子どもの誕生直後に最長4週間休める「男性版産休」の運用が来年10月に始まる。今年6月成立の改正育児・介護休業法に盛り込まれた目玉の一つで、男性の育休を取りやすくする狙いだ。新制度の導入は、男性の育休取得率の底上げにつながるか。

申し出期限を2週間に短縮、柔軟性のある制度に

 男性版産休は、制度上は「出生時育児休業」で、妻の産休に合わせて子の出生後8週間以内に取得する。期間は計4週間で、2回に分割できる。休業の申し出期限は現行の1カ月前から原則2週間前までに短縮し、労使の合意があれば重要な会議の出席など限定的な就労もできるようになる。

 制度に柔軟性をもたせた背景に、深刻な産後うつや、男性の育休取得率の低迷がある。産後うつは、妊娠中の不安や社会的支援の不足などが要因で、発症のピークは産後4週以内とされる。一方、男性の育休取得率は12.65%(2020年度)にとどまり、政府は2025年までに30%へ引き上げる目標を掲げている。

 新制度の運用で、出産直後から夫婦が協力して子育てすれば、その後の男性の育休取得につながると期待。女性の家事・育児の負担減や就業継続、少子化対策につながる可能性も見込む。

課題は代替要員 「同僚や管理職にも目配りを」

 課題となるのが、育休を取った人の代替要員だ。積水ハウス(大阪市)が6月、全国の経営者や会社員、就職希望の学生など計2800人を対象にしたインターネット調査では、部長以上の47.8%が男性育休取得を「促進する予定はない」と答え、「企業規模が小さい」「休業中の従業員の代替要員の手当てができない」「休業する従業員以外の負担が大きい」などの理由を挙げた。

 法改正では、従業員が1000人超の企業に年1回の取得状況の公表義務が課された。個別に周知や取得の意向確認をすることも義務付けられ、さらに取得しやすい環境整備が求められる。岸田文雄首相は13日の参院本会議で「子どもの視点に立った施策を推進する」としているが、企業努力に頼る面が大きいのが現状だ。

 働き方改革に詳しい相模女子大大学院の白河桃子特任教授は「業務の効率化や脱・属人化を進め、休業者の業務を引き受ける同僚には評価や報酬も配分し、マネジメントする管理職の評価基準にも加えるべきだ」と指摘する。

トップ主導・仕事の「見える化」で取得促進

 改善に取り組む企業もある。積水ハウスは2018年、社長の発案で男性社員の1カ月以上の育休完全取得を宣言。子が3歳になるまで最大4回に分け、初めの1カ月は会社が給料を支給する育休制度を導入した。すると従来は平均2日だった男性の育休取得は、翌年から1カ月以上が100%になった。取得した男性社員(37)は「トップ主導だったのが大きい。休むと決めると業務を整理し、同僚らと共有する。仕事の『見える化』ができ、調整力が付いた」と話す。

 白河特任教授は「男性育休は人材獲得、社員のエンゲージメント(働きがい)に資する企業戦略と位置付け、トップが数値目標を掲げることが大切。人手不足の中小企業こそ、育休制度を整え、若い世代にとって魅力的な環境にしないと生き残れない」と強調する。

[元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年10月14日]