ロサンゼルス・ギャラクシー
山根視来インタビュー

 2024年1月、川崎フロンターレの山根視来がロサンゼルス・ギャラクシーに移籍すると発表された。30歳にして初の海外移籍。行き先は「MLS」という新世界を選んだ。

 移籍先のチームには、半年前にヨーロッパから渡った吉田麻也という日本代表の大先輩がいる。山根は今、どんな心境でサッカーと向き合っているのか。ロサンゼルスの練習場に足を運び、話を聞いた。

   ※   ※   ※   ※   ※


山根視来にアメリカでの生活を語ってもらった photo by Ryokai Yoshiko

── 30歳で初の海外挑戦です。

「違うところでやりたいな、と思ったんです。なんとなく、この先のキャリアが想像できてしまったんですよ。何があるのかわからない......っていう気持ちでちょっと始めてみたいなと」

── もともと海外願望はあったのですか?

「なくはないんですけど、本気で海外に行きたいと思って、いろいろ契約を含めて準備し出したのは、日本代表に入って以降なんです。代表で海外組の選手との差を痛感して『このままじゃいけないんだ』っていうのをすごく思って。僕はアンダーの代表にも入ったことがなかったので、そういう感覚もわからなかったんですよね」

── 代表でプレーすることによって、海外経験の必要性を感じるようになったのですね。

「数年前から日本以外の国でプレーしたいなっていう思いがあったので、そこに向けて準備をしていました。でも、僕が移籍したいといっても、できるものでもないのでね。毎年、夏・冬どっちも(オファーが来るか)ドキドキしていましたよ」

── そのオファー状況によっては、アメリカ以外の選択肢もあった、と。

「そうですね」

── ギャラクシーに来て半年。ロサンゼルスの生活は気に入っていますか?

「食事面では、オーガニック系のスーパーが多いので気に入っています。デリのお惣菜も鶏胸肉はめちゃくちゃ柔らかくて美味しいし、奥さんがいない時はそのスーパーで選んで食べたりしています。選手生活が終わってもここに住めるなってくらい、楽しんでいますね」

【思い出される柏レイソルとの天皇杯決勝】

── MLSのサッカーは実際にプレーしてみてどうですか?

「ここからステップアップしてヨーロッパにいかなきゃいけないと思っている選手たちが集まるリーグなので、自分で行って、相手をはがして、自ら点を取る意識を持っている選手がすごく多い。日本はチームでの協調性が重視されるので、自分の能力がさらされて面白いかなと」

── さらされる、という感覚なんですね。

「ええ、それが面白いっていうか、求めてきたというか。僕より身体がデカいのに、足が速い選手ばっかりなんです。日本だと小さい選手とマッチアップすることが多かったですけど、今は止め方ひとつ取っても工夫しなきゃいけないです。自分のウィークポイントだったものが磨かれていっている......っていう気はしています」

── アメリカに来て、あらためて感じたことはありますか?

「日本人同士だと言葉が通じるので細かいニュアンスで話すことができるし、人種的な傾向なのか気の効く選手もすごく多かったなと感じました。日本とアメリカでは、その差はやっぱりあります。日本は困った時に助けてくれる選手がすごく多かったなと、あらためて思いますね」

── スタジアムの雰囲気も日本と違いますか?

「一瞬の盛り上がり方は、時にJリーグよりワーッとなることがあります。本当に試合を楽しんで見てくれているんだなと。サッカーがエンタメのひとつのジャンルとして確立している感じなので、それは日本だとなかなか得られない感覚なんです。

 でも、あらためて日本のサポーターはすごかったなと思うこともあります。どうやったら自分たちがチームを勝たせるかを考えて応援してくれている。最後の天皇杯(2023年12月9日/PK戦の末に柏レイソルを下して川崎フロンターレが優勝)は彼らサポーターのために勝とうと思えた、それくらいの存在です。もちろん日本とアメリカ、どっちが上とか下じゃなくて、ひとつの違いとして」

【同僚には吉田麻也という最高のお手本】

── チームメイトの吉田麻也さんはどんな存在ですか?

「代表でも一緒でしたので以前から知っている人ではありますが、ちょっと僕とは経験値が違いますし、お手本という存在です。サッカーでもプライベートでも、一緒にいると身が引き締まる思いです。

 もちろん、いつもリラックスしてコミュニケーションを取っていますけど、『この人がこれだけやっているから自分もやらなくちゃ』という気持ちにはなります。練習後にパッと帰っちゃう人が多いんですけど、麻也君は常に自分と向き合って体のケアをしている。『こういう生き方をしてきたんだろうな』っていうのが出ていますよね」

── 吉田選手は「安定して高いパフォオーマンスを出せれば、山根選手はもっと上を目指せる」と話していました。

「シーズンは長いのでいい時も悪い時もあるけど、悪い時に何ができるかが大事という話は一度、麻也君から言われたことがあります。彼はずっと第一線でやってきた選手ですから、ツボを抑えるのがうまいというか、そのあたりは僕に足りない部分かなと。

 僕は調子が悪い時こそ、いいことをしたいって思っちゃうんですけど、そうじゃないんですよね。もっとシンプルに、今日は割りきってプレーするとか、そこの判断ですね」

── 吉田選手から見習う点は多そうですね。

「かなり頼りにはしています。ミーティングでも理解できない点や細かいニュアンスのところを助けてもらったりします。だけど、あんまり頼らないようにしたいとも思っているんです。ただ、あの人より頼りになる日本人選手は見当たらないですよ。英語もネイティブがびっくりするくらいのレベルですしね」


【profile】
山根視来(やまね・みき)
1993年12月22日生まれ、神奈川県横浜市出身。東京ヴェルディの下部組織からウィザス高→桐蔭横浜大を経て2016年に湘南ベルマーレに加入。2020年から川崎フロンターレで4年間プレーしたのちに2024年にロサンゼルス・ギャラクシーに移籍。日本代表デビューは2021年3月の韓国戦。2022年カタールワールドカップのメンバーにも選出され、グループステージ第2戦コスタリカ戦で出場を果たした。ポジション=DF。身長178cm、体重72kg。

著者:了戒美子●取材・文 text by Ryokai Yoshiko