悲劇的な結末を迎えたジュビロ磐田。J1残留のために必要なことは何か

悲劇的な結末を迎えたジュビロ磐田。J1残留のために必要なことは何か

 およそ1カ月前に行なわれたJ1第31節。ジュビロ磐田は、このときすでにJ2降格危機から脱したはずだった。

 磐田はサンフレッチェ広島に0−2とリードされながら、3点を――しかも、決勝ゴールは後半ロスタイムに――奪い返して劇的な逆転勝ち。この勝利で勝ち点を40の大台に乗せた。

 J1が18クラブによる2回戦総当たりとなった2005年以降、16位の最高勝ち点は39。すなわち勝ち点40到達は、過去の例に照らせば、J1残留に当確ランプがともったことを意味していた。

 磐田の名波浩監督も試合後は、「(J1残留の目安となる)ミニハードルを超えた。これで多少余裕が出るのかな」と話していた。キャプテンのDF大井健太郎もまた、「まだ(残留が)決まったわけではないが」と前置きしつつも、「この勝利はメチャメチャ大きい」と笑顔だった。

 しかしながら、大混戦のままシーズン最終盤に突入した今季のJ1残留争いは、これまでの常識を覆し、ノルマをクリアしたはずの磐田をも飲み込んだ。

 最終的に勝ち点41を挙げた磐田は、しかし、まさかの16位に沈んだ。この結果、J1参入プレーオフ決定戦(要するに、J1とJ2の入れ替え戦だ)に臨まなければならなくなったのである。

 最終節を前に勝ち点41で13位の磐田と、勝ち点40で16位の名古屋グランパスとの勝ち点差はわずかに1。とはいえ、両者の間には、いずれも勝ち点40で並ぶ14位の湘南ベルマーレ、15位のサガン鳥栖がおり、14位以下の3クラブすべてが磐田を上回り、プレーオフを回避するための条件は決して容易なものではなかった。

 まず、磐田が最終節で勝つか引き分ければ、自力残留(15位以上)が決定。負けたとしても、(1)鳥栖が鹿島アントラーズに勝つか引き分け、(2)名古屋対湘南が引き分け、の両方の結果がそろう必要があった。つまり、磐田にしてみれば、負けたとしても、それほど低くはない確率で残留できる可能性があったのだ。

 しかも、その最終節で磐田は川崎フロンターレから先制点を奪い、試合の残り時間は10分を切っていたのである。リードを守り切ればもちろん、同点に追いつかれても問題はなかった。

 ところが、あろうことか、83分に同点ゴールを、さらには、試合終了間際の94分に逆転ゴールを許してしまう。MF山田大記が「(試合が)終わった瞬間、ベンチの様子を見て、何となく(結果が)わかった」と話したように、鳥栖はアジア王者を相手に執念のスコアレスドロー。残留争いの直接対決も、互いに2点を取り合う激闘の末、引き分け。磐田は最後の最後で一気に順位を3つも落とし、プレーオフへと回ることになった。

「(先制したことで)精神的に緩んだということはない。1点に勇気づけられて、より守備をがんばろうという気持ちになったし、1点取られことで、ガクッときて2点目を取られたわけでもない」

 山田がそう振り返ったように、磐田は90分を通じて、粘り強く川崎の攻撃をはね返し続けた。同点に追いつかれたあとも、MFムサエフ、DF櫻内渚を投入したことで磐田の守りは安定し、ピッチ上にはこのまま引き分けで終わりそうな雰囲気が漂っていた。

 にもかかわらず、悲劇は起きた。

「いつもなら間合いを取って対応できたが、反応が遅くなって少し焦ってしまい、飛び込んで(かわされて)しまった」

 悔しそうに語るDF大南拓磨が、MF家長昭博にドリブル突破からのクロスを許すと、ボールは相手FWと体を並べるようにゴール前に滑り込んできた大井の足先に当たり、無情にも磐田ゴールに転がり込んだ。

 まさかの16位転落に、名波監督もさすがに落胆の色を隠せなかった。開口一番、「この敗戦のあと、話ができるほど人間ができていない」と言うと、「残酷なこの結果を受け止めるのに精一杯」と胸の内を明かした。

 いつもはどんな結果になろうと、落ち着いて試合を振り返る大井も、自らのオウンゴールで試合が決したとあって、この日ばかりは無言でバスへ。足早に立ち去る様子がショックの大きさを物語っていた。

 とはいえ、磐田はJ2降格が決まったわけではない。

 昨季までなら16位は、17、18位の2クラブとともに自動降格だったが、今季から規定が変わり、”幸いにもプレーオフを戦える”のだ。

 しかも、J1のラスト1枠を争う決戦は、磐田のホームゲームで行なわれ、磐田は勝てばもちろん、引き分けでも残留が決まる。条件はかなり有利なのだ。

 だからこそ、怖いのは「残留を決められなかった」というショックを残したまま、大一番に臨むことだろう。

 対戦相手の東京ヴェルディは、J2の6位からリーグ戦上位の相手を連破し、勢いに乗って磐田に挑んでくる。それだけに、「気持ちが落ちたらよくない。プレーオフがあってラッキー、くらいの気持ちで、前向きにやるしかない」(大南)。いい意味で開き直る余裕が必要だ。

 名波監督も「メンタル的に落ちないようにしたい」と言い、こう続ける。

「今季のレギュレーションに助けられたと思って、入れ替え戦(決定戦)を戦いたい」

 あまりにショッキングで、悲劇的な結末ではある。だが、J1残留を果たすためのラストチャンスは、客観的かつ冷静に考えれば、それほど厳しい条件を突きつけられているわけではない。

 ショックを引きずらずに決戦に臨めるか否か。すべてはそこにかかっている。

著者:浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki


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