マルハニチロは、介護食品事業において、中国現地のグループ会社および現地パートナー企業との協業により、中国市場での生産・販売に向けて本格的な取り組みを開始する。5月22日に発表した。

同じく5月22日には、専門紙向けに説明会を開き、食材流通ユニット メディケア・コントラクト営業部の濱崎日出男部長、海外ユニット海外戦略販売部の岡幸伸部長らが今般の取り組みの概要などについて説明した。

マルハニチロは日本国内で2005年から介護食品事業を展開しており、2022年度の売上高はグループ合計で62億円を超えている。中国では当面、5〜6年ほどの期間で日本と同程度の売上高を目指していく。

中国ではすでに高齢社会に入っており、今後高齢化がさらに進み、高齢者向け食品の需要が高まることが予想される。一方、介護食を提供する病院や、在宅介護向け商品のラインナップも限られており、今後高齢者向け食品の市場が急成長することも見込まれるという。

そうした中国市場をターゲットに、これまで蓄積してきた介護食に関する知見を活用し、日本企業として先駆けて介護食の中国国内における生産体制を確立。中国都市部を中心に〈1〉病院医療向け〈2〉シルバーサービス関連施設向け〈3〉在宅向け――の3つのチャネルを開拓していく。

既に一部病院医療向けでは2023年3月中旬から販売を開始、シルバーサービス関連施設向けにも6月から販売を開始する。在宅向けは、中国で盛んなECルートを通じた展開を予定している。

中国展開に際しては、現地向けの介護食シリーズ「介護良品」を立ち上げた。日本における「メディケア食品」に相当するシリーズの名称で、当初はムース・ゼリー商品のみでスタートするが、将来的に他の商品を発売する可能性もあり、それらを包含したものとなる。

商品面では、病院医療ルート向けに「易食食品」全24種類(主食ゼリー3種・朝食向けムース食7種・昼夜向けムース食14種)を、シルバーサービスルート向けに「易食照護食品」14種類(主食とムース食のセット商品、うち7品は9月から)を展開。それぞれ日本のUDF基準等の管理基準をもとに設計している。

メニューはコロナ禍の中にあっても開発スタッフを現地に派遣し、中国の食文化・嗜好に合わせて開発。当初は、上海地域の味付けに準じて設計した。

主菜は、「たまごトマト炒め」「酢豚」「回鍋肉」「蒸し鶏のごまソース」など現地で一般的なメニューの他、日本メーカーの製品であることから「サーモンの塩焼き」といった和風メニューや、日本発祥の中華料理である「エビチリ」といったメニューも揃える。

マルハニチロ 中国向け介護食「蒸し鶏のごまソース」

また、それぞれで「れんこんの甘酢がけ」「味付けたまご」「ほうれん草たまご炒め」「かぼちゃのココナッツソース」――といった副菜が朝食向けで1品・昼夜食向けで2品セットになったセットメニューとなっている。

主食として医療ルート向けでは「お粥ゼリー」「粟粥ゼリー」「まんじゅう粥ゼリー」の3種を展開。それらと各おかずメニューを組み合わせて提供する。まんじゅう粥ゼリーは、日本のパン粥に相当するもので、現地で主食としてよく食べられる饅頭を再現したものとなる。

シルバーサービスルート向けでは「お粥ゼリー」がセットされた1食完結型メニューとなっている。生産はマルハニチロの商品開発・技術指導のもと、これまで日本向けの介護食生産でも実績のある山東省のグループ会社・協力会社が手掛け、現地グループ会社のマルハ上海が総代理店として、各チャネルに複数の販売代理店を通じて販売していく。

濱崎部長によれば、マルハニチロでは、かねてよりアジアを中心に新たな市場開拓を模索しており、過去には2014年、中国の食品展示会で日本の介護食品を紹介するなど、検証を重ねたが、当時は時期尚早と判断したという。

マルハニチロ・濱崎日出男部長

一方、現在の中期経営計画「海といのちの未来をつくる MNV 2024」においては、加工食品の海外展開が成長戦略の大きな軸となっており、その中で介護食事業を成長ドライバー領域に位置づけるとともに、グローバルに健康価値創造に貢献し、提供価値を向上させることを目指している。そうした中で、中国の医療ルートで有力なパートナー企業とコンタクトでき、今後の大きな可能性を相互で確認する中で今回の中国進出の決断に至ったという。

〈冷食日報2023年5月23日付〉