3歳クラシックの季節がやってきた。まずは、牝馬クラシックの第1弾、GI桜花賞(4月7日/阪神・芝1600m)だ。

 昨年はリバティアイランドという絶対的な存在がいて、桜花賞を次元の違う走りを見せて快勝。続くGIオークス(東京・芝2400m)も完勝して、最終的に三冠牝馬に輝いた。

 しかし今年は、牡馬戦線同様、牝馬戦線もズバ抜けた馬が不在。混戦の様相を呈している。桜花賞、さらにはオークス(5月19日)で勝ち負けを演じるのはどの馬なのか、まったく予想がつかない。

 そこで、今年も競走馬の分析に長けた安藤勝己氏を直撃。3歳牝馬クラシックで躍進が期待できる馬をピックアップしてもらい、独自の視点による「3歳牝馬番付」を選定してもらった――。


「2歳女王決定戦」の阪神JFではアスコリピチェーノ(手前)がステレンボッシュの追撃を押さえて勝利を飾った。photo by Kyodo News

 昨年の牝馬クラシックには、牡馬も合わせて一番強いのではないか、という"絶対女王"リバティアイランドがいた。しかし今年は、それほど抜けた馬はいない。

 ひと言で言って「混戦」。それも、上位拮抗の混戦と言える。年々、競走馬全体のレベルが上がっているので、そこから抜け出す存在になるのは、かなり難しくなっているのだろう。

 さて、今年の3歳牝馬戦線。巷では、牡馬相手にGIホープフルS(12月28日/中山・芝2000m)を快勝したレガレイラ(牝3歳)を「一強」とする見方が強いようだ。そうしたなかで、同馬は結局、牡馬混合のGI皐月賞(4月14日/中山・芝2000m)に向かうことになった。そのため、牝馬番付からは外させてもらうことにした。

 ただ、レガレイラが牝馬クラシックに回ってきたとしても、自分はそこまで高く評価していたかはわからない。詳細は、牡馬番付の際に触れたいと思う。

 何はともあれ、今年の3歳牝馬については、有力各馬の優劣をつけるのがとても難しかった。そういう意味では、馬券的には面白いのではないだろうか。

横綱:アスコリピチェーノ(牝3歳)
(父ダイワメジャー/戦績:3戦3勝)

 昨年来、クラシック出走を視野に入れた前哨戦やトライアルなど、この世代を評価するポイントとなるレースを見てきたが、牝馬戦線で一番レベルが高いと感じたのは、昨年暮れのGI阪神ジュベナイルフィリーズ(12月10日/阪神・芝1600m)。GIで格がひとつ上、ということもあるが、そう感じた理由はそれだけではない。

 負けていない馬が何頭かそろっていて、メンバーレベルが高かった。さらに、1分32秒台と勝ち時計も優秀だったからだ。

 この馬はそのレースを勝ったのだから、横綱とすべきだろう。

 何より、ここまで3戦して3勝。一度も負けていない、というのがいい。こういう馬は勝負強さとか、"ここ"というときに必要な何かが備わっているものだ。

 馬格もあるし、操縦性もよさそう。しかも、一戦ごとにレースが上手になっている。昨夏のGIII新潟2歳S(1着。8月27日/新潟・芝1600m)の頃は子どもっぽい走りをしていたが、前走の阪神JFの際には、だいぶ走りに成長が見られた。

 その前走からして、桜花賞の、阪神・外回りのマイルコースは間違いなく合う。桜花賞ではいい走りをすると思う。

 自分が現役時代に乗っていたダイワメジャーの子で、距離に限界がありそうに思えるが、あれだけ操縦性がよければ、マイル以上の距離も持つはず。オークスも含めて、春の牝馬クラシックはこの馬が中心になるだろう。

大関:ステレンボッシュ(牝3歳)
(父エピファネイア/戦績:4戦2勝、2着2回)

 阪神JFで横綱アスコリピチェーノとタイム差なしの接戦を演じて2着となったのが、この馬。それゆえ、この馬が当然、大関ということになる。

 阪神JFの走破時計は勝ち馬と同じ1分32秒6。阪神JFのレースレコードで、例年なら桜花賞でも勝てる時計だ。

 そして、同馬が見せた末脚は見事だった。上がりタイムはメンバー最速の33秒5。勝ったアスコリピチェーノをコンマ2秒上回っている。

 その意味では、クビ差という着差はないも同然。ペースや展開など、ほんの少しのことで着順は入れ替わっていた可能性がある。もし桜花賞が最後のキレ味がモノいうような流れになったら、勝つのはこの馬かもしれない。

 阪神JF後に休養に入って、桜花賞へはぶっつけとなるが、おそらくこの休養はオークスまで見据えてのことだろう。血統的に距離延長は問題なし。オークスでは主役の座を奪っていても不思議ではない。

関脇:クイーンズウォーク(牝3歳)
(父キズナ/戦績:3戦2勝、2着1回)

 今年の牝馬クラシックは基本「混戦」だが、阪神JFの上位組が中心になると見ている。もしそこに割って入る馬がいるとすれば、この馬だろう。

 前走のGIIIクイーンC(1着。2月10日/東京・芝1600m)が強い競馬だった。道中はずっと後方に待機していて、直線で追い出されると、長くいい脚を繰り出して押しきった。この"息の長い末脚"がこの馬の武器だ。

 勝ち時計(1分33秒1)も過去と比べて上位に入るほど優秀で、終(しま)いも33秒台の上がりタイムをマーク。メンバーがそろった一戦だったゆえ、後続との着差はわずかだったが、ほぼ完勝と言える内容だった。

 牝馬としては、馬格があるのも特徴のひとつ。馬体重は500kgを超えているが、それでいて、現時点でこれだけの競馬ができるということは、将来的にはさらに強くなる可能性がある。

 ただ、関西馬ながらクイーンCを使ったということは、狙いは桜花賞より、オークスのほうかもしれない。

小結:コラソンビート(牝3歳)
(父スワーヴリチャード/戦績:6戦3勝、2着1回、3着2回)

 前々走の阪神JFが3着で、前走のGIIフィリーズレビュー(3月10日/阪神・芝1400m)が2着。3連勝を飾ったあとは、上位にはくるが、あと一歩勝利には届かないというレースが続いている。

 それでもこの馬を見限れないのは、3着だった阪神JFのレースぶりに見どころがあったからだ。上位2頭からは1馬身4分の1差をつけられたものの、この馬自身、パタッと止まったわけではない。ジリジリとではあったが、最後までしっかり伸びていた。

 それを思うと、「これで負けたら仕方がない」といった覚悟のレースをすれば、大舞台でも一発逆転の可能性があるのではないかと踏んでいる。

 過去2戦の敗因は、差してもいい脚が使えない"差し味"が不足しているから。桜花賞でも同じレースをしたら結果は見えているが、今度は差すレースではなく、先行して粘るレースをすれば......わずかながらチャンスは見えてくる。

前頭筆頭:スウィープフィート(牝3歳)
(父スワーヴリチャード/戦績:6戦2勝、2着2回、3着1回、着外1回)

 前走のGIIチューリップ賞(3月2日/阪神・芝1600m)は"ハマッた"感じがあるものの、強かった。自分はもともと、阪神JFのレースぶりを見て「この馬は走る」という印象があった。

 阪神JFでは、出遅れたことが痛かった。さらにそこから、強引に位置を取りにいって、脚を使ってしまった。結果、7着に終わった。

 ただ、上位3頭からは離されたが、4着以下とは差がなかった。あの競馬でも、そこまで踏ん張れるのだから、「この馬、結構走る」と思った。

 その印象が実証されたのが、前走。そもそもの能力はかなり高いと思う。しかしながら、ここまでに6戦を消化。クラシックで勝ち負けするには、やや使いすぎか。馬体的にも少し線が細く、奥の深さを感じない。

 とはいえ、スイープトウショウの孫という血統は魅力。その血統背景が大きな舞台での好走をあと押しする、というシーンがあるかも......。

        ◆        ◆        ◆

 今年のクラシックは、間違いなく混戦だ。ただし、オークスまで視野に入れたとき、1勝馬など現時点でクラシック出走の権利がない馬にもチャンスがあるか? というと、自分は「それはない」と思っている。

 なぜなら、そういった馬たちが勝った新馬戦、未勝利戦に、それほどインパクトのある勝ち方をした馬がいなかったからだ。ゆえに、今年の牝馬クラシックはここに名前を挙げた馬たちを中心に進んでいくのではないだろうか。

安藤勝己(あんどう・かつみ)
1960年3月28日生まれ。愛知県出身。2003年、地方競馬・笠松競馬場から中央競馬(JRA)に移籍。鮮やかな手綱さばきでファンを魅了し、「アンカツ」の愛称で親しまれた。キングカメハメハをはじめ、ダイワメジャー、ダイワスカーレット、ブエナビスタなど、多くの名馬にも騎乗。数々のビッグタイトルを手にした。2013年1月31日、現役を引退。騎手生活通算4464勝、うちJRA通算1111勝(GI=22勝)。現在は競馬評論家として精力的に活動している。

著者:新山藍朗●取材・構成 text by Niiyama Airo