いよいよ開幕する第104回全国高校野球選手権大会。現段階では「ドラフト1位間違いなし」と断言できるような超大物はいないものの、えてして大会中にブレイクして評価が高騰する新鋭が現れるものだ。今夏大爆発する可能性を秘めた有望選手を投手・打者に分けて10名ずつ紹介していこう。まずは投手編から。

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堂々の体躯から最速150キロのストレートを投げ込む日本文理の田中晴也

田中晴也(日本文理/186センチ・92キロ/右投左打)

今夏の主役になりうる男。たくましい体躯から最速150キロの快速球やスライダー、フォークなどを操る。打者のインコースを臆することなく突けて、試合中の修正力や思考力も高い。大工からプロ野球選手になった変わり種の本間忠コーチ(元ヤクルト)も、そのポテンシャルに太鼓判を押す。昨夏の甲子園では敦賀気比に被安打15、失点8と打ち込まれた悔しさから、打者を圧倒できる実力を身につけるべく努力してきた。初戦は大会3日目に強力投手陣を擁する海星と対戦する。


今年春のセンバツでチームを準優勝に導いた近江・山田陽翔

山田陽翔(近江/175センチ・78キロ/右投右打)

甲子園で映える申し子。エースで主砲の大黒柱として、昨夏はベスト4、今春は準優勝と甲子園の頂点にあと一歩まで迫る。爆発的なインパクトから猛打球を放つ打者として評価するスカウトもいるが、本人は強烈な投手志向。真上から角度をつけて振り下ろす最速149キロの快速球に、カットボールやスプリットの高速帯の球種を武器にする。この1年で見違えるほど投球フォームが改善されており、体が受けるダメージも減っている。初戦は大会2日目に鳴門と対戦する。


昨年夏の甲子園でも好投した京都国際・森下瑠大

森下瑠大(京都国際/180センチ・75キロ/左投左打)

間に合ったサウスポー。現時点での最高球速は143キロながら、重力に逆らうように伸びる体感のストレートを投げられる。類まれな洞察力で危険を察知し、飄々と切り抜ける姿はまさに「勝てる投手」。優勝候補に挙げられた今春センバツは新型コロナのクラスターが発生して開幕前日に出場辞退する悲劇。コロナ復帰後も左ヒジ痛に悩まされたが、必死のリハビリの末に回復。今夏の京都大会はわずか9イニングの登板も、甲子園で本領発揮できれば攻略困難だろう。初戦は大会1日目に一関学院と対戦する。


今春センバツで安定感ある投球を披露して日本一に貢献した大阪桐蔭・川原嗣貴

川原嗣貴(大阪桐蔭/188センチ・85キロ/右投左打)

名門の背番号1の重みを知る右腕。昨秋までは投げてみないとわからない不安定さを覗かせたが、今春のセンバツで18イニングを投げ防御率1.42と安定した投球で優勝に貢献。6月の日本体育大との練習試合では、1〜2年生チーム相手ながら完封勝利を挙げている。ゆったりとした投球モーションから最速148キロのストレートと、カットボールなどの変化球を武器にする。総合力が高い前田悠伍、今夏150キロを計測した別所孝亮の投手陣に死角は見当たらない。大会5日目に旭川大高との初戦を迎える。


最速148キロを誇る智辯和歌山・武元一輝

武元一輝(智辯和歌山/187センチ・86キロ/右投左打)

将来の完成像が想像しきれない大器。大きく、厚みのある体つきながら身のこなしに持て余している感がなく、現段階で最速148キロの快速球はさらなる増速気配がある。打者としてもおもに5番を任され、左打席からパンチ力抜群の打撃を見せる。智辯和歌山は投手層が厚く、今夏の武元の登板は和歌山大会わずか2試合、9イニングのみ。それでも無失点と好結果を残しており、大舞台でどんな投球を見せてくれるか。初戦は全49代表校の"しんがり"として、大会8日目に登場予定だ。


オリックスの山本由伸に憧れていると語る富島のエース・日高暖己

日高暖己(富島/184センチ・77キロ/右投左打)

全国区を狙えるシンデレラ右腕。現段階では全国的な知名度はないものの、最速148キロの快速球は打者をひるませる迫力がある。宮崎大会決勝では91球で完封し、大会通算防御率0.42の安定感が光った。憧れの存在だという山本由伸(オリックス)からの影響がうかがえる、腕の反射を生かしたテイクバックが特徴的。4年前の金足農・吉田輝星(日本ハム)のようなセンセーショナルな存在になる可能性がある。初戦は大会6日目に下関国際と対戦する。


最速147キロを誇る本格派左腕、愛工大名電の有馬伽久

有馬伽久(愛工大名電/175センチ・75キロ/左投左打)

伸び盛りのサウスポー。昨秋まで140キロ前後だった球速がひと冬越えて最速147キロまで増速。リリース時に力をボールに伝えるのがうまく、スライダー、チェンジアップなど横の揺さぶりも緩急も自在に操る。今夏の愛知大会決勝では3失策と守備の乱れがありながら、要所を締めて強豪・東邦相手に完投勝利を収めている。自信に満ちたマウンドでの態度もエースらしく、平成以降の夏の甲子園で1勝9敗のチームにとって頼もしい存在だ。初戦は大会2日目に星稜との好カードを戦う。


今年春のセンバツで大阪桐蔭を苦しめた鳴門の冨田遼弥

冨田遼弥(鳴門/178センチ・83キロ/左投左打)

大阪桐蔭をもっとも苦しめた左腕。今春センバツは大会前に徳島県の規定で練習試合ができず、ぶっつけ本番ながら初戦の大阪桐蔭戦で快投を披露。右打者のインコースを執拗に突く投球で、準々決勝以降1試合平均16得点の名門に本来のスイングをさせなかった。ガッチリとたくましい下半身から放たれる140キロ前後のストレートに、鋭いキレ味のスライダーも出色。大会2日目に近江との好カードが組まれており、センバツ準優勝校も苦しめるのか注目される。


昨年夏の甲子園を経験している明徳義塾の変則左腕・吉村優聖歩

吉村優聖歩(明徳義塾/181センチ・72キロ/左投左打)

対策困難なトルネードサイド。腰をひねってから横手の角度から腕が出てくる変則左腕で、野球評論家の山本昌氏(元中日)が「おそらく全国で一番打ちづらい投手」と絶賛したほど。指にかかったストレート、スライダーのコンビネーションが決まると、手がつけられない。エジプト人の父と日本人の母を持つ。今夏の高知大会決勝は高知高に7失点と苦しんだものの、初見で打ち崩すのは至難の業だろう。初戦は大会6日目に全国屈指の強力打線を擁する九州国際大付と対戦する。


2年生ながら完成度の高いピッチングを見せる大阪桐蔭・前田悠伍

前田悠伍(大阪桐蔭2年/180センチ・78キロ・左投左打)

来年の高校日本代表エース最有力候補。球質に優れたストレート、正確なコントロール、変化球の精度、ふてぶてしいマウンド度胸、投球を組み立てる思考力。投手として必要なものをすべて兼ね備え、「今年のドラフトでも1位で消える」と断言するスカウトがいるほど。今春の近畿大会決勝・智辯和歌山戦で喫した敗戦が公式戦初黒星。スケールがあるタイプではないが、「野球はこんな投手が勝つのだ」と圧倒的な結果で語る存在になるはず。向こう1年、高校野球界の中心には常に前田の姿があるだろう。

著者:菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro