高木豊の交流戦総括 パ・リーグ編

(セ・リーグ編:セ・リーグ各球団の交流戦を総括 「最も勢いをつけた」チームは?>>)

 セ・リーグに続き、パ・リーグ各球団の交流戦を高木豊氏が総括。リーグ戦で独走していたソフトバンクは、交流戦でも6つの貯金を作るなど勢いを持続している。交流戦で優勝した楽天は勝率を5割に戻した。そんな交流戦、再開したリーグ戦について高木氏に聞いた。


交流戦MVPを獲得した日本ハムの水谷瞬 photo by Sankei Visual

【楽天が交流戦を優勝できた要因】

――交流戦で勢いづいたパ・リーグのチームは?

高木豊(以下:高木) やはり優勝した楽天です。一番よかったのは、早川隆久が安定していたこと。勝ち星には恵まれていないのですが、広島戦では10回を投げて無失点に抑えたりと、ブルペン陣を助ける力投を見せていましたよね。それと、交流戦で先発して2勝した内星龍。もう少し長いイニングを投げられたらもっといいのですが、それでも交流戦では頑張っていましたね。

 宋家豪、酒居知史、渡辺翔太らの中継ぎ陣もよかった。抑えの則本昴大は失点してヒヤヒヤさせる場面が何回かありましたが、なんとか抑えていましたしね。

――交流戦前までは負けが込んでいましたが、なぜ状態がよくなったと思いますか?

高木 浅村栄斗をスタメンから外したり、打順を下げたりしましたよね。それと、鈴木大地を4番に起用したじゃないですか。そこから打線の流れがよくなりました。浅村はスタメンから外しにくい、クリーンナップから外しにくい、連続試合出場のリーグ記録を更新中だから外しにくい......そういうことを今江敏晃監督が勇気をもって取っ払ったんです。

その英断がチームに喝を入れる形にもなったし、いい流れを生むようになりました。だけど、浅村をまったく使わないわけではなく、代打で起用したりして連続試合出場は継続させていますね。あとは、小郷裕哉や辰己涼介、小深田大翔らが躍動しました。マイケル・フランコもポイントで活躍してくれましたし、キャッチャーの太田光が打つほうでも貢献し始めたり、打線全体がいい状態です。

――逆に心配なチームは?

高木 大きく負け越してしまった西武はもちろん心配ですが、それ以外で挙げるとすればロッテかなと。DHがないセ・リーグの試合でグレゴリー・ポランコをレフトで守らせて守備がガタガタになりましたよね。そんなこともあって負けた試合も多かったですが、リーグ戦に戻ればDHが使えるので後遺症も払拭できるでしょうし、そこまで心配ではないかなと。

【日本ハムの水谷らの評価】

――交流戦で目に留まったパ・リーグのバッターを挙げるとすれば?

高木 日本ハムの水谷瞬です。ミート力もパワーもありますね。バッティングフォームには力みがないのですが、瞬間的なパワーを感じるんです。ミートした時の爆発力、ボールに対しての力の伝え方がうまい。現役ドラフトで移籍した選手ということで、相手バッテリーが見くびっていた部分も多少あったんじゃないでしょうか。だけど、彼のポテンシャルは計り知れないものがありますよ。

 同じ日本ハムの田宮裕涼はシーズン序盤からバッティングが安定していましたし、交流戦で多く起用されたのは今季が初めてでしょうけど、初対戦のピッチャー相手にしっかり結果を出すことができましたしね。「伊達じゃないな」と思わされたのは、中日戦で代打で出た時に高橋宏斗の初球のインサイドの真っすぐをライト前に弾き返したバッティング。非凡なセンスをあらためて感じましたね。

――ほかに活躍が目についたバッターは?

高木 ソフトバンクの柳町達はランナーを返すこともできたし、つなぐこともできましたよね。非常に貴重な存在だったと思います。5番の近藤健介の後ろを打つことが多かったのですが、近藤がチャンスを作ったら送って、ランナーがたまったら返してとか、状況に応じていい働きを見せていました。

――交流戦でよかったピッチャーは?

高木 先ほど挙げた早川のほかには、同じ楽天の藤井聖も安定していました。球速は140km台中盤なのですが、真っすぐの質がいいのと、スライダーとツーシームがいい。的を絞らせないというか丁寧なピッチングが結果につながっています。あとは内と同様、もう少し長いイニングを投げてくれるようになるといいですね。
 
 無失点を継続中のオリックスの古田島成龍もいいです。ルーキーながらすでにオリックスの貴重な中継ぎですし、走者がいる場面での火消し、齋藤響介のプロ初勝利がかかった巨人戦などプレッシャーがかかる場面でよく投げています。実績があるリリーフが不振で離脱する中、救世主的な存在ですね。

【ソフトバンクの独走は続く?】

――今後、リーグ戦で加速していきそうなチームを挙げるとすれば?

高木 オリックスです。メンバーが揃ってきましたからね。ピッチャー陣では山下舜平大が復帰しましたし、宮城大弥も戻りそう。打つほうでは森友哉が戻り、西川龍馬の調子も上がってきて、太田椋の成長も著しい。やっと上がってきた茶野篤政もバッティングが好調ですし、野手陣はけっこう層が厚くなってきますよね。

 齋藤や佐藤一磨がプロ初勝利を挙げましたが、このあたりが今後も登板間隔は開けながらも安定的に投げてくれると先発陣にとって大きいですし、曽谷龍平もいいですから。アンダーソン・エスピノーザは京セラドーム大阪で投げさせたら、防御率0点台ですしね。それと、昨季の最優秀中継ぎ賞のルイス・ペルドモも合流しますよね。オリックスは上がり目しかないと思います。

――現在、首位のソフトバンクは2位のロッテに9ゲーム差をつけて独走状態です。

高木 他の5球団がソフトバンク戦をどう捉えるかですね。先発の"表"のローテーションを当てるのであれば、ソフトバンクは苦しくなりますよ。でも、2位や3位を確保しようと表のローテをぶつけないなら、ソフトバンクは放っておかれるので走りっぱなしになります。各チームが交流戦明けにどういうローテーションを組んでいくかが見ものです。

――楽天とオリックスが交流戦で巻き返したことで2位〜5位の差がだいぶ縮まり、混沌としてきました。

高木 日本ハムが交流戦の最後に3連敗と、ちょっとモヤっとした終わり方だったので、日本ハムがどっちに転ぶかでしょうね。ただでさえ強力打線だったところに水谷が台頭してきたので、点はある程度取れると思いますし、ピッチャー陣も含めて力は備わっていますから。

ソフトバンクに対して、戦力が戻ってきたオリックスや力のある日本ハムがどう立ち向かっていくか、という感じでしょうか。楽天は交流戦で勢いづいたとはいえ、リーグ戦はまた違う戦いですし、楽天がパ・リーグで勝ち越している球団が今のところないのが気がかりな点です。

――やはり勝ち方を知っているオリックスが出てくる?

高木 シーズンをトータルで見た時の勝ち方を最も知っているチームですし、ここぞという試合で勝負強い選手が多い。中嶋聡監督も故障者や不振の選手が多くてやりくりが大変だったでしょうけど、交流戦では勝ちながら戦力を整えてきた感がありますし、いい流れをリーグ戦にもつなげられると思います。

【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)

1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。

著者:浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo