今週は、上半期の総決算、第65回宝塚記念(GI、芝2200m)が京都競馬場で行われる。

今年は、秋春グランプリ制覇を狙うドウデュースをはじめ、昨年3着の雪辱を期すジャスティンパレス、大阪杯を制したベラジオオペラや、ソールオリエンスとGI馬が4頭参戦。加えて、ローシャムパークやブローザホーン、シュトルーヴェ、プラダリアなど、GI初制覇を狙う実力者も虎視眈々。登録馬は13頭にとどまったが、見応えのある激しい戦いが繰り広げられそうだ。

そんな中、宝塚をステップに、再度世界へ挑戦するドウデュースが、今回の「危険な人気馬」の標的となる。

■勝ち切れないマイナスデータ

昨年の有馬記念で見事な復活劇を遂げたドウデュース。前走のドバイターフでは、やや出遅れたうえに、直線では前が壁となってスムーズに外へ持ち出すことができず、不完全燃焼の5着に終わったが、歴代最多得票数でファン投票1位を獲得し、大いなる期待を集める春のグランプリでは負けられない一戦となる。

近年は2021年クロノジェネシスから、22年タイトルホルダー、23年イクイノックスと、ファン投票1位の馬が3連勝中。しかし、2015〜18年には4連敗を喫するなど、不動の存在ではない。加えて、宝塚記念の過去10年の1番人気は【3.2.0.5】で、有馬記念の1番人気【5.1.1.3】と比較すると、取りこぼすシーンも目につく。

前走がドバイ遠征だった馬の成績は【2.1.1.11】で、クロノジェネシスやイクイノックスが勝利を飾っているが、好走例のほとんどが、ドバイシーマクラシックからの転戦。ドウデュースのように、前走がドバイターフだった馬は【0.0.0.2】でサンプル数は少ないが、2018年ヴィブロスがドバイターフ2着から宝塚4着、22年パンサラッサが、ドバイターフ制覇も宝塚では8着に敗れている。

これは、1800mから一気の距離延長への対応が問われる可能性が高い。レースを問わず、前走が1800m以下に出走していた馬の成績は【0.2.4.12】で、勝利した例はなし。ドウデュース自身は、ダービーや有馬記念を制しているように、距離に対する不安はなさそうだが、海外遠征帰りの一気の距離延長、という点は、若干気になる材料ではある。

また、ハーツクライ産駒は、これまでにGI15勝をマークしているが、阪神の芝GIでは【4.4.4.51】であるのに対し、京都の芝GIでは【1.11.5.57】の成績で、2018年エリザベス女王杯のリスグラシューしか勝っておらず、勝ち切れないコースという点も気がかり。今年は京都で行われる宝塚記念という点が、ドウデュースにとってはマイナス材料となりえないか。

武豊騎手とのコンビでは、国内のレースでは【6.1.1.0】と、ほぼ完璧な戦績のドウデュース。秋の凱旋門賞へ向けたステップとして、好結果を残して遠征したいところだが、ローテや血統面、加えて、初経験となる京都コースへの対応など、不安材料はかなり顕在する。ここは人気ほどの信頼感はないと考え、妙味を考慮すると、今回は思い切って「消し」でいってみたい。

◆著者プロフィール

石川豊●いしかわゆたか 20代から競馬メディアに寄稿。「ユタカ人気」と言われた時代、武豊が騎乗する過剰人気馬をバッサリと切り捨てる馬券術を駆使し、年間回収率100%超に成功。以来、「1番人気の勝率は3割」を念頭に、残り7割の可能性を模索し、「危険な人気馬」理論を唱え続ける。