久保建英が健太流守備で劇的進化。バルサ復帰へXデーは近づいている

 4月14日、味の素スタジアム。試合前のウォーミングアップから、先発組がぞろぞろとロッカールームに戻る中で、久保建英(FC東京)はおもむろに右サイドへ歩き始めた。

 スタッフと何度かパス交換した後、ペナルティエリアに向かってドリブルで入る。”またぎ”を入れ、シュートコースを作ると、左足を鋭く振って、ゴール左隅にボールを巻き込む。フワッと網が揺れ、「おっ」という小さな歓声が洩れた。

 久保は満足したように、ゆっくりした足取りでロッカールームへ戻る――。何気ない動作だったが、なんとも様になっていた。

 この1年、あるいはたった数カ月で、久保は劇的な成長を遂げている。

 今シーズンはJリーグ開幕から7試合すべてに出場。6試合が先発で、右サイドを中心に攻撃の動力になっている。ルヴァンカップでも、サガン鳥栖戦で終了間際に試合を決めるFKを叩き込み、小さな祝祭に導いた。


鹿島アントラーズ戦に先発、勝利に貢献した久保建英(FC東京)

 この日の鹿島アントラーズ戦も、得点やアシストはなかったが、3−1の快勝に貢献している。攻め込まれるなかで、FC東京はカウンターから2得点したが、どちらもその起点になった。図抜けた技術をベースに、「ポジションとタイミングが求めるプレー」ができるようになっている。

 底の知れない17歳は、どこへ向かうのか――。

「バルセロナ復帰」

 その流れは現実化しつつある。現時点で、「内定」にまでは至っていない(クラブ側も否定している)が、ひとつの「路線」ではあるだろう。

 久保は2011年、10歳でバルサの下部組織に入団した。しかし14歳のとき、国際サッカー連盟(FIFA)の裁定によって、バルサでのプレーを続けられなくなった(2014年4月、FIFAはバルサが未成年選手の海外移籍禁止の条項に違反したとし、獲得した10名を18歳まで公式戦出場禁止とする裁定を下した。久保はEU外選手であり、「両親がサッカー以外の理由で移住」という特約にも当たらなかった)。その結果、15歳で帰国を余儀なくされ、FC東京に入団した。

 つまり、今年の夏は当時から「復帰」のタイミングだった。なにも降って湧いた話ではない。久保は誕生日を迎える6月で、国際的移籍が可能になる18歳になるのだ。

 そこからは交渉となる。

 スペインのバルセロナ系スポーツ紙、エル・ムンド・デポルティボは今年2月、すでに「(バルサ復帰)初期段階の合意」という言い回しで伝えている。もっとも、これはバルサが久保のプレーを欠かさずスカウティングし、久保が期待に応えるようなプレーを見せ、「復帰のタイミングが近づいた」という可能性を語ったに過ぎない。ひとつだけ言えるのは、バルサが久保の復帰に前向きということだ。

 エル・ムンド・デポルティボの記者が書いた久保についての記事は、とにかく賛辞を極めており、復帰への祈りさえうかがえた。

「タケ(久保)はプレー判断がよく、両足を使える。サイドで相手の守備バランスを崩せるし、嗅覚も失っていない。論理的に賢い選手だが、直感にも優れる。レアル・マドリードが獲得に興味を示しているようだが、タケはバルサのことしか考えていない。生粋のクレ(バルサファン)だ!」

 久保自身、毎年オフになるとバルサのチームメイトのところを訪れ、旧交を温め、練習にも飛び入り参加しているという。昨年暮れにもユースで練習。コーチングスタッフはその技術の高さに目を見張ったという。

 久保が復帰するXデーは、近づいているのかもしれない。

 もっとも、久保にとって復帰が最高の選択かは、その時期を含めて一考の余地がある。

 バルサ復帰といっても、トップチームではない。当面は、あくまでバルサBでのプレーになる。バルサBは現在2部B(実質3部)に所属。来季に向けて昇格プレーオフ圏内に入れるかどうか、微妙な順位にいるのだ。

 優勝争いを繰り広げるFC東京で、久保は日々進化を遂げている。

 昨シーズンまでは、卓抜とした技術を持ちながら、高いプレー強度のなかでそれを出し切れず、消える時間が多かった。「ユース年代のうまい選手」。その領域を出ていなかった。

 ところが、今シーズンは球際が格段に強くなっている。ボールを失わないし、ボールを取り返せる。守りが安定したことで、攻めの大胆さも出て、大人の選手として成熟しつつある。

「健太さん(長谷川健太監督)が守備だけの練習をするので。建英も、守備のやり方がわかってきた」

 FC東京の選手は、そう洩らしている。バックラインの選手に対し、どうやってはめ込み、ボールを奪い返すか。何度もそれだけを繰り返す、徹底的な守備をトレーニング。そのおかげで、ポジショニングや体の使い方、プレスのタイミングなどを身につけることができた。それは単純に、ボールを巡った格闘のスキルアップにもつながった。

 鹿島戦も、久保は激しいプレスをかけるだけでなく、巧妙なプレスバックで何度も相手ボールをつついていた。あるいは、コースを読んでインターセプトにも成功。サイドでの正しい立ち位置や守備の強度を身につけている。

 FC東京が悲願のJリーグ制覇を遂げるためには、欠かせない選手となりつつある久保。決断の日は、ひたひたと迫っている。

著者:小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki


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