蒲郡市と竹本油脂(愛知県蒲郡市)、日本特殊陶業(名古屋市東区)、新東通信(名古屋市中区)の4者は、蒲郡市内の工場で製品製造過程において排出された二酸化炭素(CO2)を回収して有効活用するCCU(Carbon dioxideCapture and Utilization)に取り組んでいる。

この「地域CCUプロジェクト」の実証実験を2024年2月からスタートし、6月まで実施する。竹本油脂がごま油を製造している亀岩工場から排出されるCO2から、週10kgを回収・運搬して、市の特産品であるハウスみかん栽培に再活用する。21日に報道陣に向けて発表会と視察ツアーが行われた。

蒲郡市は循環経済(サーキュラーエコノミー)を実現する「サーキュラーシティ蒲郡」を掲げている。今回のプロジェクトは、地方創生プロジェクトを手掛ける新東通信の紹介により、「サーキュラーシティ蒲郡」に共感した日本特殊陶業が、竹本油脂とCCUの実証を蒲郡市に提案して実現した。また、愛知県農業総合試験場と豊橋技術科学大学、中部共栄運輸もオブザーバーとして参画している。市内でのCO2の地産地消を目指す。

今回の実証では、竹本油脂の亀岩工場の一部に、日本特殊陶業の技術を用いた回収装置・集積装置を設置。ボイラーの排ガスからCO2のみを分離・回収して流通用ドラム缶に貯蔵し、中部共栄運輸が愛知県農業総合試験場に輸送する。輸送されたCO2はハウスみかんの苗木3本の成長促進用のガスとして再活用される。

CO2はハウスみかんの成長促進用ガスとして再活用される

また、収穫したみかんの社会的価値を検証する。同試験場では、ハウスみかんの栽培において収量を高めるため、豊橋技術科学大学の技術協力のもと、ハウス内の温度やCO2濃度の制御に関する試験を行っている。締め切った冬季のハウスでは、作物の光合成に必要なCO2が不足しがちであり、現状では、灯油を燃焼させて発生するCO2を利用している。この一部を、今回の回収されたCO2に置き換える。発表会で、鈴木寿明市長は「サーキュラーエコノミーが蒲郡市から愛知県、全国、世界へ広がることを期待する」と力を込めた。

〈ごまを煎る工程で排出するCO2を新たな資源として積極活用〉

竹本油脂の竹本元泰社長は「SDGsの達成に向けて当社としてできることを模索しているが、企業単独では限界がある。ごま油の製造にはごまを煎る工程が不可欠であり、CO2を排出してしまう。課題を抱えている中、新東通信に日本特殊陶業を引き合わせてもらい、今回のプロジェクトが発足した。この取り組みは、全国の自治体や中小企業が抱えるカーボンニュートラルの課題に対する一つの回答になり得るのではないか。蒲郡市に本社を置く企業として、地域社会の持続的発展に貢献できるよう、プロジェクトに取り組みたい」と強調した。

竹本油脂・竹本元泰社長

プロジェクトのリーダー(日本特殊陶業)は、「今回の実証を通じて1社でも多くの企業に参加し、1人でも多くの市民が応援してくれることを願う。資源の最後の姿であるCO2を価値ある資源に変えていきたい」と意気込みを示した。

竹本油脂はごま油の製造工場で年間約1万tのCO2を排出し、蒲郡市全体ではみかん、いちごを含むハウス栽培で年間約1,200tのCO2を施用しているという。「工場から出るCO2を活用してもらえるシステムができたら、CO2を新たな資源として積極活用してもらうよう提供していきたい」(竹本油脂)。

同プロジェクトは今後、25年にかけてハウスみかんの育成のほか多用途への再活用と、CO2の小規模販売のトライアルを実施する予定。30年にはブルーカーボンやメタン化への展開も見据え、年間10万tのCO2削減を目指す。

〈大豆油糧日報2024年2月27日付〉