いい味出してるアップルパンチ。西武にとって外崎修汰の成長はでかい

いい味出してるアップルパンチ。西武にとって外崎修汰の成長はでかい

 パ・リーグ連覇を狙う西武と、昨季日本一のソフトバンクが激しい首位争いを繰り広げている。最後までもつれそうな展開のなか、防御率4.33とリーグワーストの西武は、「攻撃は最大の防御」と言わんばかりの戦いぶりが最終盤に大きな強みになっている(今季の成績は9月19日時点)。


外崎修汰が二塁手のベストナインに選ばれるのは確実だ

「先制されることはシーズン初めのほうからそうなので、いつもどおり、プレッシャーのかかった試合でも焦ることなく行ける感じはありますね」

 そう語る外崎修汰こそ、優勝争いのカギを握るひとりだ。

 投手力が弱いなか、727得点はリーグ断トツ。2位のロッテは619得点、3位のソフトバンクは560得点で、最下位のオリックスは510得点だ。

 個人に目を向けると、首位打者争いをリードする森友哉(102打点/リーグ3位)、36歳にしてキャリアハイの打率を残す中村剛也(120打点/同1位)、2年連続本塁打王が見える山川穂高(116打点/同2位)ともに100打点を超え、チーム4位の外崎は89打点(同5位)を稼いでいる。

「(100打点は)記事ではよく見ますけど、難しいですよね。機会があればがんばりたいけど、あまり意識してもよくないと思うので」

 外崎がそう語るように、残り試合を考えると「100打点カルテット誕生」は難しいかもしれない。

 だが、もうひとつ偉業がある。現在リーグ4位のブラッシュ(楽天)は92打点で、外崎が抜けば打点の上位4人を西武が独占するのだ。

 今季の西武打線は4番・山川を軸に、主砲がたとえ勝負を避けられても得点力を落とさないように、5番に森を置いてスタートした。

 そのオーダーを大きく組み替えたのが8月だ。

 出塁率の高い1、2番の秋山翔吾、源田壮亮のあとに高打率の森を3番に据え、先制して優位に立つ。さらに4番・山川の打率がなかなか上がらないなか、交流戦明けから下位打線で好調を維持する中村と打順を入れ替えた。すると、森と中村がポイントゲッターになり、山川も持ち前の長打力で打線に厚みを加えたのである。

 現在も3番・森、4番・中村が好調なだけに、必然的にポイントになるのが5、6番だ。8月から6番、そして9月16日のロッテ戦から5番に入る外崎自身は、どう思っているのか。

「あまり考えないですね。前の3、4番が調子いいので、先制点を取ってくれるイメージがあるし。プラス、僕ががんばって追加点を取るのは意識します。僕が打てば、もっと楽な試合運びができるんじゃないかって」

“アップルパンチ”の愛称がお馴染みになった外崎は、青森のりんご農家で生まれ育ち、純粋培養されたかのようにマイペースだ。たとえ重圧のかかる試合でも、動じるところが見えない。加えて「チャンスの打席は好き」という前向きさもある。

「自分勝手な考えかもしれないけど、チャンスでは何でも振りにいける。とにかく点を取ればいいので、逆に結果を考えないと言うか。無死二塁なら考えますけど、一死三塁とか一、三塁なら、結構ガンガンいきます」

 プロ野球という熾烈な勝負の世界で、いい意味で、外崎のように自分本位で臨める者は強い。

 そんな男は大卒4年目の今季、大きく成長した。137試合消化時点で全試合に出場し、打率.271(リーグ14位)、25本塁打(同10位)、89打点(同5位)、21盗塁(同6位)。二塁手のベストナインになる可能性は高い。

 内容的にも大きな進化が見られる。とりわけそう感じさせられたのが、猛打賞を記録した9月16日のロッテ戦の後だった。

「今は調子が落ちないように踏ん張っている感じです。いい時は、何も考えなくてもヒットやホームランが出ます。その状態を続けていって、だんだん下がっていった時に、いい時をベースに少しずつバッティングが変化している感じですね。タイミングの取り方も調子がいい時と一緒だし、イメージのちょっとしたところだけを変えてやっているところです」

 長いペナントレースでは毎日、調子や環境が変わる。そうしたなかで、いかに自身の打撃を微調整していけるか。その際に重要になるのが「引き出し」だ。

 外崎の言葉を聞いて、6月末に秋山が語っていた話を思い出した。秋山は不調だった4月、そして月間打率.402を記録した5月を踏まえ、6月(月間打率.337)はまた別の取り組みをしていた。

「5月のように行かないのは自分でわかっていました。だいたい5月までよかった人は、6月にダダダダっと落ちるじゃないですか。踏ん張りが効かない感じで。いいものはそのまま続くと思っちゃう。これが経験ですね。自分はそう思っていないので、これくらいの打率の落ち方で済んでいます」(詳細は過去記事を参照)

 外崎は昨季までに築いた打撃をベースに、今季は微調整を加えている。5月前半まで打率1割台と苦しんだが、そこから上昇したきっかけはバットの構え方を変えたことにある。

「それまでは小さく構えていたので、打ちにいく時にどうしてもヒッチ(バットを上下動させること)をやっちゃうんです。大きくタイミングを取ったら、いらないヒッチを入れたら間に合わなくなるので、逆にヒッチが出にくくなる。ヒッチのタイミングが大事かなと思います」

 そうして打率.260まで上げ、7月終わりには重心を下げずに構えるようにした。見かけ的に言えば、懐(ふところ)が大きくなった。

「左足を上げやすくするために、右足で突っ立っているようなイメージです。始動に関していろいろ考えていて、どのタイミングで足を上げるかと意識すると、そのせいでバットを振るのが遅れちゃう。足を上げるには力が必要じゃないですか。足を上げることをあまり考えたくないから、立ち方を変えて、タイミングを取りやすくなりました」

 前述した9月16日のロッテ戦で猛打賞を記録したのも、理由がある。同13日からのロッテとの4連戦初戦、相手先発はボルシンガー。最大の武器はナックルカーブで、基本的には外角低めに逃げていく。

「インコースに手を出したくないので、そこを自分のなかで消す意味でも、ちょっと踏み込んでいくイメージにしました。右足だけ少しベースから離れるイメージですね。そうしたら、結構よかったです」

 外崎はスイング軌道的に、センターから右方向に強い打球を放てるという特徴がある。レフトへの安打や本塁打も少なくないが、本人はこう考えている。

「調子がいい時は、勝手に引っ張れちゃうというか。でも結局、インコースに対して反応がいいことは、あまり続かない。反応がよすぎて、それをイメージしちゃうと身体の開きが早くなるからです。基本はセンターから右方向で、変化球が甘くなったら勝手に引っ張っちゃうイメージですね」

 そう話した次戦、9月18日のオリックス戦では7回、2−0から勝負を決める本塁打をレフトに放った。相手先発の荒西祐大が投じたのは内角への145kmストレートで、「難しいボールだった」と外崎は振り返っている。

 この打席で光ったのが、読みと対応力だ。外角にカットボールとスライダーという同系統の球種が3球続いて、2ボール1ストライク。次に、外崎はストレート系の比重を多く置いていた一方、内角を想定していたわけではない。ただし、荒西の武器のひとつ、140km台の高速シンカーの軌道をイメージできていた。

「(内角への球が)シュートして来るのは大前提でわかっていたので、詰まりたくないなと、ちょっと早めにタイミングをとっていました。打ったのはインコースだったけど、レフト側にうまいこと反応しようと思って打ったわけではないです。タイミングをしっかりとれている分、うまい具合に反応できたのかな」

 長いシーズンを戦い抜く体力、打撃の技術に加えて、心も整ってきた。

「たしかに三振はしています(リーグ4位の129三振)。でも、開き直りではないけど、去年のように悪いイメージを自分に植えつけることはないですね。シーズン最初に大きな波があったけど、調子が上がってきてからは、自分のなかで調子が悪いと思う時が少ないです」

 第4コーナーから直線に入り、最後の叩き合いとなっているソフトバンクとのマッチレース。外崎が打点を稼いで西武が上位4人を独占、あるいは「100打点カルテット」が誕生した時、獅子は歓喜の雄叫びを上げているはずだ。

著者:中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke


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