旗手怜央の欧州フットボール日記 第13回  連載一覧>>

カタールW杯で感じた将来の課題/前編

スコットランドのセルティックでプレーする旗手怜央が、初めての欧州サッカー、欧州生活で感じた、発見、刺激、体験を綴っていく連載。残念ながら日本代表に選ばれなかったカタールW杯。本人は今大会をどう見ていたのだろうか。

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前田大然(右)らチームメイトのW杯でのプレーに、旗手怜央(左)は刺激を受けたという

【W杯メンバーに入れず悔しかった】

 セルティックに加入して1年が過ぎた。

 充実した日々に、まだ1年かと思う気持ちもあれば、あっとういう間に1年を駆け抜けた気持ちもある。

 グラスゴーでの生活にも慣れた自分には、練習場の行き帰りにもちょっとした習慣ができた。自宅から練習場までは車で30〜40分ほどかかるのだが、行きは英語の勉強に時間を使っている。週に数回ほどオンラインでレッスンを受けているため、そこで出された課題に取り組んでいる。

 一方で練習を終えた帰りは、好きな音楽をかけてリフレッシュしたり、曲もかけずに考えごとをして過ごしたりしている。

 そのなかでは、カタールで行なわれていたワールドカップについて、自分の気持ちに向き合ったこともあった。

 カタールW杯に臨む日本代表のメンバーが発表された日は、リーグ戦が中断する前だったのもあり、リアルタイムで発表の瞬間を見届けたわけではなかった。それ以前に、メンバー発表前最後の遠征で出場機会を得られなかった自分が、選ばれることはないだろうと思っていた。

 ただ、いざメンバーが発表され、自分の名前がそこになかった時には、「やっぱりな」ではなく、こう思っていた。

「悔しいな......」

 W杯開催期間中はセルティックもオフを与えてくれたため、日本に帰国していたが、7月末から試合を戦ってきた身体を休めるため、日本代表のグループステージをリアルタイムでは視聴しなかった。

 でも、心境を整理できた今、振り返ると、疲れを取るという理由は半分だけで、残りの半分は悔しくて素直に試合を見ることができなかったのだと思う。

 だから、グラスゴーに戻ってから、改めて日本のグループステージ3試合をすべて見直した。時間が経ち、気持ちの整理もでき、日本の戦いを見ておかなければいけない、と感じたところもあった。それもあって、ラウンド16のクロアチア戦はリアルタイムで視聴した。

【前田大然、三笘薫、谷口彰悟...。日本代表の試合で感じたこと】

 時期は前後するけど、セルティックのチームメイトでもある(前田)大然は、日本代表に選ばれた。大然がカタールに向けて出発する時には、「頑張ってきてね」と声をかけた。

 それは自分が近くで、彼の頑張りを見てきたからこそ出た言葉だった。大然とはセルティックに加入した時期が一緒だった。自分はセルティックの試合をしていくだけでも、徐々にコンディションに影響が出てしまったが、彼がクラブで全力を出しつつ、日本代表でも結果を残し、定着していく様子を間近で見てきた。

 一方で、日本代表では結果を残せなかった自分との間には、大きな違いがあることも実感していた。

 それは川崎フロンターレに大卒新人として同期で加入した(三笘)薫も、だった。彼はあの大舞台で、自分の持ち味を発揮し、相手に脅威を与えていた。

 それ以上に改めてリスペクトしたのは、(谷口)彰悟さんだった。グループステージ第1戦、第2戦は出場機会を得られなかったが、第3戦のスペイン戦で先発すると、頼りになるプレーの数々で2−1の勝利に貢献していた。

 自分が川崎フロンターレに加入した2020年から、彰悟さんはチームのキャプテンに就任し、先発出場するのが当たり前のような選手だった。川崎フロンターレでは絶対的な選手でありながらも、日本代表では、しかも本番であるW杯で出場機会を得られない。

 それでもなお、彰悟さんは「絶対に出場する機会はある」と信じて、最善の準備をしていたからこそ、スペイン戦のパフォーマンスにつながったのではないか。2年間、その背中を見ていたからこそ感じるものがあった。

「そう言えば、彰悟さんは試合後のリカバリーも手を抜かず、自分がやるべきことは常にしっかりとやっている人だったな」

 準備やケアも含め、当たり前のことを当たり前にやるのは、口で言うのは簡単だが、決して容易なことではない。W杯のピッチに立つ彰悟さんの姿を見て、当たり前のことを当たり前にやりきる、またその積み重ねがチャンスにつながるのを再認識した。

 結果的に日本代表の試合から感じられたり、得られたりしたことは、自分のなかにもたくさんあった。

【自分のストロングは何か】

 アルゼンチン代表の優勝で幕を閉じたW杯は、トーナメントが進めば進むほど、化け物たちの集まりになっていった。

 日本代表のなかで、個の力を発揮していた薫の存在は目を引くものがあった。彼もまた、彰悟さんと同じく、川崎フロンターレ時代から食事に気をつかい、武器であるドリブルに磨きをかけるべく、努力している姿を間近で見ていた。その彼の特徴を、さらに引き出し、活かしていくためにも、強烈な個の集団にならなければいけないと、アルゼンチン対フランスの決勝を見て、思った。

 薫がW杯という舞台で強烈な個を発揮するのを見て、さまざまなポジションでプレーすることができる自分のストロングとは何かを改めて考えた。

 その答えに自分自身も気づいてはいたが、さらなる確信を得るために、僕はセルティックの監督であるボス、アンジェ(・ポステコグルー)さんの部屋をノックした。

(後編「監督とも確認したこれからの課題」>>)

旗手怜央 
はたて・れお/1997年11月21日生まれ。三重県鈴鹿市出身。静岡学園高校、順天堂大学を経て、2020年に川崎フロンターレ入り。FWから中盤、サイドバックも務めるなど幅広い活躍でチームのリーグ2連覇に貢献。2021年シーズンはJリーグベストイレブンに選ばれた。またU−24日本代表として東京オリンピックにも出場。2021年12月31日にセルティックFC移籍を発表。2022年1月より、活躍の場をスコットランドに移して奮闘中。3月29日のカタールW杯アジア最終予選ベトナム戦で、A代表デビューも果たした。

著者:text by Harada Daisuke