2015年ラグビーW杯組サバイバル。立川理道は窮地に立たされた

2015年ラグビーW杯組サバイバル。立川理道は窮地に立たされた

 4年前、南アフリカ代表を破るジャイアントキリングを成し遂げた立役者たちが、2019年ラグビーワールドカップ出場へ向けて窮地に立たされている。

 2月2日、岐阜メモリアルセンター長良川競技場で「バローグループ presents 日仏ラグビーチャリティマッチ2019〜FOR ALL 復興〜」が行なわれ、トップリーグ選抜チームが世界的強豪クラブのASMクレルモン・オーヴェルニュと激突。試合は29−50でトップリーグ選抜チームが敗れた。

 そのトップリーグ選抜チームで、CTB(センター)の12番を背負って先発出場を果たしたのが、昨年12月で29歳になった立川理道(はるみち/クボタ)だった。

 立川は身長181cm・体重95kgの恵まれた体格を持ちつつ、スキルが高くてタックルも強い。天理高〜天理大時代から注目され続けた逸材だ。2012年に大学を卒業すると、すぐに日本代表を率いるエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)から声がかかり、これまで積み上げた代表キャップは55。2015年のラグビーワールドカップでは日本の3勝に貢献し、エディージャパンを支えた選手のひとりだ。

 2016年にジェイミー・ジョセフが日本代表HCに就任しても、立川は共同キャプテンのひとりに指名された。さらにサンウルブズでも共同キャプテンを務めるなど、まさしく日本ラグビーを引っ張ってきた「顔」とも言える選手である。しかし、昨年6月の試合を最後に日本代表の試合に出場しておらず、現在は日本代表候補メンバーやサンウルブズからも外れている。

 そんな状況のなか、各国の代表選手が集うフランス強豪チームと対戦する機会を経た立川は、「絶好のアピールの場として考えていた」という。試合後は「フィジカルに戦ってくる相手に食い込まれたり、抜かれたりとディフェンスは課題が残っているが、ボールを前に持ち込み、細かいパスで相手を抜くこともできたので、自分としても満足できた」と振り返った。

 アタックではパスでトライを演出するなど、立川らしいプレーが披露できた。しかしディフェンスでは、フィジカルな相手に対して現在の評価を覆すほどの好パフォーマンスだったとは言いがたい。

 日本代表の前指揮官ジョーンズHCは、複数の選手がFWでもBKでも関係なく狭いエリアで連動するラグビーを目指していた。そういう方向性とマッチしていたため、SO(スタンドオフ)とインサイドCTBの両方でプレーできる立川は高く評価されていた。

 たが、「ボールをスペースに運ぶラグビー」を信条とするニュージーランド出身のジョセフHCは、立川をインサイドCTBとしか見ていない。SOのファーストチョイスは、広い視野とスキルを合わせ持つ田村優(キヤノン)であり、2番手は松田力也(パナソニック)だ。また、インサイドCTBではラファエレ ティモシー(コカ・コーラ)が定位置を確保しており、若手の梶村祐介(サントリー)の台頭もある。

 昨年10月の会見で立川の名前が日本代表になかった時、ジョセフHCは珍しく名指し、こう語った。

「彼の最近のパフォーマンスが我々のレベルまで達していなかった。12番としてのフィジカル、ディフェンス力が不足している。苦渋の決断だが、厳しいタフな判断は自分の任務であり、日本ラグビーのためでもあると思っています。トップリーグなどでの活躍で、彼が逆境を跳ね返してくれると信じています」

 また、プレーだけでなくリーダーシップという面でも、立川の必要性がやや薄れてしまったことも否めない。キャプテンのFL(フランカー)リーチ マイケル(東芝)を筆頭に、SH(スクラムハーム)流大(ながれ・ゆたか/サントリー)やFL/LO(ロック)姫野和樹(トヨタ自動車)の存在感もさらに増してきた。

 一度下された評価を覆すことは、なかなか難しい。立川は所属チームのクボタの理解を得て、トップリーグにはSOではなくインサイドCTBで試合に出続けた。そして今回、チャリティーマッチに出場するチャンスを掴み、猛アピールを試みたというわけだ。

 立川は、昨年12月に発表された2019年ワールドカップ日本代表第3次トレーニングスコッド38名、それに準じるNDS(ナショナル・ディペロップメント・スコッド)8名、さらに今年のサンウルブズにも呼ばれなかった。そして、2月4日からワールドカップに向けて本格的に始まった強化合宿に追加で呼ばれた選手のなかにも、立川の名前はなかった。

 2019年ワールドカップ出場に向けて、今、立川は限りなく難しいポジションに立たされている。

「ジェイミーが思っているパフォーマンスに達していないので、(それを)受け止めてやっていきたい。これからは(試合がなく)アピールすることは難しいが、何があるかわからないので、いつ(日本代表やサンウルブズに)呼ばれてもいいように準備したい」

 立川本人も厳しい状況は十分に自覚しており、振り絞るように心境を語るのが精一杯だった。

 2015年のワールドカップに出場した選手は31名。現在そのメンバーのうち、4名はコーチなどに就任して、すでにプレーしていない。2大会連続でワールドカップに出場できそうな選手はどのくらいか。

 今季のトップリーグを制した神戸製鋼でのパフォーマンスが評価されて、PR(プロップ)山下裕史とSH日和佐篤(ひわさ・あつし)が日本代表候補に復帰を果たした。そのふたりを入れても、2019年ワールドカップに出場する可能性の高い前回大会経験者は、ざっと11名くらいだろう(昨年7月に暴行事件を起こし、ニュージーランドで裁判中のNo.8アマナキ・レレィ・マフィが選ばれれば12名)。

「忍者ポーズ」「ルーティーン」で日本中にラグビーブームを巻き起こしたFB(フルバック)五郎丸歩(ヤマハ発動機)は2016年以降、一度も日本代表にメンバー入りしていない。また、昨年まで日本代表として戦っていた代表キャップ37のLO真壁伸弥(サントリー)、2015年大会でチーム最年少選手だった31キャップのWTB/FB藤田慶和(パナソニック)も最近は呼ばれておらず、置かれている状況は立川と同じと言えよう。

 現在イングランド代表を率いるジョーンズHCは、「(2019年ワールドカップで日本代表メンバーの)6〜7割くらいは2015年のメンバーで戦うべき」という私感を述べていた。だが、このままの流れでいくと、前回大会経験者は3割ほどになる。

 もちろん、結果的に勝てば何の問題もない。しかしながら、自国開催というプレッシャーのかかるワールドカップだからこそ、前回大会経験者や日本代表キャップの多い選手を重用すべきではないかと、個人的には思ってしまう。

 現状、ワールドカップで立川の勇姿が見られる可能性は低くなってしまった。だが、もう一度、桜のジャージーを着た愚直な彼のプレーを見たいと思うファンも多いはずだ。私も、そのひとりである。

著者:斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji


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