久保建英のU−20W杯招集見送りは、本当に彼のためになるのか

久保建英のU−20W杯招集見送りは、本当に彼のためになるのか

 U−20ワールドカップ開幕を目前に控えたU−20日本代表が、国内最後の練習試合を行ない、流通経済大学に5−0と勝利した。

 U−20代表は、強度の高いプレーで流経大を終始圧倒。チームを指揮する影山雅永監督も「すばらしかった」と称える内容で国内キャンプを締めくくり、決戦の地へと旅立った。

 この試合、2ゴールを決めたFW宮代大聖(川崎フロンターレ)は、「(本番まで残り)少ない期間だが、チームとして(やるべきことを)つめていきたい。世界相手でも通用する自信はある」と、力強い言葉を口にした。


国内最後のトレーニングマッチをこなしたU−20日本代表

 5月23日からポーランドで開かれるU−20ワールドカップ。この大会に出場する日本の20歳以下の世代(主に1999年〜2000年生まれ)には、早くから所属クラブで出場機会をつかんでいる選手が多く、日本サッカー協会関係者からも「タレントがそろっている」という声が聞かれるほどだった。

 2年前の前回大会に出場したU−20世代、つまり、現在の22歳以下の世代(主に1997〜1998年生まれ)とともに、”東京五輪世代”を成すこともあり、その注目度は高かった。

 ところが、だ。本番を前に、期待のタレント世代には厄介な問題が次々と降りかかっている。

 まずは、GK大迫敬介(サンフレッチェ広島)、MF安部裕葵(鹿島アントラーズ)、MF久保建英(FC東京)が、現地時間6月14日開幕のコパ・アメリカ(ブラジル)に出場するA代表への選出を前提に、登録メンバーから外れたことである。

 彼らはすでにJ1で際立った活躍を見せている選手であり、とくに安部、久保に関しては、昨秋のアジア予選(アジアU−19選手権)で、攻撃の中核を担った選手である。大迫にしても、アジア予選では控えだったが、今季に入り、J1開幕戦から広島の正GKとしてゴールを守り続け、著しい成長を遂げていた。

 加えて、アジア予選ではチームの主力としてプレーした2選手、GK谷晃生(ガンバ大阪)、DF橋岡大樹(浦和レッズ)が負傷によって選外に。さらには、FW田川亨介(FC東京)をはじめ、今季になって所属クラブで出場機会を減らしている選手もおり、チームの底上げは思うようには進まなかった。

 前述の流経大との練習試合にしても、行なわれたのは月曜日だったのだが、もし週末のJリーグに出場している選手がもっと多ければ、この試合が組まれることはなかったはずである(実際、週末の試合に出場した7選手は、この試合に出場していない)。つまりは、登録メンバーのなかに、所属クラブで試合に出ていない選手が多かったため、練習試合が必要だったとも言えるわけだ。

 もちろん、その一方で、DF鈴木冬一(湘南ベルマーレ)のように、高卒ルーキーながらJ1の舞台で急成長を見せている選手もいるが、チーム全体として見れば、やや小粒になった印象は否めない。

 それにしても、なぜ大迫、安部、久保の3選手をA代表へ引き上げることになったのだろうか。ケガや所属クラブで出場機会を失うことについては、当然起こりうるリスクだとしても、この判断には、率直に言って、疑問を感じる。

 一般論として、上のカテゴリーを優先するという考え方に異論はない。A代表に足る実力がある選手であれば、年齢だけを理由で、U−20代表に留めておくことはない。

 だが、今回の場合はどうだろうか。

 南米王者を決めるコパ・アメリカは、日本にとっては大陸選手権ではなく、あくまでも招待出場。そのため、FIFAの規定上、選手を招集するにあたっての拘束力がなく、ベストメンバーを編成することはほぼ不可能だった。

 加えて、大会期間中はJリーグも通常どおりに開催されるため、Jクラブの協力も思うようには得られない。そんな状況で編成されるチームなのだから、名目上はともかく、実質的にはA代表とは言えないメンバー構成になるのは間違いない。

 有り体に言えば、コパ・アメリカに出るために組まれるチームだ。

 だとすれば、いろんな意味でより本気度の高い大会、すなわち、20歳以下の選手たちが長い間、そこを目標にし、日々のモチベーションにしてきた大会への出場を優先してもよかった、いや、すべきだったのではないだろうか。

 U−20ワールドカップで勝ち上がるために、彼らを残すべきだった、と言いたいのではない。むしろ、彼らの成長のためにどちらが有意義なのか、という話である。

 しかも、コパ・アメリカに出場するA代表メンバーはまだ発表されておらず、U−20代表メンバー発表の席上でも、彼ら3人が選外となった理由については曖昧にされている。要するに、A代表も含めた年代別代表のメンバー選考について、日本協会の方針が明確に示されないままなのである。

 キャプテンのMF齊藤未月(湘南ベルマーレ)が、「ここに選ばれたメンバーが、ベストメンバーだと思っている」と語るように、選手たちは一様に、外れた選手については多くを口にしない。というより、そうとしか言いようがないのが実際のところだろう。

 本来外れるはずのない選手が、なぜ外れたのか。せめて、その理由くらいは、(報道等で何となく既成事実化するのではなく)公の場ではっきりさせておくべきだったのではないかと思う。

 もちろん、言うまでもないことだが、選手に責任はない。正直、モヤモヤした印象が残るチーム編成となったが、選ばれたメンバーで最高の戦いをしてほしいと望むばかりだ。

 さまざまな理由により、本来なら主力となるはずの選手を何人も欠くことになったU−20代表だが、その結果、2000年生まれの選手、つまり、2年前のU−17ワールドカップを経験している選手が7人も名を連ねることになった。これはU−20ワールドカップに出場するチームの登録メンバーとしては、過去最多の数である。

 まだ今年19歳の彼らは、誰もが所属クラブで出場機会を得られているわけではない。Jリーグでの経験では、安部や久保、橋岡らには及ばない。だが、世界大会の雰囲気を知る選手がこれだけいることは、若いチームにとって心強い。そのひとりである宮代は、17歳で経験した2年前の大会を振り返り、「あの大会に出ていたイングランドの選手は、すでに(ヨーロッパのクラブの)トップチームで試合に出ているし、意識するところが変わった」と言い、こう語る。

「U−17ワールドカップの時に悔しい思いをしている。その経験はポジティブな面がある」

 日本がグループリーグで対戦するのは、対戦順に、南米予選1位のエクアドル、北中米カリブ海予選2位のメキシコ、ヨーロッパ予選2位のイタリア。アジア予選3位(アジアU−19選手権準決勝敗退)の日本にとっては、すべてが実力上位と言っていい相手である。おそらく全6グループのなかで、最もハイレベルで、厳しいグループだろう。

 それだけに、キャプテンの齊藤は「チームとして目指すものを意思統一して、どれだけ日本らしく戦えるか」を勝ち上がるためのキーポイントに挙げ、こう続ける。

「相手の個が強い分、僕らは集団でボールを奪い、集団でがんばって(守備に)戻って、集団で点を取りにいく。チームとしての団結で相手に挑みたい。それができないと勝ち目はないと思う」

 このU−20ワールドカップは、いわば、来年の東京五輪、さらには3年後のワールドカップ・カタール大会へと続く階段の第一歩である。今後の成長を考えるならば、最激戦のグループリーグも望むところだ。

 アイツら、安部や久保がいなくても、やれるじゃないか――。そんなことを思わせてくれる戦いを期待している。

著者:浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki


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