J1連覇の川崎フロンターレが示す「日本らしいサッカー」の方向性

J1連覇の川崎フロンターレが示す「日本らしいサッカー」の方向性

◆福田正博フォーメーション進化論

 川崎フロンターレがJ1リーグで連覇を達成した。夏場以降は昨年同様に抜群の成績でシャーレ獲得まで駆け抜けたが、シーズン当初を振り返れば滑り出しは苦しいものだった。

 開幕前はJ1リーグ連覇とアジアチャンピオンズリーグ(ACL)の二冠を目指し、大久保嘉人や齋藤学を獲得するなど、意欲的な戦力補強で臨んだが、ACLのグループリーグでは上海上港(中国)、蔚山現代(韓国)に連敗スタート。約1カ月遅れで開幕したJリーグでも思うように勝ち点を積み上げられず、この時期の失点は少なかったものの、セットプレーからの失点などもあって波に乗れなかった。

 その後、ACLのグループリーグで敗退が決まると余剰戦力を整理し、昨年同様のメンバーで戦ったことで歯車が噛み合い始めた。W杯ロシア大会の中断明け以降は12勝3分3敗(11/24時点)。抜群の成績を残した背景は、彼らのスタイルがあればこそだ。

 1試合あたりのドリブル回数がもっとも少ないチームというデータが示すとおり、川崎のサッカーは、「ボールを走らせる」スタイル。選手一人ひとりの疲労度は小さく、ゲーム後半になれば体力面で相手チームよりも優り、とくに夏の猛暑のなかではそれがアドバンテージになった。

 選手個々を見れば、今季のMVPには家長昭博を推したい。移籍1年目の昨季前半はケガで戦列を離れたが、後半戦からチームにフィットして圧倒的な存在感を放った。その流れのまま今年は開幕からシーズンをとおしてチームの中心を担った。彼のキープ力による”タメ”や、ドリブルでの”推進力”、左利きならではの”リズムの変化”で攻撃にアクセントをもたらした。

 その家長に加え、ボランチに守田英正が台頭したことも大きかった。故障がちでプレーにムラのあったエドゥアルド ネット(現・名古屋グランパス)を放出できたのは、守田の成長があればこそ。中村憲剛をボランチで起用していれば、憲剛への負担が増えてパフォーマンスが低下する可能性は高かったが、守田が日本代表に選出されるまでになったことで、憲剛をトップ下で使え、それによって彼は好調を維持できたと言ってもいいだろう。

 昨季よりも総失点が減った守備面は、CBの谷口彰悟や奈良竜樹をはじめとするDFラインの安定感はもちろんだが、攻撃時のクオリティーの高まりも好影響を及ぼしていた。単にボールを保持する時間が長いだけではなく、ボールを失うにしても不用意な奪われ方が減ったのも大きかった。

 また、右SBのエウシーニョが、攻撃参加よりも攻守のバランスを取るシーンが多かったのも守備の安定につながったのかもしれない。ただ、個人的にはエウシーニョが家長と連係する攻撃に魅力を感じているだけに、そういう場面が減ったことは少しだけ残念ではある。

 チームの顔である中村憲剛は、来年で39歳になるが、まだまだ不安なくプレーできそうだし、攻守の核になる中盤には、大島僚太や守田ら若手が育っている。それだけに、気の早い話だが、来シーズンはリーグ3連覇とACL初制覇を期待せずにはいられない。そのための課題が、いかにチームとしてサッカーのクオリティーを維持しながら、選手層を厚くするかにある。

 川崎のサッカーは選手個々の能力の高さだけではなく、コンビネーションなどの連動性が生命線。レギュラーメンバー11人で戦うときのクオリティーは抜群に高いものの、そこから数名を入れ替えたときにクオリティーが低下してしまう。質を落とさずにACLとJリーグの両方を戦える最低15、16人の集団をつくれるかが二冠達成のカギだろう。この難しい課題を、鬼木達監督がどんな手腕で攻略するか興味深い。

 もうひとつが、ACLで「韓国クラブ」の壁をいかに越えるか。2008年から2017年の10年間のACLを振り返ると、下馬評では西アジアのクラブが有利と言われながら、優勝は2011年のアル・サッド(カタール)のみ。それ以外の内訳は、日本勢が浦和レッズ(2017年)、ガンバ大阪(2008年)の2度。中国の広州恒大が2度、オーストラリアのウエスタン・シドニーが1度、そして韓国勢は実に4度も制している。

 韓国勢は試合終了まであきらめないうえに、日本勢のもっとも嫌がる球際での激しい当たりやパワープレーをしてくる。その韓国勢をうまくクリアできれば日本勢が優勝してきたし、逆に今年の川崎のように韓国勢に苦戦するとACL制覇は途絶えてしまう。

 川崎は今季のJリーグで自分たちと似たスタイルの名古屋やコンサドーレ札幌、ヴィッセル神戸などには違いを見せつけたが、浦和や湘南ベルマーレ、V・ファーレン長崎のように守備を固めるスタイルのチームには苦戦している。韓国勢は後者のような戦いが得意なだけに、そこへの対応も課題になるだろう。

 川崎は、日本人の長所である技術の高さをベースにした、組織力や連動性を伸ばすことを土台にしながら、”和”をもって相手を攻略するスタイルを築いている。その川崎が、ACLのタイトルを獲ることの意味は、単に日本勢4チーム目(2018年は鹿島アントラーズ)の優勝クラブになるというだけではない。私自身は、彼らのスタイルこそ、日本サッカーが目指す方向性だと信じているだけに、3年連続出場となる2019年のACLを制してもらいたいし、アジアの舞台でもJリーグと同じように”風呂桶”を掲げてくれることを願っている。

著者:津金壱郎●構成 text by Tsugane Ichiro photo by Getty Images


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