コーチ陣が驚愕するヤクルト村上宗隆の能力「まだまだ伸びる選手」

コーチ陣が驚愕するヤクルト村上宗隆の能力「まだまだ伸びる選手」

 今シーズン、プロ2年目の村上宗隆(ヤクルト)の急成長には、いろんな意味で驚かされた。19歳にして一軍の全試合に出場。36本塁打(リーグ3位)、96打点(リーグ3位)は「すばらしい」のひと言で、リーグワーストの184三振を喫したが、迷いのないスイングは見る者の心を揺さぶった。

 そんな若き大砲は、シーズンが終わると休む間もなくフェニックスリーグ(宮崎)に参加した。このフェニックスリーグで村上と1年ぶりに再会を果たしたコーチたちに、その成長ぶりについて語ってもらった。


今シーズン、高卒2年目ながら全試合に出場したヤクルトの村上宗隆

 北川博敏二軍打撃コーチ(※)は「ムネ(村上)に初めて会ったのは、ここ宮崎県西都での春季キャンプでした。18歳にはとても見えず、『すごい』のひと言でした」と笑った。
※北川コーチはフェニックスリーグ中に契約満了でヤクルトを退団し、10月25日付で阪神の打撃コーチに就任)

「とくに逆方向への飛距離が魅力的で、『あー、こんな子がいたんだ』って。大きくいじるところはまったくありませんでした。自分で考えて取り組んでいることが伝わってきましたし、多少アドバイスをした程度です。まずは1年間、本人のスタイルで振らせていこうと。速いボールに対して、若干対応が遅れるところがありましたが、バットを振り込んでいけばアジャストしていくだろうと。実際、二軍ではありますが、結果を出しました。当然といえば当然だったと思います」

 昨年、村上はファームで98試合に出場。打率.288、17本塁打、70打点という、高卒1年目にして圧巻の成績を残した。9月には一軍に昇格し、初打席初本塁打という衝撃デビューを飾り、ファンに強烈な印象を与えた。北川コーチは言う。

「実戦に入れば、プロの変化球に苦労するかなと感じていたのですが、選球眼が普通の18歳の選手とは違っていました。ホームランの数よりも、四球の多さが、高卒1年目の選手とは思えなかった。そこに、また驚かされました。持って生まれた才能というか、自分の打撃スタイルがあるんだなと感心しました」

 約1年ぶりに見た村上について、「構えが若干ですが変わりましたね」と言って、こう続けた。

「そのなかで、力強さがさらに増した印象ですね。実際、外野フライだと思った打球が、そのままフェンスを越えていったり……。今回、久しぶりに話をしたのですが、青木(宣親)らの打撃を見て話を聞くことで、自分もその感覚がわかるようになってきましたと。自分のスタイルを大事にしながら、取り入れるところは取り入れることができる。まだまだ伸びる選手だなぁと、あらためて思いました」

 松元ユウイチ打撃コーチは、村上の第一印象を次のように語る。

「一番びっくりしたのは、ボールを飛ばす能力はもちろんですが、やっぱり選球眼です。僕の計算では、3年後ぐらいにはすごい選手になるだろうと思っていて、そのためにも1、2年目が大事になると考えていました。それが、2年目で一軍の試合で全試合出場ですからね。思った以上に成長が早かったです。今年の試合はテレビで見ていましたが、高めの速い球や左投手に苦労している印象はありましたが、そのなかであれだけの結果ですからね。すごいのひと言です」

 松元コーチは1年ぶりに会った村上について、「来年につながる練習をしていますよね」と言い、こう続けた。

「投手の配球やチームバッティングを考えて打席に立っていますし、三振は多かったですが、そこは二軍とのレベルの差といいますか……。そのレベルでの選球眼の向上も意識していたと感じました」

 来シーズンから松元コーチは一軍打撃コーチとなり、村上と1年を過ごすことになった。

「村上が一軍で2年目の壁を乗り越えるために、とくにメンタル面で手伝いができればと思っています。人間って”慣れ”が一番怖いですから。今年、石井琢朗さん(前打撃コーチ)たちとずっと継続している練習があったのですが、それ以上にやらないといけないと思うんです。正直、僕と石井琢朗さんは比べものになりませんが、僕にしかできないことがあると思っています。そこは、自信を持ってアドバイスできればいいなと」

 森岡良介内野守備・走塁コーチは「久しぶりにムネと練習しましたけど、プロの内野手っぽくなりましたよね」と言って笑った。

「自分の考えで動けますし、とくに捕球がうまくなりました。たとえば三塁手として、一人前のレベルを100とすれば、まだまだ30点ぐらいです。高校時代は捕手で、内野手としてはまったくゼロからのスタートでしたからね。細かい動き、捕球してからのスローイングなど、まだまだ訓練が必要なレベルです」

 森岡コーチも、来季は一軍コーチとして、村上と時間を共有する機会が増えそうだ。

「ムネには『普段の努力じゃ時間が足りないよ』と言っています。僕としてはフェニックスリーグ、秋季キャンプ、春季キャンプで鍛えて、シーズン開幕までに70〜80の状態に持っていきたい。そして試合ごとに課題を見つけ、練習で試して、試合で克服する。そのサイクルで1年間やっていきたいです」

 今回、村上の”特守”を見て感じたのは、打球に向かう時の足の運びがスムーズになっていたことだ。うまく動けた時はじつにうれしそうな表情を見て、納得できなければ「もう一球お願いします」と言って、何度もリクエストする。そのひたむきさは相変わらずだなと思った。

「ムネの長所は、強い気持ちを持っていることですよね。もっと自分がうまくなることが、チームのために……と思ってやっている。このフェニックスリーグでも意識して声を出してくれています。闘志を前面に出すスタイルをやってほしいと、本人にも話しています」

 10月15日の広島戦は、北川コーチがヤクルトのユニフォームに袖を通す最後の試合となった。

「僕はチームを離れますけど、若い選手たちには期待しています。今回のフェニックスリーグを見ても、普通は1人か2人がレギュラーになってくれたらいいな……ぐらいなんですよ。でも、このチームには、来年とは言いませんが、3年以内に一軍でレギュラーを張れる選手が4、5人はいますから」

 そして北川コーチに村上の未来について聞くと、こんな答えが返ってきた。

「僕にとってもムネとの出会いは衝撃でした。極端なことを言えば、メジャーでも活躍できる選手になってほしい。とにかく3年から5年は、必死にバットを振りまくって、野球に打ち込んでほしい。そこで土台をつくってしまえば、あとは自然に流れていくので」

 10月18日には、今シーズン限りで現役を引退し、二軍打撃コーチに就任した畠山和洋が背番号「33」の姿でチームに合流した。フェニックスリーグでは、選手たちに身振り手振りを交えてアドバイスを送っていた。その畠山コーチに、コーチとして考えていることを聞いてみた。

「簡単なことではないですけど、一軍と二軍の選手をいかに同じレベルにできるかですよね。今シーズン、僕は二軍で過ごしましたが、間違いなく一軍で通用する選手が何人かいました。二軍で培ったものを一軍でも同じように発揮するには、感情のコントロールや試合での考え方が大事です。そのことを選手たちに気づかせてあげればいいなと思っています」

 そして畠山コーチは次のように語る。

「『一軍に上がったら絶対に打たなきゃ』という気持ちを、『最低限の仕事ができればいい』というふうに、選手たちの意識を変えていきたい。それだけで選手たちは変われると思っています。野球は失敗のスポーツです。3割打者だって、10回の打席のうち7回は失敗するわけですから。その失敗のなかでも、ランナーを進めたり、自分にとって貴重な失敗にすることが大事なんです。でも、一軍にいくと、振らなくてもいいボールを振ってしまう。ファームではそんなボールに手を出していなかったじゃんって(笑)。そういう失敗を減らしていきたいですね。

 僕からすればエース級の投手は特別ですが、ほとんどは二軍の投手よりもちょっとコントロールがいいとか、少しだけボールが速いとか、そういう違いだけなので……。野球はもともとが難しいスポーツで、バットにボールを当てること自体大変だし、それをヒットにしたり、ホームランにしたりするのは相当難しい。だから、難しいことを追い求めるのではなく、いま自分にできることをやったほうが簡単なんだということを伝えていきたいですね」

 村上については「1年目の印象は、バットが振れていたこともそうですけど、やはり選球眼に驚きました」と言った。

「僕らの感覚でいうと、プロの世界に入って、まず何に驚くかというと、スピードよりも変化球のキレだったりするんです。村上の変化球の見極めは、高卒1年目とは思えませんでした。今回、約1年ぶりにグラウンドで見ましたが、ボールの捉え方や飛距離は、ほかの若い選手と比べたら数段上です」

 そして、こうも言う。

「今年の経験を生かして、配球だったり、試合の感覚だったり、今年よりさらに頭を使っていくためのアドバイスができればいいですね。今年はがむしゃらにやったでしょうし、常にホームランを意識していたと思うんです。そういう気持ちを押し殺す打席が増えていけば、成績は上がっていきますよ。絶対に三振は減るだろうし、四球の数は劇的に増えるはずです。

 極端なことを言えば、来シーズンは村上を警戒した組み立てになるはずです。おそらく、バットを振らなければボール先行のカウントになると思います。そこでどれだけ我慢できるか。村上には、我慢して自分有利のカウントをつくっていくことの大事さを話していくつもりです」

 村上はフェニックスリーグ終了後、すぐに愛媛・松山での秋季キャンプを迎えるも、下半身のコンディション不良により参加が見送られた。しかし、来年もコーチからの期待をいい意味で裏切る活躍を見せてくれるに違いない。

著者:島村誠也●文 text by Shimamura Seiya


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