断髪式を終えた大内さん(前列中央)


 病気やけがで髪を失った子どものためにウィッグ(かつら)用の髪を寄付する「ヘアドネーション」に、さいたま市立小学校の6年生、大内天慶(たかよし)さん(11)が協力した。3年ほどかけて胸下まで伸ばす中で、考えを巡らせたのはジェンダーについて。なんで男子がヘアドネーションをすると「偉い」と言われるの? 「普通」って何だ? 

病気の友達のため、妹と一緒にヘアドネ

 きっかけは小学2年生だった2017年夏、友人が急性リンパ性白血病を発症し、入院したことだった。闘病する姿を見て自分にできることはないかと、双子の妹天音(あまね)さん(11)と翌年春、ヘアドネーションのために髪を伸ばし始めた。

 毎日ヘアケアにいそしむ中、嫌になることもあった。伸ばし始めたころは「男子なのに」と長髪をからかわれたり、学校のトイレで個室に入ると「女子だから個室なんだろう」とはやし立てられたり。公共施設のトイレでも奇異な目で見られ、多目的トイレをよく利用した。

 天音さんも髪を伸ばしていたのに、周りの大人から自分だけ「偉いね」と特別視されることにも違和感を覚えた。「『男子は普通、髪を伸ばさない』という考えがあるからだ」。折しもジェンダー平等や差別に関するニュースに触れ、根底に人々が無意識につくりあげた「普通」や「常識」があると気付いた。

「断髪式」で語った思い 普通って何?

 「『普通』は悪いことじゃないけど、それで差別したり、からかったりするのは良くないんじゃないか」。12日、さいたま市の銭湯「鹿島湯」で開いた「断髪式」で、大内さんは集まった友人ら十数人に語った。「普通」を巡る答えは出ていないが、今の思いを伝えた。友人らは「頑張ったね」とねぎらいながら、約40センチまで伸びた髪に順々にはさみを入れた。

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大内さん(右)は、友人から髪にはさみを入れてもらった


 さっぱりした頭をなで、「スースーする」と笑顔を見せた大内さん。手にした髪の束の重さを感じながら「男は、女はこうあるべきだという考えを、身の回りから変えていきたい」と力を込めた。急性リンパ性白血病の友人は回復し、髪は今後、小児用ウィッグを作る施設に送る予定。

[元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年6月12日]