日大三、史上最高の好素材。井上広輝はバリバリのドラ1候補となるか

日大三、史上最高の好素材。井上広輝はバリバリのドラ1候補となるか

 2017年の日大三には、井上大成というサードの好素材がいた。同学年に櫻井周斗(DeNA)、金成麗生(かなり・れお/トヨタ自動車)とネームバリューのある逸材がいたため大きな話題にはならなかったが、同年夏には侍ジャパンU−18代表に選出され、清宮幸太郎(日本ハム)らとプレーした実力者だ。現在は青山学院大に進んでいる。

 井上を語る上で欠かせないのは、スローイングの美しさである。とくに試合前のシートノックで見せた素晴らしい送球は、今もまぶたに焼きついている。三塁線のゴロを捕球し、三塁ベースを踏んでから助走をとって一塁に投げる。右腕が弓の弦のようにしなり、ファーストに向かって加速するように伸びていく球筋は爽快だった。このスローイングが見たくて、日大三の試合はいつもシートノックから楽しみにしていた。

 高校時代の井上に何度か取材をするなかで、2017年5月のある日に日大三のグラウンドを訪ねたことがあった。その日、グラウンドではBチームの練習試合が行なわれていた。

 二軍クラスのBチームとはいえ、日大三に入学するほどの選手なのだからレベルは高い。なかでも先発マウンドに上がった右腕に目を奪われた。

 フォームのバランスがよく、腕の振りがとにかく柔らかい。体の線が細いからか、余計にしなりが際立って見えた。まだ体ができておらず、短いイニングの登板で失点も重ねたものの、結果はこの際どうでもよかった。たまらず案内係を務めていた部員に投手の名前を尋ねると、「井上です」という。

 井上という選手がほかにもいるのか……と漏らすと、その部員は「井上さんの弟です」と教えてくれた。さらに仰天したのは、この井上の弟・広輝が入学したばかりの1年生だったことだ。

 兄・大成に聞くと、兄弟仲はいいそうで「広輝はいいピッチャーになると思います」とうれしそうに語っていた。いいピッチャーどころではない。投手としては日大三史上最高の素材ではないか。

 広輝は小学生の時にソフトボールをプレーし、中学から硬式野球を始めた。海老名南リトルシニアの中込明宏監督が日大三出身ということもあり、兄の後を追うように日大三に進学した。

 1年夏から櫻井、金成、大成ら錚々たるメンバーのなかで背番号20をつけてベンチ入り。だが、夏から秋にかけて登板機会は多くなかった。練習試合で投げたとしても、1〜2イニング程度。チーム内にはほかにも好投手がいたこともあるが、小倉全由(まさよし)監督がとにかく大事に、慎重に広輝を使っていることがうかがえた。

 広輝が初めて脚光を浴びたのは、1年秋の最後の公式戦・明治神宮大会だ。日本航空石川(石川)戦でリリーフに立った広輝は、全国屈指の強打線を相手に快投を見せる。6イニングを投げて5安打、8奪三振。ストレートの球速は140キロを超えた。最後は落差の大きなチェンジアップを控え捕手が捕逸し、サヨナラ負け。それでも初めての全国舞台で鮮烈な印象を残した。

 春に見たときよりも明らかにボールに力強さが増していた。本人に聞くと、「高校に入って毎日練習するなかで、自分の長所が生かせるようになってきた」という。

 広輝の長所は腕の振りのしなやかさかと思いきや、本人は「前腕の強さ」を挙げる。ヒジから先、手首にかけて人並外れて強いのだという。これは幼少期にソフトボールで大きめのボールを投げていた影響ではないか、と本人は自己分析する。この前腕の強さをピッチングに生かすコツを覚え、中学時代は最速138キロだった球速が、わずか1年で145キロまで上がってきた。

 翌2018年春のセンバツ大会でも、初戦の由利工(秋田)戦で6イニングを無失点に抑える。ストレートは最速147キロを計測するなど、広輝は順調にステップを重ねた。

 だが、好事魔多し。甲子園帰りの春季東京都大会の試合中、井上は右ヒジを痛めてしまう。前腕の強さを生かして投げているうちに、いつしか上半身の力に頼ったフォームになっていたのだ。

 ヒジを痛めてからは、下半身の強化に力を注いだと広輝は振り返る。

「ケガを経験したことで、下半身をしっかりと使ったケガをしないフォームを作らないといけないと考えるようになりました」

 故障明けの2年夏は西東京大会不出場ながら、チームは甲子園に進出。状態が上向いた甲子園では2回戦の奈良大付(奈良)戦で先発。大事をとって3イニングながら、無安打無失点に抑えた。その試合で広輝は最速150キロを計測している。

 とはいえ、本人には「まだ本調子ではない」という実感があった。新チーム初の公式戦となる秋季東京都大会では、1回戦で伏兵の目白研心に5対7で敗退。広輝は途中リリーフとして登板して無失点ながら、爆発的な力を見せることはできなかった。

 2018年11月5日にダイワハウススタジアム八王子で行なわれた、東京都選抜(キューバ遠征)のセレクションに現れた広輝は「まだ全力で思い切り投げられていないので、今は8割くらいです」と自分の状態について語っていた。

 それでも、同じく最速140キロを超える谷幸之助(関東一)や187センチでの長身右腕の渡邊充(工学院大付)ら好素材が投げ込むブルペンでも、頭ひとつ抜けた快速球を投げ込んでいた。

 ここまで金の卵を孵化させるために、大事に育成されてきた広輝だが、甲子園に出場するチャンスはあと一度しかない。チームのためにも、自分の将来のためにも、2019年は正念場の年になる。東京都選抜のセレクションが終わった後、広輝はこんな決意を語った。

「春までにどんどん球数を増やして、自分のピッチングができるようにしていきたいです。春、夏は完璧に抑えていきたいですね」

 チーム内には同じくドラフト候補で、最速148キロをマークする廣澤優や、やはり140キロを超える平野将伍という大型右腕もいる。とくに廣澤はスケールにかけては広輝をしのぐものを持っている。広輝とともに、春の公式戦でスカウト陣の目を引くに違いない。

 見る者をうっとりさせる、兄譲りのしなやかな腕の振り。はたして広輝は、この夏に甲子園で成長した姿を披露できるのだろうか。もし今夏の甲子園マウンドに広輝が立っているなら、その頃には「ドラフト1位候補」と呼ばれていても不思議ではない。

著者:菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro


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