なぜネイマールは敵をつくるのか。チームメイト、監督、税務署…

あなたの知らないネイマール(3)

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 たび重なる裁判沙汰や監督、チームメイトとのトラブルも、残念ながらネイマールの無視できない一面だ。ここでは有名な武勇伝をいくつか挙げてみた。


確執が伝えられるエディンソン・カバーニと(左)とネイマール photo by Getty Images

◆エディンソン・カバーニ
 ネイマールはクラブチームでもっと多くのゴールを挙げたいと思っている。しかしパリ・サンジェルマン(PSG)でPKを蹴るのはカバーニだ。ある試合でネイマールは、監督からの指示も、カバーニも無視し、勝手に自分でPKを蹴ってしまった。それ以来、カバーニとの間はうまくいっていない。昨年11月に行なわれたブラジルとウルグアイの親善試合で、カバーニは強烈なファウルをネイマールに仕掛けた。

◆チアゴ・シウバ
 ブラジル代表でネイマールが悪態をついたとして、少し前からチアゴ・シウバとの間に微妙な空気が流れている。

◆ドリヴァル・ジュニオール
 これまでで一番大きな喧嘩は、ネイマールがまだサントスでプレーしていた頃のことだ。ネイマールは監督のドリヴァル・ジュニオールと対立。試合でも彼が監督をリスペクトしてないのは歴然としていた。

 そしてそれから数週間後、監督は解任された。ネイマールの希望だったという。ジャマイカを初めてW杯に導いたことで有名なレネ・シモンエス監督は、かつてサントスと対戦した時、「とても驚いた」と言う。

「私はネイマールの態度にがっかりしました。試合中に監督にあんな態度をとる選手を初めて見ました」

 こうしてネイマールは2011年、監督を辞めさせることのできる選手として悪名が馳せてしまった。

◆ウナイ・エメリ
 昨シーズンもネイマールは監督解任劇にひと役買っている。少なからずの人間が、「エメリがPSGを辞めさせられたのは、ネイマールといい関係になかったからだ」と証言している。エメリはネイマールではなく、カバーニをPKキッカーに任じたからだ。

◆審判
 サンドロ・メイラ・リッチはブラジルでもっとも有名な審判で、W杯2大会で笛を吹いている。彼はネイマールと裁判で争い、ネイマールは多額の賠償金を払わなければならなくなった。

 ネイマールがまだサントスでプレーしていた2012年、彼はSNSにリッチを中傷するような書き込みをしたのだ。「盗人の審判は警察に捕まってパトカーでスタジアムを後にするだろう」と。ブラジルの裁判所はリッチ審判の告発を受けて、次のようなメッセージを出している。

「リッチ氏の尊厳を傷つけた言葉にネイマールは責任を持たなくてはならない」

◆クラブW杯
 2011年、横浜で行なわれたクラブW杯決勝で、サントスはバルセロナに大敗を喫した。当時サントス所属のネイマールにはまったくいいところがなく、ケガをしたくなくて本気でプレーしなかったのだろうと非難された。しかしその数年後にある事実が判明し、ネイマールはブラジルとスペインの裁判所で告発に対して弁明をしなければならなかった。その事実とは、日本行きの前に、「ネイマールはすでに対戦相手のバルセロナと契約を結んでいた」というものだ。

◆医者
 ネイマールの息子ダヴィ・ルッカが誕生する時に、母親のカロル(結婚はしていない)を診ていた医者もネイマールを訴えている。その理由は診察代の未払いだ。ネイマールは払っていないことは認めているが、その理由は金額が不当であったからと述べている。それに対し医者の方は、無事に出産するために必要なものだったと真っ向から対立している。

◆税務署
 ネイマール家は父も息子も、2011年から2013年にかけて税務署に虚偽の申告をしたとして訴えられており、いくつかの差し押さえを食らっている。2017年には、ネイマールは300万ドル(約3億3000万円)の罰金の支払いを受け入れている。

 しかし税金未払いで差し押さえをくらった数週間後、ネイマールは車庫でフェラーリと写真を撮りインスタグラムにアップした。そこには「ドリーム」の文字が。あまりにも非常識だと非難を浴びた。

◆サポーター
 リオ五輪で金メダルを勝ち取った直後、ネイマールはメダルを胸にサポーターのもとへ走り寄ったが、その後、2人のサポーターとケンカを始め、警官が止めに入らなければならなかった。ネイマールは「俺がプレーしていた時、お前らは俺の悪口を言っていただろ!」と叫んでいた。

◆バルセロナ
 バルセロナからPSGに移籍した時のネイマールの行動を、多くの人は裏切りと感じている。ネイマールは契約違反を犯してPSGとサインを交わしたのに、バルセロナに430万ユーロ(約5億5000万円)のボーナスの支払いを求めて裁判を起こしたのだ。バルセロナはボーナスを支払わないと決定した。

◆レンヌ
 2018年1月、PSG対レンヌの試合でのネイマールの行動も波紋を呼んだ。ネイマールは足を痛めて倒れていたレンヌの選手に対し、起き上がれるよう手を差し伸べた。しかし相手の選手がその手をつかもうとすると、即座に引っ込め、笑いながら去っていった。まるで小学生のようないたずらだが、相手に敬意を欠くと非難された。

◆スポンサー対応?
 ネイマールがあまりにも常識を超えた行動をするため、何度もこんな疑問が持ち上がっている。ネイマールのあの振る舞いは、彼自身の自然なものなのか、それとも実は影のスポンサーがいて、彼がなにか奇矯な行動をするたびに金が支払われているのではないか、というものだ。

 それというのも、ネイマールはスポンサー対応と思われるような行動を何度もしているからだ。たとえば2018年のリーグカップ準決勝で、ネイマールは決勝ゴールを決めた後、シューズを脱いで頭の上に乗せたのだ。友人への誕生日祝いのパフォーマンスだと本人は言っているが……。

◆詐欺
 ネイマールをサントスから獲得する際、バルセロナは1710万ユーロ(約22億円)をサントスに、4000万ユーロ(約52億円)を交渉賃としてネイマールの父親が経営するN&N社に支払ったとされている。しかし、その際に詐欺的行為があったとして訴えられている。

 バルセロナが実際に支払った額は総額8620万ユーロ(約112億円)であることが判明。ネイマールの権利の40%を保有していたブラジルのDISという会社は、その差額分を求めてネイマールとその両親、バルセロナの元会長などを提訴した。ネイマールの父親は「クラブ同士の問題」としているが、もしこのまま裁判が進めば、ネイマールは懲役6年を求刑される可能性もある

◆道徳ボーナス
 PSGはネイマールに対して、1年間、監督を公の場で非難しなければ70万ユーロ(約9000万円)の、そして毎試合、観客に挨拶をすれば40万ユーロ(約5000万円)の”道徳ボーナス”を支払っている。そして最近では、そのこと自体が非難の的となっている。

 ネイマールは、サッカーがただの戦いではなく、ショーでもあることを、幼い頃から肌で知っていた。これは当時においては彼の大きなアドバンテージであった。ピッチに降りるときは、自分の持てるすべての才能を使って、観客が沸くようなプレーとゴールをしようとし、そのことが彼をスターにした。人々はネイマールを見に行くようになった。心躍るサッカーを-約束してくれるからだ。

 しかし、人を楽しませようとするあまり、時にふざけでいるようなトリッキーなプレーをすることで、ネイマールは敵を作った。翻弄された末にゴールを奪われたDFは、それを侮辱と感じたからだ。ネイマールに馬鹿にされていると感じたのだ。そして何が何でもネイマールを止めるために編み出したのがラフプレーだった。

 それでもネイマールは、観客を楽しませるために、スペクタルなサッカーを続けた。相手DFは彼を憎んだが、観客は彼を愛した。チームが勝たずとも名を挙げた。勝敗に関係なく、誰もがネイマールの芸術を楽しんだ。

 スペクタクルなサッカーは両刃の剣でもあった。トップチームに入ってから、彼は敵の再三のラフプレーから自分を守らなければならなくなった。それに対抗するには強靭なフィジカルを持つか、よりスピードをつけるか。ネイマールはスピードを選んだ。

 それでもダメな時は、悪質なタックルを受ける前に倒れることにした。スペクタクルな自分のサッカー守るため、ケガをしないため、ネイマールは倒れるようになった。やがて審判はネイマールの転倒に疑いを持つようになり、倒されても相手のファウルをとらないようになった。

 こうしてネイマールはシミュレーションの常習犯のレッテルを張られてしまった。それがかの有名な「ネイマール・チャレンジ」(突然倒れて、地面を転げまわる)を生み出した要因のひとつでもある。

 彼は世界最高の選手になるよう、クリスティアーノ・ロナウド(ユベントス)、リオネル・メッシ(バルセロナ)の後継者となるようプログラムされて生きてきた。しかし26歳になっても彼はいまだその域には達していない。メッシはその年齢ですでにバロンドールを4回獲得している。そして彼の後から、キリアン・ムバッペ(PSG)などのより若い世代が追い上げてきている。

 サントス時代のネイマールはまぎれもなく輝いていたが、その後のチーム選びは失敗だったと言わざるを得ない。バルセロナでの3年間は、ずっとメッシの陰にいることを強いられた。PSGには2億2200万ユーロ(約288億円)という前代未聞の金額で移籍したものの、カバーニがいた。彼と衝突することが多いネイマールは、扱いづらい選手というレッテルを貼られてしまった。

 ブラジル代表でも、勝ち取ったのはコンフェデレーションズ杯やオリンピックなど、サッカーの世界では二流のタイトルだ。W杯では常に失敗している。優勝した2016年の自国開催のリオ五輪でも、いいプレーを見せていたものの、準々決勝で深刻な負傷をした。ロシアW杯では大会前にケガをし、100%の体調では臨めなかった。

 5年前にバルセロナに移籍した時、ネイマールはあと1、2年で世界のトップになると思われていた。しかし2018年、FIFAの最優秀選手の候補10人に彼の名前はない。W杯の失敗も大きいが、候補者のなかにはモハメド・サラーのように、W杯ではたいして活躍しなかった選手の名もあるから、それだけが原因ではないだろう。

(つづく)

著者:リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko


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