スペインの目利きが日本の全選手を個人評価。堂安、南野の課題は?

ミケル・エチャリの日本代表個人評価・前編を読む>>

「アジアカップ、日本は試合ごとに戦い方を変えながら勝ち上がっている。その順応力は目を見張るものがあった。選手の戦術能力の高さとも言い換えられるだろう」

 “スペインの目利き”ミケル・エチャリ(72歳)は、準優勝に終わった日本のアジアカップをそう振り返っている。

 エチャリはハビエル・デ・ペドロ、シャビ・アロンソなどの才能を発掘するなど、その眼力には定評がある。また、選手へのアドバイスにも優れる。若き日のアントワーヌ・グリーズマン(アトレティコ・マドリード)には「ファーポストに入れ。もっと簡単に点が取れる」という言葉を贈っている。現在、フランス代表FWはファーに流れ、マークを外してからの得点が実に多い。

 そのエチャリは、アジアカップを戦った日本代表選手たちをどう評価したのか?

MF


6試合にフル出場した柴崎岳

柴崎岳(ヘタフェ)

 初戦のトルクメニスタン戦では、目覚ましいパスを繰り出す一方、攻め急いでパスを奪われ、カウンターも浴びていた。攻守のバランスを取れていない。続くオマーン戦は、持ち前のキックの精度で、カウンターやセットプレーで存在感を示している。キッカーとしては二重丸。決定的パスを出せるが、グループリーグではそれに固執する一面もあった。

 ノックアウトステージ。サウジアラビア戦の決勝点のキックは精度が高く、そのよさが出た。ベトナム戦ではインターセプトが多く、堂安律に入れた縦パスはカウンターの起点になっていた。

 イラン戦は大迫勇也、南野拓実に質の高いくさびのパスを配球。その技術やビジョンのクオリティは高い。ただ、中央から攻め急ぐようなパスを奪われ、危ないシーンもあった。そしてカタール戦では、その悪さのほうが出た。高い技術で好パスを出す場面もあったが、不用意にボールを失ってしまい、背後にボールを通される機会が多かった。


6試合に先発、4試合にフル出場した原口元気

原口元気(ハノーファー)

 トルクメニスタン戦は大迫と並び、日本のベストプレーヤーのひとりだった。1点目の左サイドから大迫に供給したパスや、2点目につながるロングパスをヘディングでつないだ技術は、シンプルで効果的だった。オマーン戦も、前半は南野、堂安と何度もチャンスを作り出し、PKを得て(ジャッジは疑わしいが)、確実に決めた。

 サウジアラビア戦では、左サイドでしつこく守備をしながら、攻撃でも起点になっていた。開始直後にクロスを送るが、中央で合わなかった。逆サイドの堂安とのコンビネーションは良好、チャンスになる予感はあった。決勝点のCKにつながるクロスも放っている。終盤にも左サイドから際どいクロスを入れたが、武藤嘉紀、堂安には合っていない。

 ベトナム戦は守備で貢献した。後半、堂安のサイドチェンジを受け、左サイドから中に切り込んで打ったシュートは可能性を感じさせた。イラン戦も強度の高いプレーを見せる。粘り強く守備をし、後半アディショナルタイムには3点目を記録した。不用意なボールロストもあったが、戦術的に欠かせない選手だ。

 しかし、カタール戦では単純な技術的ミスが目についた。左サイドで相手の守備の隙を作ることはできなかった。


6試合に先発、3試合にフル出場した堂安律

堂安律(フローニンゲン)

 トルクメニスタン戦では、右サイドからカットインする意識が強すぎ、分厚いディフェンスにのみ込まれていた。しかし後半、決勝点となるミドルシュートを左足で決めている。南野、原口との連係度はとても高い。オマーン戦では、右サイドをドリブルで破ってから、原口にラストパス。原口からのパスをダイレクトで南野に送り、決定機を作ったシーンはこの試合のハイライトのひとつだった。

 サウジアラビア戦は守備に追われ、攻撃で存在感を見せることはできなかった。ベトナム戦は攻撃の起点になっていた。酒井宏樹、南野と息が合ったところを見せ、決定的なシュートもいくつかあり、PKを勝ち取って自らの左足で決めた。

 イラン戦は守備で貢献しながら、何度かカウンターを狙った。だが、カタール戦は原口と同じく、技術的ミスが多かった。焦って中央から攻め、絡め取られた。若さのせいなのか。ポテンシャルは感じるものの、中に切り込んでのプレーが一本調子になることがある。

FW


6試合に先発、2試合にフル出場した南野拓実

南野拓実(ザルツブルク)

 トルクメニスタン戦では、相手が守りを固めたのと、味方が前がかりになりすぎたことによって、前線が渋滞を起こし、持ち味を出せていない。しかしオマーン戦は、高いラインの裏に飛び出し、Desmarque(マークを外す)の技術の高さを存分に披露した。冨安健洋のロングパスをコントロールしてのフィニッシュや、原口、堂安とつないだパスをGKと1対1に持ち込んだシーンは白眉だった。ただ、決定力に課題も残している。

 サウジアラビア戦は不運なハンドの判定があった。ベトナム戦も連係の高さは示し、動きも悪くなかったが、シュートは入っていない。前半、堂安からのパスを、走り込んで受けた後のシュートは完璧に近かったが、GKに弾かれた。

 イラン戦は相手と接触しながら止まらず、左サイドから大迫にクロスを合わせ、先制点をアシスト。決定力は課題だが、プレーセンスや動きは光った。カタール戦では、右サイドを崩して中央に空いたスペースでボールを呼び込み、1点を返した。大会を通じて悪くない動きを見せたが、フィニッシュの精度は課題か。


ウズベキスタン戦、サウジアラビア戦に先発、カタール戦は後半17分から出場した武藤嘉紀

武藤嘉紀(ニューカッスル)

 ウズベキスタン戦では、伊東純也のクロスを呼び込み、ヘディングでゴールを決めた。もっとも大迫に比べるとプレーが単発だ。周囲との動きが合わず、生かせていないシーンがまだ少なくない。

 サウジアラビア戦では積極的にプレーしていたが、南野、堂安、原口とコンビネーションが合わない場面が多かった。その点で大迫と比較すると、物足りなさを感じさせた。カタール戦は後半途中から出場し、前線に高さ、強さを入れ、流れを変えている。


オマーン戦、ウズベキスタン戦、ベトナム戦に先発した北川航也

北川航也(清水エスパルス)

 オマーン戦に先発するが、まだ周りとコンビネーションが合っていなかった。だが、ウズベキスタン戦ではそのセンスの高さを見せている。反転から放ったシュートは、ストライカーとしての可能性を示した。とにかく動きの質が高い。

 ベトナム戦でも、ボールの受け方、パス出し、動き出しにプレーインテリジェンスの高さを感じさせた。吉田麻也の幻のゴールにつながった、くさびからのパスは秀逸だった。周囲との連係に改善の余地があるか。


トルクメニスタン戦、イラン戦、カタール戦にフル出場した大迫勇也

大迫勇也(ブレーメン)

 トルクメニスタン戦のベストプレーヤーだろう。単純に個の力を見せた。ポストワークの反転から、3人のディフェンスをかわして放ったシュートには、その技術の高さが集約されていた。彼がいる試合といない試合では、戦術的に大きく変わってしまい、現在の日本代表のキーマンのひとりだろう。プレー判断に優れ、周りを生かすプレーができる。

 復帰したベトナム戦でも、最後20分にも満たない出場時間だったが、存在感を示していた。ポストワークの技を見せ、時間、スペースを作った。これでチームの攻守が安定した。イラン戦では格の違いを見せた。敵に傾きつつあった流れを、パスを呼び込んで引き戻した。先制点のヘディングはゴラッソ(スーパーゴール)。2点目のPKも自信を持って決めている。

 カタール戦でも、随所に”らしさ”は見せている。ポストのタイミングなど周りと連係する力で本領発揮していたが、終盤は疲労が出たか。


ウズベキスタン戦に先発、3試合で途中出場した乾貴士

乾貴士(アラベス)

 ロシアワールドカップやエイバルで証明したように、実力のある選手である。先発したウズベキスタン戦は際どいシュートを放ち、好プレーも披露した。しかしディテールで失敗しており、ボールロストからカウンターの契機を作ってしまう場面がいくつかあった。


ウズベキスタン戦に先発、4試合で途中出場した伊東純也

伊東純也(ゲンク)

 ウズベキスタン戦で先発すると、右サイドから室屋成とのコンビネーションで好機をたびたび作っていた。スピードに長けた選手で、FWとの息が合えば、もっとゴールに絡むプレーを増やせるのではないか。また、イラン戦は堂安に代わって出場。走力の高さを生かし、カウンターを発動させている。

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著者:小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki


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