今シーズン、琉球ゴールデンキングスから群馬クレインサンダーズに移籍。ファンを驚かせた並里成は9月、シーズン開幕を前に右第5趾基節骨を骨折し、開幕に間に合わなかった。

■「土地勘もない中で大変」な日々

試合後、快くインタビューに応えてくれた並里成撮影:藤原伸治

それでも10月15日、16日に行われた第3節アルバルク東京戦でついに復帰、群馬のユニフォーム姿で戦う新たな挑戦が始まった。話を聞いたのは、11月26日。大阪エヴェッサ戦に勝利した直後、群馬での生活、チームについて、さらには同じく今シーズンから指揮を取る水野宏太ヘッドコーチとの会話までさまざまなテーマを聞くことができた。

群馬の生活にはまだ慣れていない。「土地勘もない中で大変」という新たな日々。

それでも群馬への移籍を決めたのは、8歳になる息子の言葉だった。昨シーズン、琉球と群馬の試合を観戦し「クレインサンダーズの印象がよかったようで(群馬に)『来たい』と言ってくれた。(沖縄での暮らしでは)親を頼っていたが、2人の時間がお互いの成長の期間になるかも」と大きな決断をした。新たな生活、「8歳ながら気を遣ってくれたり、お互い助け合いながら過ごしている」のだとか。並里は父子家庭、がんばる息子の姿を間近に見ることは、大きな力になることは間違いない。

コンディションにも、もう問題はない。群馬は勝ちたいという強い思いを持った選手が集まっており「思っていた以上にチーム力があり、向上心がある。いいチーム。背中を押してもらえるような刺激を受けている」そうだ。

フリースローを決めガッツポーズ 撮影:藤原伸治

■「精神面も含め成熟した選手になった」と指揮官

そんなチームの雰囲気を作り上げるのが、水野HC。かつてリンク栃木ブレック時代にともに戦った経験がある。並里はプロ選手になったばかり、同HCもまだアシスタントコーチだった。当時から情熱を感じていた。レバンガ北海道でHCを務め、昨シーズンまではアルバルク東京でアシスタントコーチを務めていた。その存在は「群馬に来たいと思った理由のひとつだった。(携わるチームは)いいチームに仕上がっていた。一緒にプレーしたいとずっと思っていた」と明かしてくれた。

そこまで思わせるのは、色々なHCを見てきて「チームに対して厳しくしてほしいところ、自由にしてほしいところなどが合うから。(同じチームでの経験もあり)勝つチームの軸が変わっていない」からこそ、群馬でも同じ目標に向かっていけるという確信が持てた。妥協しない指揮官のもと「毎日一緒にやっていて楽しい」と充実感を示した。

フープにドライブする並里成 撮影:藤原伸治

並里自身、昔と比較すると「ちゃんとコーチの話を聞ける選手になった」と笑う。

「僕はこういうプレーヤーだから、とチームプレーを無視していた。大変だったと思う。今はチームのための要求に応えながら、自分の持ち味を出せている」と分析する。また、水野HCは「精神面も含め成熟した選手になった。感性や感覚も素晴らしい。その部分を消したくない。生かしつつPGとしてチームバスケットに取り組んで欲しい。いい心持ちでチャレンジしてくれている」と期待を込めた。

並里についてアキ・チェンバースは、「相手からのプレッシャーに対して、上手にボールをハンドルする。様々な良い流れを持ってきてくれる選手。チームに来てくれたことをうれしく思っている」と語っていた。群馬といえば、長く日本のバスケットボール界を牽引してきた五十嵐圭という先輩や、五十嵐と同じく40代プレーヤーでもあるマイケル・パーカーなどタレントぞろい。

八村阿蓮ほかタレントもそろう群馬クレインサンダーズ 撮影:藤原伸治

並里は「すごく一緒にやっていて楽しい。ちょうどベテランと若手や、外国籍選手との間に立てる存在かな」と、自身の立ち位置について語った。みんなをつなぐ、という役割にやりがいを感じているようだ。

■大ベテラン、五十嵐圭から受ける刺激

同じポイントガード、大ベテラン五十嵐圭(右)の存在も刺激に 撮影:藤原伸治

中でも、五十嵐とはポイントガード同士。プレースタイルなど「正反対のキャラクター。学ぶことも多い。僕のエネルギーを圭さんにも感じてもらいたい」と話し、ベテラン同士でさらに高みを目指す。

指揮官からは「群馬の選手たちと触れ合いながら、いい形でさらに成長してくれると思う。ちゃんとキャリアを積み上げてきたなと感じるし、ここでもう一皮向けてくれるんじゃないか。僕が種を植えるわけではないけれど、育ってくれる姿が想像できている」と、熱い想いも受ける。並里は群馬での挑戦の過程で、また新たなステージへたどり着くのだろう。

チームは29日現在、10勝3敗。東地区2位につけている。並里は「間違いなくトップのチームになる。チャンピオンシップに出場し、優勝を目指す」と力強く語った。

並里が所属していた琉球は昨季、残念ながら優勝は叶わなかったがファイナルの舞台を戦った。しかしコロナ禍のシーズン、その舞台に並里の姿はなかった。優勝のチャンスを目の前にしながら、ベンチで声をかけることすら叶わなかったからだ。「何もできない自分。なんでこのタイミングで、と今までのバスケ人生で最も大きなダメージだった」と振り返った。

新しい仲間と「絶対叶えたい」と力を込めた。

インタビューの最後、まだバスケットボールを、群馬の試合を見たことがないファンに向け「ダークホース的な存在で、強豪チームに勝っていくところを見てほしい。スポーツは強いチームが勝つとは限らない面白さを群馬から感じてほしい」と締めくくった。

ぜひ、多くのバスケ・ファンに群馬での並里の挑戦に注目してもらいたい。

インタビューでは明るい笑顔も 撮影:藤原伸治

■著者プロフィール

木村英里(きむら・えり) ●フリーアナウンサー、バスケットボール専門のWEBマガジン『balltrip MAGAZINE』副編集長

テレビ静岡・WOWOWを経てフリーアナウンサーに。現在は、ラジオDJ、司会、ナレーション、ライターとしても活動中。WOWOWアナウンサー時代、2014年には錦織圭選手全米オープン準優勝を現地から生中継。他NBA、リーガエスパニョーラ、EURO2012、全英オープンテニス、全米オープンテニスなどを担当。