームの大和高田がジャイキリ達成

阪神・福留の野次にも負けず。クラブチームの大和高田がジャイキリ達成

「試合途中で、(福留)孝介に『ちゃんと指導しとんかい?』と野次られましたが、終わってみれば会心のゲームでした」

 大和高田クラブの佐々木恭介監督は、そう笑う。

 社会人野球の日本選手権。全日本クラブ選手権覇者として出場3回目の大和高田クラブが、1−0でJR四国を破り、2009年以来となる白星を挙げた。

 JR四国の先発左腕・岡田律のチェンジアップに、6回まで1安打と苦しめられる。この日京セラドームには、佐々木監督がプロ野球・中日のコーチ時代から親交のあった福留孝介(現・阪神)が応援に訪れており、スタンドから手厳しい激励を受けたのはこの間だ。

 大和高田も新人左腕・松林勇志が無失点と踏ん張り、0−0の7回裏。大和高田は4番・廣井亮介のヒットと、村上直也の二塁打で先制し、8回以降は小刻みな投手リレーでJR四国の反撃を防戦。クラブチームでありながら、企業チームを倒すジャイアントキリングを遂げたわけだ。佐々木監督は言う。

「今日は大和ガスの社員や地域の人たち、5000人近くが応援に来てくれた。恩返しができたと思います」

 ある年代以上の野球好きにとっては、佐々木恭介という名前はなじみがあるだろう。社会人野球の新日鐵広畑から1972年、当時の近鉄バファローズ(現・オリックス)に入団し、78年には首位打者を獲得した外野手だ。79年、広島との日本シリーズでは、あの『江夏の21球』というドラマで、主要な登場人物となっている。96〜99年には近鉄の監督。2015年に大和高田クラブの副部長、翌16年から監督となった。

 今季のクラブ選手権で自身初優勝を果たし(チームは4回目)、かつて近鉄が本拠地としていた京セラドームへの”里帰り”が実現したわけだ。

「就任当初は、大変だったですよ」

 大会前のある日。大和高田のグラウンドを訪ねると、佐々木監督はそう切り出した。社会人からプロでプレーし、指導者としてもプロ、大学、女子プロとさまざまな水準を経験した。その目から見て、クラブ野球のレベルはどう映ったのか、という質問に対してだ。

「クラブ野球に関しては、企業よりは相当落ちるやろうな、という印象を持っていました。基本的には大卒を採用するわけですが、当然、プロや社会人の強豪からは声がかからなかった選手たち。実際に現場をあずかると、教えることがたくさんありました。

 ただ考えようによっては、それだけ伸びしろがあるということ。また、大学トップレベルはときとして思い上がりもあるものですが、謙虚な選手ばかりですから、吸収力もあります。だから今では、能力は明らかに企業が上でも、やり方次第では勝つこともできると考えています」

 そもそもクラブチームとは、(公財)日本野球連盟のホームページから一部抜粋すると、以下のようになる。

『社会人野球には、以下の2種類があります。1 会社登録チーム2 クラブ登録チーム 会社や地域、出身校等を背景とした仲間が集まって結成され、その多くは、個人会費や後援会組織、地元自治体等からの支援により運営されています。また、近年は、一企業または複数の企業及びその社員が主体となって、その地元からも広く選手を募集し、結成されたチームもあります』

 つけ加えれば、強豪企業チームなら平日は午後から練習、強化期間ともなると終日練習が一般的だが、クラブチームは各選手が所属企業で終日勤務し、全体練習は週に数日、というのが基本である。

 おもに大和ガスのほか、複数の地元企業に選手が勤務する大和高田でも、平日の練習は月、水、金のみ。水曜だけは15時までの勤務だが月、金は18時までの仕事を終えてからだ。となると、素材にも練習環境にも恵まれた企業チームに勝つのは並大抵ではない。ざっくり言うと、高校野球の強豪私学と県立普通校のような力関係だと思えばいいだろう。

 大和高田は、創部した97年にすぐにクラブ選手権で4強入りすると、01、02年連覇を達成。09年には、日本選手権でTDK、三菱重工神戸に勝ってベスト8まで進出し、その実力は企業チームと遜色ないと言われるクラブチームの雄となった。

 都市対抗予選でも、例年のようにジャイキリを遂げており、10年には強豪並みいる近畿予選を勝ち抜き、東京ドーム初出場を果たしている。佐々木監督は言う。

「クラブといえども、企業に伍(ご)して前頭5枚目くらいまではきているかな。つまり大関、横綱と当たる番付です。大それたことは考えませんが、相撲ならば低く当たって前褌をつかみ、懐(ふところ)に入り込み、時には猫だましだったりと、それなりの戦い方はできる。

 そこで大切になるのが、準備です。平幕が大関と当たれば、その取り口を徹底的に研究するでしょう。同じように相手のデータを分析し、映像をじっくり見て、弱いところを攻める。たとえばポジショニングなども、ハタからは『よう、あんなとこ守らせるな』というくらい大胆に動かしますよ。おかげで、完全なヒットコースが野手の正面だったりしますから」

 昨年のクラブ選手権では、ライバル・和歌山箕島球友会と0−0のまま延長に突入し、10回表に得点しながら逆転サヨナラ負けした。箕島の左腕・和田拓也に9回までわずか2安打に封じられたのが最大の敗因だった。

 だが「あの悔しさを忘れるな」と挑んだ今季は、やはり決勝で対戦した箕島に、同じタイブレークの末に9−7と勝利し、4回目の優勝を果たしている。これも、準備。「まずは打倒・企業より、打倒・和田と取り組んだ」(佐々木監督)という1年が、6回途中までで5点を奪い、和田をマウンドから引きずり下ろすという結果につながったわけだ。

 そして、この日。今年の都市対抗で優勝候補のHondaを破ったJR四国を、堂々と寄り切った。

 さあ、2回戦は佐々木監督の古巣でもある新日鐵住金広畑との対戦。都市対抗で2回の優勝がある古豪だが、「野球は、何が起こるかわかりませんよ」と4番の廣井がニヤリと笑う。

 06年夏の甲子園。智弁和歌山は、8−4とリードしていた9回表、帝京に8−12とまさかの逆転を喫するのだが、9回裏、5点を奪ってまさかまさかの再逆転という球史に残るサヨナラ勝ちを演じた。まさに、「野球は何が起こるかわからない」試合だった。ちなみに廣井は、その時の智弁和歌山の4番打者であった。

 9年前に日本選手権ベスト8という快進撃を見せた大和高田クラブ。果たして、再現は起こるのか。大いに注目だ。

著者:楊順行●文 text by Yo Nobuyuki


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