ガンバ大阪は若手が自信満々。18歳の中村敬斗も「目に見える結果を」

ガンバ大阪は若手が自信満々。18歳の中村敬斗も「目に見える結果を」

 風を切り裂く軍用機の音が晴天にとどろく。沖縄の海に面したグラウンドでガンバ大阪の練習の始まりを待っていると、ここではさして珍しくない轟音がまた響いた。

 1月31日、前日に東京ヴェルディと練習試合をしたガンバ大阪は、午後に軽めのメニューを実施。今年から就任したスペイン人のフィットネスコーチが流暢な日本語でトレーニングを取り仕切り、選手たちはバランスボールや数種の重り、ラバーチューブなどを使って体幹を鍛える。ベテランから若手の選手まで、全員が黙々と取り組んでいた。

 その後はプレスキックをバーに当てたり、的に入れたりするレクリエーション的な練習が続き、最後にふた手にわかれてミニゲームをして終了。選手たちはそれぞれに仲間とリフティングをしたり、外周を走ったり、ストレッチをしたりして、ピッチを後にしていく。

 実はその2日前、U−20日本代表の強化試合(対沖縄SV)が同じく沖縄で行なわれ、ガンバからは4選手が招集された。そのなかで唯一のアタッカー、中村敬斗は中盤の右サイドに入り、攻撃の中心として活躍。スケジュールの都合で最後まで観ることはできなかったが、味方からよくボールが集まり、2本目の試合ではゴールも奪っていた。

 中村は昨季、17歳でJ1開幕戦に途中出場し、3月のルヴァン・カップの浦和レッズ戦でファーストチーム初得点を記録。その後、チームは不調に陥り本人も出番を失ったが、終盤戦に戻ってくると、第33節V・ファーレン長崎戦では失点につながった自らのミスを帳消しにする決勝点を挙げた。自身のJ1初ゴールが、クラブ史上最多タイとなる連勝記録(9連勝)に結びついた。

 ピッチ上の堂々たる姿はとても高校生には見えず、大きなストライドのドリブルや迫力あるランは行く末に期待を抱かせる。そして、話ぶりもいい。

 昨年3月に行なわれたFC東京とのアウェー戦の後に、初めて彼に声をかけた時、中村はU−21日本代表の南米遠征から帰ってきたばかりだった。それでも後半の残り約15分から途中出場したため、「長旅の疲れは?」と聞いたところ、「完全には取れていないと思います。でも、そこも含めてプロですよね。それに僕みたいな若い奴が『疲れた』なんて言っていられないですよ」と答えた。

「高校生でプロの世界に入って戦う日々だけど、臆することはない?」との質問には、「これだけ試合に出してもらっているのだから、ビビって自分の武器を出さないなんて、ありえない。ミスしても、気にせず次。そう思うようにしています」と話した。

“優等生で好青年”のようにも見えるが、芯は強い。奢ったところもないけれど、すでに普通とは違うキャリアを歩み出した自分の力を信じている。そんな印象を受けた。

 今回はそれ以来の再会を楽しみにしていた。沖縄の太陽が傾き始めた頃、身支度をして出てきた中村に話しかけ、この1年で彼自身が感じている成長について尋ねた。

「宮本(恒靖)監督から個人的にも動きを教わっているので、ボールの受け方とか、オフザボールの動きとか、そのあたりはしっかり学べています。ガンバはレベルが高いので、練習から100パーセントでやっていくだけです」

続けて、「昨年の3月に話した時、年齢の近い(キリアン・)ムバッペに追いつきたいと言っていましたが、その気持ちは変わらない?」と尋ねると、表情を崩して「ちょっと次元が違う選手になっちゃいましたよね」と笑った。

「(ムバッペは)エグいですよね。バロンドール級ですし。まあでも、タイプも近いといえば近いので、目標にしています。最近だとドルトムントの7番(ジェイドン・サンチョ)にも注目しています。彼は同い年で同じポジション。あそこまでやっているのはすごいですよね。刺激になります。今年は自分も目に見える結果を多く残したいです」

 18歳になった中村はそう言って、ファンサービスへ向かっていった。

 今のガンバには彼以外にも、活きのいい若者が多い。そんな若手の台頭は頼もしいはず。そう思い、チームリーダーのひとりである倉田秋の足を止めた。一般的に、現代の若者は「消極的」と言われることもあるが、ガンバの若手はひと味違うと言う。

「このチームの若手はそんなことない。自信満々なのはいいけど、結果がついてきてないというか、それに見合ってないところもあるくらい。だから時には、足元を見つめさせる必要もあるんかな。今のこのチームには強く言う人がいないので、自分がそんな役回りもするべきなんかなと思っています」

 30歳の背番号10は、大阪のイントネーションをつけてそう言い、ニヤっと笑った。

「でも、ガンバの若手はめっちゃ向上心があるし、このまま成長していってくれればいいですよね。ガンガン結果を出してくれたら、オレらも刺激をもらえます」
 
 今のこのチームには、若手とベテランのどちらにも面白い存在が多い。宮本監督のもとで一体感を高めているように見える関西の名門が、新シーズンに狙うのは「タイトル。絶対に」と倉田は言う。

「去年は、天国と地獄を味わったので。終盤で9連勝できていい感じで終われましたけど、結局は9位。全然よくなかったんで、今年は最初から最後までぶっ飛ばしていけるように、今からしっかり体を作っていきたいです」

 元気な若者たちと存在感の大きな年長者たち。宮本監督の真価が問われるシーズンに、彼らは5年ぶりのリーグタイトルを手にすることができるだろうか。

著者:井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi


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