プレーオフでこそ生きる、東京ヴェルディの「0−0のメンタリティ」

プレーオフでこそ生きる、東京ヴェルディの「0−0のメンタリティ」

 東京ヴェルディが、J1昇格への道に立ちふさがる関門を、またひとつ突破した。

 J1参入プレーオフ2回戦。J2で6位のヴェルディが、同3位の横浜FCを1−0と撃破。1週間前に行なわれた1回戦で、同5位の大宮アルディージャを1−0で下したのに続き、リーグ戦上位クラブを連破した。

 この2試合、ヴェルディのしたたかに勝負どころを見極める、いわば勝負強さが際立っている。

 1回戦の大宮戦は、前半こそ多くの選手が「やりたいサッカーができた」と口をそろえたように、ボールを保持して攻勢に試合を進めることができた。

 しかし、後半は退場者を出し、ひとり少ないなかで、奪った得点はセットプレー(FK)からの1点のみ。それを、必死に守り抜いての勝利だった。

 そして、2回戦の横浜FC戦では、相手の連動したプレスの前に思うようにパスをつなげず、相手選手に囲い込まれてボールを奪われる。そんなシーンが相次いだ。ボランチのMF井上潮音が振り返る。

「(横浜FCは)リーグ戦(で対戦したとき)とはまったく違うプレスのかけ方だった。自分たちの(ボールの)回し方を研究してきていた」

 だが、プレーオフの2試合を通じて、ヴェルディの選手たちに慌てる様子はうかがえない。

 J1参入プレーオフでは、90分間の試合を終えて同点の場合、延長戦やPK戦は行なわれず、リーグ戦成績上位のクラブが勝ち上がる。つまり、プレーオフ出場クラブのなかで最下位のヴェルディが勝ち上がるためには、常に勝利が求められるわけだ。

 早くゴールが欲しい――。自分たちの思いどおりに試合が進められていないときはとくに、そんな焦りが生まれても不思議はない。

 ところが、DF田村直也が「大宮戦の前半は出来すぎ」と笑い、「大宮戦から感じていたが、0−0はうちのペース」と話したように、ヴェルディの選手たちは試合展開に左右されることなく、淡々とプレーを続けることができている。あたかも、いずれやってくる勝負どころに備えるかのように。

 その点においては、ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督の采配も明確だった。

 井上が前半にイエローカードを受けていたため、「球際の競り合いでファールが多い試合だったので、2枚目を受ける危険があった」と、後半早々、井上に代えてMF梶川諒太を投入。交代カードを使って、闇雲に攻撃に重心を傾けるのではなく、まずは、退場者を出さずに落ち着いて試合を進めることを優先させる。

 そして、梶川とともに投入されたFWレアンドロに加え、74分にはFWドウグラス・ヴィエイラを送り出して前線を厚くし、勝負に出た。

 結果的に、ヴェルディは90分間では得点が奪えていない。それどころか、ラスト15分の間には横浜FCのカウンターを受け、何度か際どいピンチも迎えていた。だが、それでもヴェルディの選手たちは慌てなかった。MF渡辺皓太が語る。

「(ロスタイムの表示が)7分と出たときに、イケると思った。まだ時間はたっぷりあったので、焦りはなかった」

 はたして、値千金の決勝ゴールが生まれたのは、後半ロスタイムも残りわずかの96分。MF佐藤優平の蹴ったCKに、攻撃参加していたGK上福元直人が頭で合わせると、GKがセーブしてこぼれたボールをドウグラス・ヴィエイラが押し込んだ。

 ロティーナ監督は「すごく(両チームが)競った、感動的な試合だった」と語り、勝負どころをこう振り返った。

「ラスト15分でFWを3枚にし、(自分たちの)後ろにスペースを残して攻撃に出た。横浜FCはそのスペースを使って、2、3回の決定機を作ったが、決められず、我々はゴールを決めることができた」

 そして、ゴールが生まれたタイミングについては、「その後に相手がリアクションする時間がほとんどなかったので、運がよかった」としながらも、ゴールそのものについては、「97分間やるべきことをやり続けて生まれたゴールだった」と、選手たちを称えた。

 退場者を出して、ひとり少なくなかった大宮戦。なかなか攻撃を組み立てられなかった横浜FC戦。いずれの試合も、ヴェルディは会心の内容で連勝してきたわけではない。むしろ、思いどおりに進まない時間が多く、難しい状況を強いられてきた2試合だったと言ってもいい。

 しかし、だからこそ、0−0のまま試合を進め、相手が引き分けでもいいと守りに入った瞬間を見逃さず、勝負に出る。そんなしたたかさが際立って見える。

 引き分けでもいい相手に対し、勝たなければならないヴェルディにとっては、0−0のスコアは理屈の上では不利な状況だ。ところが、「0−0は自分たちのほうが有利」と口にする選手は数多い。理屈はともかく、彼らは0−0を――このままのスコアで終われば自分たちの敗退となる状況を、恐れていないのだ。

 だとすると、次のジュビロ磐田との最終決戦、すなわち、J1参入プレーオフ決定戦もどんな結末を迎えるかわからない。

 試合は磐田のホームゲームで行なわれ、引き分けの場合は磐田がJ1残留。そんな規定ばかりでなく、客観的に戦力を見比べても、磐田有利は動かしがたいのは事実だが、それゆえ、磐田が平常心で戦うのは難しいとも言える。まして0−0のまま、試合が終盤までもつれれば、なおさらだろう。

 0−0のメンタリティ。今季のプレーオフで猛威を振るう、その武器が最大限に生かされる展開になるようなら、波乱が起きる可能性は十分にある。

著者:浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki


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