はしか(麻疹)の感染が各地で確認されている。感染力が非常に強く、空気感染するため、予防にはワクチン接種が最も有効とされる。新型コロナウイルスの5類移行などで海外との行き来が再び活発になる中、感染が広がる可能性があるとして、専門家は過去2回のワクチン接種歴がない人らに注意を促している。 

約10日で発症 脳炎を起こすことも

 厚生労働省などによると、はしかは感染してから約10日後に発熱やせき、鼻水などの症状が現れる。さらに2〜3日たつと高熱や発疹が出て、脳炎などを起こして死に至ることもある。発症の前日以降は、同じ室内にいるだけで、免疫を持たない人にうつすほどの感染力を持つ。

 国内では2001年に感染者が推計30万人に上るなど流行を繰り返してきたが、ワクチン接種の強化で激減。2015年には世界保健機関(WHO)から、土着のウイルスによる流行が起きていない「麻疹排除国」と認定された。コロナ禍で国内外を行き来する人が少なくなった2020〜2022年は、感染の報告数も年間10人以下にとどまった。

 しかし、今年の報告数は14日時点で既に7人。5月に確認された東京都の2人は、4月にインドから帰国後に発症した茨城県の1人と同じ新幹線の車両に乗っていたという。

接種率が低下 海外との往来が増え…

 はしかのワクチンの効果は高く、1回の接種だけでも95%程度の人が免疫を獲得できる。ただ、時間とともに免疫が弱まり、かかりやすくなる人もいるため、現在、小児を対象にした定期接種は1歳と小学校入学前に2回行うことになっている。

 しかし、定期接種の接種率は低下気味だ。1歳児の接種率は2018年度に98.5%だったが、2021年度は93.5%に。就学前の接種率も2018年度の94.6%から、2021年度は93.8%に落ちた。

 南アジアや東南アジアなどでは、まだはしかが流行している国もある。加えて、日本と同様にワクチン接種率が低下し、さらに感染が増えているとの報告もある。こうした国との往来が増えることで、ウイルスが日本に持ち込まれることが懸念されている。

 はしかに詳しい神奈川県衛生研究所所長の多屋馨子(けいこ)さんは「大人を経由して、子どもたちに感染が広がらないか心配な状態。定期接種の対象で、まだ接種していなければ早く接種を」と強調。大人が感染を広げない備えも呼びかける。

海外渡航の前に、母子手帳で確認を

 1972年10月1日以降に生まれた人は定期接種の機会があり、その上の世代では自然感染によって免疫を持っている人も少なくないが、多屋さんは「どの世代にも、抗体を持たない人がいる」と指摘する。海外に行く人や、妊娠などでワクチン接種を受けられない人の家族らは特に、接種歴を母子健康手帳で確認することが大切。記録が見つからない人は、医療機関で抗体を調べ、ワクチンを追加接種するなど必要な対策を取りたい。

 1962年4月2日〜79年4月1日生まれの男性は2024年度まで、麻疹・風疹混合ワクチンを無料で受けることもできる。妊娠中の女性が風疹になるのを防ぐため、国が行っている風疹対策で、市区町村から届いたクーポンを使って医療機関で風疹の抗体検査を受け、風疹の免疫がなかった人が対象になる。